ワクチン接種、“予約競争”の中で選択肢に困惑 60代自営業夫婦「振り回されている」
新型コロナウイルス感染対策のカギと期待されるワクチン接種。国内のワクチン接種率がなかなか上がらない中で、高齢者向けの自衛隊大規模接種センターが東京と大阪で5月24日から運用を開始し、周辺7都府県にも予約が拡大。医療機関での個別接種の選択肢も整えられている。千葉県内の自営業の60代夫婦は、葛藤の末に、かかりつけ医での個別接種を選んだ。悩みながらも接種の日を待つ心境を聞いた。
高齢者向けの接種 大規模接種か“かかりつけ医”か…選択の胸中
新型コロナウイルス感染対策のカギと期待されるワクチン接種。国内のワクチン接種率がなかなか上がらない中で、高齢者向けの自衛隊大規模接種センターが東京と大阪で5月24日から運用を開始し、周辺7都府県にも予約が拡大。医療機関での個別接種の選択肢も整えられている。千葉県内の自営業の60代夫婦は、葛藤の末に、かかりつけ医での個別接種を選んだ。悩みながらも接種の日を待つ心境を聞いた。
夫婦は先代から受け継いで自営業を営んでいる。来店客に接する仕事で、地域になじんだ店だ。コロナ禍を受けて、消毒、換気、マスク着用などの徹底に加え、健康管理に努め、2代目として店の看板を守っている。
まん延防止等重点措置が延長された千葉県内で暮らす。65歳以上のため、高齢者接種の対象者だ。夫婦の住む自治体による接種の場も設けられている。自衛隊大規模接種センターの東京会場では、予約受け付け対象が同28日から新たに、千葉・埼玉・神奈川の3県で拡大。千葉県の熊谷俊人知事は、県独自の大規模接種会場の開設を表明している。
夫婦は接種会場や日程・予約方法を調べ、日々変わる情報を追っているうちに、予約枠が“予約競争”で埋まってしまうケースが多発。店の営業時間と接種候補日の調整を考えるだけでも頭を悩ませた。「地域のクリニックや医院でも、電話がパンクしたと聞いた」と女性。70代、80代の高齢者はもっと苦労して大変であるとも聞いた。困惑が続いた。
どうするべきか、夫婦で言い争うこともあった。最終的に、男性は普段から通っている医者で予約を行った。決断の理由の1つには、「いつもの先生に打ってもらう安心感もあった」。持病についても理解してもらっており、信頼できる医者に頼りたい思いもあるという。朝一で十数人が並んだ。それでも1回目は8月になる予定と聞き、思わず声を上げて驚いたという。女性は今月の定期健診の際に、かかりつけ医に日程相談を行う考えだ。
接種までに時間が空く。もちろん、仕事のことを考えれば、「早いほうにこしたことはない」。ただ、これまで感染者を出さずなんとかやってきている。でも、店のローンはまだ何年も残っている。男性は今でも「出遅れたのかな、と悩むこともある」と打ち明ける。
自衛隊大規模接種センターの東京会場に電車で行くという選択肢も考えている。しかし、副反応への不安がよぎるという。女性は「普段からあまり電車に乗らない生活の中で、帰りに副反応が出たらと思うと、怖さも感じる」と話す。一般的に見ても、60代で日々あくせく働いている人は多い。慢性的な足の痛みを抱える男性は「仕事をしながら、予約についてあれこれ考えていくのは正直大変でもある」と漏らす。とはいえ、接種をめぐる状況は日々変化しており、引き続き情報を把握して検討していくという。
一方で、日本のワクチン接種率は世界と比べて低いことは事実だ。接種施策のスピード感の不足が指摘される現状に、男性が「振り回されているような感覚はある」と話せば、女性は「もしワクチンの在庫があるのならば、打ち手を増やして、もっと早く拡充してほしい」と切実に訴えている。