富田靖子、3年ぶり名作舞台…長崎で被爆した母演じる「若い人にも観てほしい」
セリフは長崎弁「私も福岡の言葉は大好きなので、土地の言葉は大事にしたい」
二人芝居だけに、ほぼ出ずっぱり。そのセリフ量も半端ではない。「松下さんから『靖子さんのセリフ多いよね』と言われたんですけども、10ページくらいの長セリフがあるんです。これ、人が覚える量なんだろうか、と思いながら取り組んでいました。でも、この間、ドラマでご一緒させていただいた橋爪功さんは9ページぐらいのセリフを前の日に覚えると聞いて、私も、それくらいドンと受け止められるようにならないといけないなって思いました」とほほ笑む。
しかも、そのセリフは長崎弁だ。「私も福岡に10年ぐらい住んでいたので、博多弁はしゃべれるんですが、長崎弁の方が少し穏やかな感じだったりと、微妙に違うんです。(方言指導の先生が吹き込んだ)CDを聞いて覚えたのはいいけど、間違って覚えてしまって、それを訂正するのが大変でした。私も福岡の言葉は大好きなので、土地の言葉は大事にしたいと思っています」。
再演では、どんなことに力を入れたいか。「いっぱいいっぱいだった初演の時には感じてはいたけれども、形にすることができなかったことをやりたいですね。息子が投げかけてくれる言葉をちゃんと受け止めているのか。あのときは松下さんと初対面でしたけど、その後、朝ドラ(『スカーレット』)でご一緒し、結構長い期間、一緒にいたので、その時間が多分、今回の再演の力になっていると思います」。
自身も戦争を知らない世代。小さい頃は原爆の写真は怖さも感じたという。「若い方にも見ていただけたらと思います。私自身、受け止められないこともありました。でも、その受け止められないこと自体が大切なことかもしれない。それから、身内を亡くされた方にも観ていただければと思います。身内が亡くなると、何年たっても、気持ちの整理つかないものですが、私自身、その痛みを持って、演じています。映画という手法もありますが、舞台はより空気感があって、肌から入っていくみたいな感覚があると思います」。
ちなみに、幽霊になっても出てきてほしい人は? と聞くと「それは考えたことなかったですね」。代表作の映画「さみしんぼう」の大林宣彦監督、「BU・SU」の市川準監督の名前を挙げ、「大林監督には、『いつか、一緒にやりたいって思っていたけれども、間に合わなかったです。すいません』ってお伝えしたい。市川監督には『私、怒っていないですよ』って。市川監督は『(性格ブスのヒロイン役だから)スタッフ、キャスト全員に私に話しかけるな』と言っていたんです。それで、さみしい思いをしたんじゃないかとずっと気にしてくれたんです。私としては集中できたので、ありがたかったです」。