志半ばで逝った「破壊王」橋本真也さんの後を継ぐ「熱き男」がコロナ禍の日本に元気を呼ぶ

20年の歴史、橋本真也さんへの想いを大切にしながら、新たなステージに進む。ZERO1の「熱き男」大谷晋二郎が、その背中で団体を引っ張る決意を改めて固めた。

ひたすら明るく熱い大谷晋二郎。その周囲はまさにホットになる【写真:柴田惣一】
ひたすら明るく熱い大谷晋二郎。その周囲はまさにホットになる【写真:柴田惣一】

7月2日、熱い男の祭典「火祭り」に3年ぶり出場

 20年の歴史、橋本真也さんへの想いを大切にしながら、新たなステージに進む。ZERO1の「熱き男」大谷晋二郎が、その背中で団体を引っ張る決意を改めて固めた。

 コロナ禍で今年3月に予定していた設立20周年記念大会が延期。来年4月10日、東京・両国国技館で開催されることになった。ショックがなかったと言えば、ウソになるが、大谷は前向きそのもの。「万全な準備ができる。この時間はプロレスの神様からいただいたもの。大切にしたい」とキッパリ。大谷の心に引っかかっていた大切な問題もクリアされた。先の5・30後楽園ホール大会で、橋本大地に真也さんのガウンを託すことができたのだ。「これまでZERO1で預かってきた橋本さんのガウンをどうしていくかは、大地次第。これで、すっきりした」と、安堵(あんど)の表情を浮かべる。

 大地は複雑な思いを口にしているが、大谷は「彼が考えること。もう僕が口を出す時期ではない。立派になったし」と感慨深げだ。ZERO1の創始者である真也さんへの想いは、これからも不変。感謝とリスペクトは永遠に続く。ZERO1でデビューした大地も、現在は大日本プロレスの柱の1本になっている。橋本家との絆は大切にしていくが、一区切りついたのかも知れない。

 長らく「橋本真也のZERO1」だったが、そろそろ「大谷晋二郎のZERO1」に衣替えしてもいいはずだが、大谷は「とんでもない。ベテランから若手まで、みんなのZERO1です」というだろう。

 とはいえ、現在ZERO1が存在しているのも、大谷のZERO1愛があればこそ。何度も消滅の危機に陥りながらも、必死になって生き残り策を模索し、駆けずり回ってきた。正直、大谷のZERO1への熱い想いがなかったら、大谷が心を折られていたら、ZERO1はとっくに消えていたはず。

 他団体でも、大谷が提唱する「ホットジャパン」に賛同する選手もいるほど、熱い男の熱い気持ちは人の心を動かす。「練習生がたくさん入ってくれて、若手選手が頑張っている。ZERO1って、オジサンばかり、なんてイメージがあったかも知れないけど、もう違う」と、何ともうれしそうに語る顔は、父であり兄であり、リーダーのそれだ。

 ZERO1のナンバー1を競う「火祭り」にも、2018年以来、3年ぶりに出場する。「今年は出なくては、という思いが体の芯からわいてきた。他団体の選手も多く参加してくれるけど、僕が優勝しなくてどうする? ZERO1の若手選手にしっかりと見届けてほしい」と意気込む。実際、優勝者に送られる「火祭り刀」を構えた姿が、誰よりも似合うのは、4回の優勝を誇る大谷である。

 7月2日、東京・新木場1stRING大会で開幕する火祭り。決勝戦(8月1日、後楽園ホール)まで、1か月にわたって、壮絶なサバイバルレースが展開される。暑い夏は「熱い男」にとって、願ってもない戦場だ。

「2010年以来、11年ぶりの5度目の優勝。何があっても成し遂げたい」と、ぎゅと唇をかみしめる大谷は「コロナで元気がない日本だけど、沈んでいても仕方がない。ホットジャパンの熱い気持ちを日本中に届けたい」と力強い限り。「わくわくするプロレス」でZERO1の先頭に立つ。

次のページへ (2/2) 【写真】大谷晋二郎のファイトは見る者をわくわくさせる
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