BTS事務所の“株価”は今 上場後の暴落から上昇傾向へ 米ビルボード「HOT100」1位で期待感
韓国のボーイズグループBTSの新曲「Butter」が米ビルボード「HOT 100」チャートで初登場1位となり世界中で話題となっている。「Dynamite」「Savage Love」「Life Goes On」に続く通算4度目の1位獲得という快挙を韓国メディアも続々と報じているが、一時暴落とも言われた株価はどうなっているのだろうか。
外国人投資家が注目 5月の株価は約12%値上がり
韓国のボーイズグループBTSの新曲「Butter」が米ビルボード「HOT 100」チャートで初登場1位となり世界中で話題となっている。「Dynamite」「Savage Love」「Life Goes On」に続く通算4度目の1位獲得という快挙を韓国メディアも続々と報じているが、一時暴落とも言われた株価はどうなっているのだろうか。
BTSが所属するエンターテインメントコンテンツ企業「HYBE」は韓国の株式市場に上場しており、3日の終値は26万9500ウォン(約2万6500円)と前日に比べ6000ウォン(2.28%)上昇して取引を終えた。
同社の株価と言えば、昨年10月15日にIPO(新規株式公開。当時の社名は「ビッグヒットエンターテインメント」)として上場。公募価格13万5000ウォン(約1万3300円)に対し初値は27万ウォン(約2万6600円)で取引開始。その後、わずか1時間でストップ高の35万ウォン(約3万4500円)に到達するほど加熱したが、機関投資家から大量の売り注文が出て値を下げ、初値を下回る25万8000ウォン(約2万5400円)で取引を終えた。
以降も同社の株価は値下がりが続き、同月30日には14万580ウォン(約1万3800円)という安値にまで落ち込んでしまった。最高値からの下落率は約60%にも及び、同社株に投資した多くの個人投資家やファンが損失を抱える事態となった。
しかしその後、株価は徐々に回復。12月に入って18万ウォン(約1万7700円)台に乗せた後、年末年始に15万ウォン(約1万4800円)台へ落ち込んだが、1月中旬に一気に騰勢を強めた。3月に一時20万ウォン(約1万9700円)を割ったものの再度回復し現在に至っている。
初値付近まで回復した同社株価について現地金融系メディアは「外国人投資家が5月中に約220億ウォン(約21億7000万円)をHYBE株に投資した」と報じており、有価証券市場で外国人投資家が最も多く購入した銘柄の中で3位となった。同社株は5月を通して12%上昇している。
3日終値時点で同社の時価総額は約10兆ウォン(約9840億円)。東証1部上場のエンターテインメント企業「エイベックス」の時価総額が734億円、「アミューズ」が424億円(3日終値時点)であることと比べると「HYBE」がいかに巨大かが分かる。
資金力を持つ「HYBE」は4月、ジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデら世界的なトップアーティストを抱える米国の総合メディア企業「イサカ・ホールディングス」を買収すると発表し世界中を驚愕(きょうがく)させた。全株式を10億5000万ドル(約1150億円)で取得し傘下に収めることで、K-POPアイドルの世界進出とグローバルな音楽産業への参画を促進し同社の成長を加速させる戦略を打ち出した。予想外の買収劇に株式市場は敏感に反応し株価は数日にわたり急騰、一時27万ウォン(約2万6600円)台を上回った。その後も戻り売りをこなしながら上昇気配を強めている。
韓国の金融メディアは「HYBE」の株式について「BTS依存からの脱却がカギ」などと伝えている。しかし、このような見方は株式上場前からも取りざたされており、だからこその「イサカ」買収だったのだ。BTSはジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデらと同じマネジメントの下で活動することになる。株価が回復してきたことで当初、大きな含み損を抱えた個人投資家の不満は和らいでおり、批判的論調もほとんど目立たなくなった。
BTSは「Butter」の米ビルボード1位の知らせに「『Butter』を聴きながらエネルギーを充電して元気を出してくれれば、僕たちにこれ以上のプレゼントはない」と感謝を伝えた。世界を席巻するBTS。ファンの熱心な応援は株価への“エネルギー充電”ともなりそうだ。
ところで今後の株価見通しはどうか。「英国が自主隔離免除国を公表したり、米国ラスベガスのコロナ関連規制がほぼ撤廃されるなど欧米では観光再開の動きが進み、K-POPグループの海外ツアー再開も視野に入ってきました。ツアーによる興行収入やグッズ販売によって収益が上がれば株価も上昇しそうですが、現在の株価にすでに織り込まれている可能性もあります。気になるのは投資の目安となる株価収益率(PER)が90倍を上回っていること。日本の上場企業の場合、PERは平均15倍程度ですのですでにかなり割高と言えます。ただし、ビジネスモデルが強固で高成長が望める場合、PERをあまり気にしないファンドマネジャーもいます」(株式アナリスト)
「Dynamite」のように爆発的上昇か、「Butter」のようにやがて溶けてしまうのか。株価から目が離せない。