「ドラゴン桜」が突き付けた“親による子への性差別” 東大女子比率「2割の壁」の現実
桜木の怒り爆発「娘を優位に立たせたくないだけだ!」
しかも、この父親は自宅で娘を殴打し顔にけがをさせるという蛮行を働く。再度来校した父親は「早いうちに優秀な相手を見つけて結婚させる。女にとってそれがいちばん幸せなんです」「女で高学歴なんていったらあの女(=水野)のように生意気なうえに人を見下すクズみたいな人間になる。だから女に学歴は必要ないんだ!」と決めつけるのだった。
怒りがこみ上げた桜木はすかさず反撃に出る。「あんたは単に娘を自分より優位に立たせたくないだけだ!」「女に学歴は必要ない、そういう時代錯誤のヤツっていうのは自分のプライドを守るために古い考えに固執し、今の世界を見ようとしない!」「そのちっぽけなプライドを守るために娘の自由を奪い、力ずくで抑え込もうとする。そういう親こそ本当のクズ野郎だとオレは思うがな!」。胸のすく痛快なせりふだった。
大学進学をめぐる親と娘の葛藤はドラマだけの話ではない。地方出身の東大女子学生が「親から『東大なんてとんでもない。地元の学校で十分だ』と言われた。親と殴り合いのけんかをする覚悟で東大を受験しました」などと話すのを聞いたことがある。
上野千鶴子東大名誉教授が指摘「親の性差別の結果」
東京大学名誉教授の上野千鶴子さんは2019年度の東京大学学部入学式で祝辞を述べ、「2016年度の学校基本調査によれば4年制大学進学率は男子55.6%、女子48.2%と7ポイントもの差があります。この差は成績の差ではありません。息子は大学まで、娘は短大まででよいと考える親の性差別の結果です」と指摘した。
さらに、ノーベル平和賞を受賞したパキスタンのマララ・ユスフザイさんが日本を訪れて「女子教育」の必要性を訴えたことにも触れ、「どうせ女の子だし、しょせん女の子だから、と水をかけ、足を引っ張ることを意欲の冷却効果と言います。マララさんのお父さんは、どうやって娘を育てたか、ときかれて、娘の翼を折らないようにしてきた、と答えました。そのとおり、多くの娘たちは子どもなら誰でも持っている翼を折られてきたのです」と語りかけた(東大公式ホームページ「平成31年度東京大学学部入学式祝辞」より抜粋)。父親からDVを受けた小杉麻里はまさしく性差別を受け、翼をへし折られる寸前だったのだ。
これは他大学の女子大学院生のケースだが、「交際中の彼氏から大学院進学を猛反対されました。学歴が自分より上になってほしくなかったようです」と泣きながら明かされたこともあった。恋人同士でも性差別が存在している現実は憤懣(ふんまん)やるかたない。
“女子にとっての東大受験”をアピールする画面構成
第6話の終了時点で龍海高校の東大専科は計7人となった。男子4人、女子3人と数だけでいえばここでも男性優位に見えるが、前列4人、後列3人という座席の配列と着席者に注目すると、女子3人は画面中央に集まって座っている構図となっており、結果的に“女子にとっての東大受験”をアピールする映像になっていた。ここに制作側の意図と熱意がうかがえる。
東大の女子比率が少ない原因については、社会の雰囲気や親の時代錯誤的感覚だけではなくAO入試や推薦入試など東大の選抜方式に問題がある、などの指摘もあるため一概には言えないが、少なくとも小杉麻里が東大受験を決意するシーンを見て勇気付けられた女子受験生はたくさんいたのではないだろうか。その翼で飛躍する日が来ることを祈りたい。