怪談マエストロ、27年目の新境地 稲川淳二が語る「ラストのない恐怖」の真相とは…
稲川淳二が日本全国を巡る怪談ツアーは27年目を迎えた。今年は7月13日の群馬前橋公演を皮切りに全国で48公演を行う。聞く側を強引に引っ張り込むのではなく、想像力に訴えかけて自然に異次元空間へと誘う恐怖。反面、終わった後は不思議なほど爽快で温かさに包まれるような感覚。他とは一線を画すその怪談は四半世紀を経て「稲川怪談」というジャンル名で呼ばれている。そんな令和元年、新たに生み出した怪談は、今までとは違う恐怖が待っているという。早速、座長の待つ暗闇へと足を運んだ。
“怪談マエストロ”稲川淳二の27年目の夏 テーマは「歴史にならない歴史」
稲川淳二日本全国を巡る怪談ツアーは27年目を迎えた。今年は7月13日の群馬前橋公演を皮切りに全国で48公演を行う。聞く側を強引に引っ張り込むのではなく、想像力に訴えかけて自然に異次元空間へと誘う恐怖。反面、終わった後は不思議なほど爽快で温かさに包まれるような感覚。他とは一線を画すその怪談は四半世紀を経て「稲川怪談」というジャンル名で呼ばれている。そんな令和元年、新たに生み出した怪談は、今までとは違う恐怖が待っているという。早速、座長の待つ暗闇へと足を運んだ。(取材・文=福嶋剛)
――座長、怪談ツアーも今年で27年目ですよ。
「早いですよねえ」
――何より驚くのは、27年目にして約3か月で48回公演ですよ。ローリング・ストーンズだって、ここまでやりませんから!
「本当は56ヶ所は行きたかったんですがね(笑)なぜかというと、それはファンの方とうちのスタッフが本気だからですよ。間違いなく私のファンはファン以上、だからうちのスタッフも変わらず一生懸命なんですよ。いつも『次はどうやってやろう』ってみんな新しいことを考えていてね。だから“稲川怪談”という世界を作ってくれたのは間違いなくうちのファンとスタッフですよ。楽しくて仕方ないですよね。もう毎年、新鮮ですよ。それで今年はテーマと言うわけではないんですが、『歴史にならない歴史』。これを皆さんに紹介していきたいなって思っているんですよ」
――歴史にならない歴史とは?
「有名な事件とか出来事っていう誰もが知っている歴史じゃなくて、当事者が亡くなってしまって、もし私が発表しなかったら、もう誰も知ることのない、記録に残っていない歴史です。生前に残された体験談には魂がありますから、まさに怪談に近い位置にある話なんですよね」
――構想は前から決まっていたのでしょうか?
「いやあね。今回はちょっと不思議なんですよ。毎年この時期が来ると、怪談をまとめていくんですが、今年はどうにもまとまらなかった。弱ったなあと思って、ふっと(話の破片が収録されている)ファイルを引っ張り出したら、今まで全然紹介してなかった話が出てきたんですよ。昔、新聞記事に小さくのっていたような話なんですけどね。『そういえばほかでも、似たような別の話を聞いたことがあったな』って思い出した。するとまた『あ、そういえば、何年か前に同じような別の話もあったよな』って、話の断片がどんどんとつながっていく。それを、ああだこうだとまとめていたら、つい眠り込んでしまいましてね。すると夜中にふと目が覚めたんですが、なぜだかその話が頭の中でひとつにまとまっていたんですよ。……不思議ですよねえ。慌てて起きて、真っ暗闇の中、スタンドの灯だけですーっとまとめて、50分で書けちゃった。1週間かかっても完成しない話が多いのにね。翌朝読み返してみたら、これがほんと良かったんですよ」