来店トラブルのネット“晒し” 法的問題は 専門家が解説

インターネット上でのコミュニケーションが社会に浸透する中で、SNSやブログでのちょっとした発信がトラブルに発展するケースが問題化している。自分が客として来店した際の店とのトラブルや不快感を“晒す”ような行為は、名誉棄損などの法的責任を問われる可能性も。新型コロナウイルス禍では「マスクなしの来店拒否トラブル」や「“禁止”時の酒類提供店の公表」といった新たな課題も出てきている。書き込みをする際にどんな問題が生じるのか。求められるリテラシーについて、法律の専門家に聞いた。

SNSやブログへの書き込みにはリテラシーが求められる(写真はイメージ)【写真:写真AC】
SNSやブログへの書き込みにはリテラシーが求められる(写真はイメージ)【写真:写真AC】

正木絢生弁護士に聞いた コロナ禍の中で新たな課題も

 インターネット上でのコミュニケーションが社会に浸透する中で、SNSやブログでのちょっとした発信がトラブルに発展するケースが問題化している。自分が客として来店した際の店とのトラブルや不快感を“晒す”ような行為は、名誉棄損などの法的責任を問われる可能性も。新型コロナウイルス禍では「マスクなしの来店拒否トラブル」や「“禁止”時の酒類提供店の公表」といった新たな課題も出てきている。書き込みをする際にどんな問題が生じるのか。求められるリテラシーについて、法律の専門家に聞いた。

軽トラからセンチュリー、バイクにバギー…大御所タレントの仰天愛車遍歴(JAF Mate Onlineへ)

 弁護士法人天音総合法律事務所の代表弁護士を務める正木絢生(けんしょう)弁護士によると、民事・刑事で責任追及を受けることにつながる大きなポイントの1つは、ネットへの書き込みによって店側が受ける影響の度合い。もう1つは、書き込む側の「影響力」だ。一般人より芸能人やフォロワー数の多い人といった、影響力の高さが考慮されるという。

 例えば前提として、来店客として店側にとってマイナスの事実を、店名や所在地、店員の名前などを公開して書き込んだケース。民事上では店の売上が下がったり、風評被害が出た場合に、損害賠償を請求される可能性がある。ただ、「ここの料理は味がまずい」「マナーの悪い別の客を店員が注意しなかった」といった内容を一般人が1回の書き込みで公表したとしても、事実上は訴訟を起こされるような問題にはならないという。

 ただ、うその書き込みかどうかの真実性に加えて、書き込みの回数や、店の存続に関わる事柄といった内容によっては、損害賠償を問われるケースもあるとのことだ。

 刑事上では「名誉毀損罪」と「偽計業務妨害罪」がある。

 名誉棄損の場合は、店の社会的評価が下がったかどうかが争点となり、書き込みの回数や内容に加え、影響力や伝播力のある人は、より可能性が生じてくるという。他方で、嫌がらせではなく、公共の利害に関するものであり、公益性を目的とする場合は責任追及からは除外されるという。

 偽計業務妨害については、「料理にゴキブリが入っている」や「あの店には暴力団がたくさん来る」といった内容を書き込んだことによって、店に客が来なくなってしまった場合に、法的責任が生じるケースもあるという。

 一方で、コロナ禍の中で、新たな騒動のパターンが出てきている。例えば、自分がマスクをしないで来店し、店側が来店拒否をした場合。店を公表してSNSに書き込んだ際は、書いた内容や表現の仕方、回数の程度によっては、名誉棄損に該当することもあるという。例示されるのは「マスクをつけていないからと来店拒否されて最悪。この店には2度と来ない」といった書き込みだ。マスク着用は感染対策として重要視され、社会通念上で認められていると考えられるからだ。

 ここで気になるのが、緊急事態宣言などによる酒類提供の「禁止要請」が出ている中で、お酒を出している店を公表するというパターンだ。一般的に、新型コロナウイルスの感染症対策を取っていない店をほかの人に知らせるという行為は、国民生活にとって大事な情報であり、公共の利害に関する事実として公益を図る目的と理解されるという。

 このような書き込みは、店側にとっては“叩かれる”ことにつながる可能性があるが、社会的に必要な情報と理解されるため、名誉棄損には当たらないことが考えられるという。ただ、ネット上での“告発”は度が過ぎれば、店側への深刻な被害につながる恐れがあることを忘れてはならない。

 いずれにせよ、SNSへの書き込み自体が、思わぬトラブルや、深刻な影響を起こしてしまうリスクがあることは確かだ。法的追及を受けてしまうような不用意な投稿をしないことが重要だ。

 正木弁護士は「自分が一般人であっても、書き込みをする前に、その後の影響を想像することが求められる。自分が正しいと考える行いであっても、反対の立場の人からすれば、見方が異なる場合もある。『正義感』には注意が必要で、自分の立場・価値観だけで、否定的な書き込みをすることは避けてほしい」としている。

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください