日本プロレス界の宝 DDTが誇る「ザ・フューチャー」が米AEW遠征を経て一皮むけた
「ザ・フューチャー」竹下幸之介が自ら切り開いた完全復活ロードを歩み出した。
間もなくレスラー人生10年目 下半期は巻き返しへ
「ザ・フューチャー」竹下幸之介が自ら切り開いた完全復活ロードを歩み出した。
昨年11月「本道」秋山準に敗れ、自分の築き上げていたプロレスに迷いが生じた。自信を失ってしまった。今度ばかりは、自分の手で活路を見いだすしかない。竹下が自ら動いたのは、米AEWへの遠征だった。
かつてDDTでしのぎを削りあい、羽ばたいていったケニー・オメガら、勝手知ったる仲間たちが活躍するAEWにコンタクトしたものの、新型コロナウイルス禍もあって、いつにもましてハードルは高かった。昨年末から交渉を重ね、ついに4月に実現した。
1週間で3試合に参戦した。「スター選手から若手選手まで本当に層が厚い。その中で評価をいただけた」とキッパリ。自信回復のカンフル剤になったことは間違いない。ケニーはもちろんクリス・ジェリコらともじっくりと話し合えた。今回で終わらず、定期参戦もありそうだ。
そして何より、思い知らされたのは「キャリアの重み」だと振り返る。竹下は若くしてトップに躍り出ている。ベルトを獲得するなど、実績をあげても、ついて回ったのが「キャリア不足」という声だった。
どんなに練習しようとも、体を鍛え上げようとも、キャリア問題はどうにもならない。「理不尽」という思いが体中を駆け巡り、悔しさを押し殺してファイトし続けた。
今回のAEW遠征でふと気づかされた。「やはりキャリアは大切。自分がアメリカのファンや選手、関係者に高評価を得られたのも、路上など何でもありのDDTプロレスを9年間、積み重ねてきたことが大きい」と、腑に落ちた表情を浮かべる。
2012年8月、デビューしており、間もなくレスラー人生10年目が始まる。ここにきて、プロレスラーとしてステップアップし、新境地に突入したのだ。
DDTそしてサイバーファイト(CF)が、勝負をかける6・6さいたまスーパーアリーナ大会で、竹下は上野勇希と組み、ノアの清宮海斗、稲村愛輝組と激突する。
王者・武藤敬司VS丸藤正道のGHCヘビー級戦、HARASHIMAが王者・秋山に挑戦するKO‐D無差別級戦と並んで注目を集めており「DDT VS ノア」のそれこそフューチャーを賭けた大一番である。
意気込む竹下か、と思いきや「4人の中でキャリアは僕が一番。DDTそしてノアのファンの期待も感じる。タイトル戦に負けない試合をしたい」と落ち着き払っていた。無論、勝利は当たり前のことなのだ。
竹下が「熱量が足りない」と面前で指摘した清宮は、大流血を繰り返し「分からない」と迷い道にはまり込んでしまった。
清宮は19年、GHC王者としてノアをけん引したが、王座陥落後、なかなか結果を出せないでいる。竹下は「6・6決戦をスランプや流血ショックから脱出するきっかけにしようなんて、思っているんだとしたら……コテンパンにのしてやる」と語気を強めた。
今年の下半期、竹下は一気に巻き返しに出る。6・6決戦で「DDTに竹下あり」と満天下に改めてアピールする。秋山にもリベンジする。早ければ6月10日に始まる「KING OF DDT 2021」で対戦できる。組み合わせ次第だが、いずれにせよ、16人参加のトーナメントを勝ち上がり、決勝戦(7月4日、後楽園ホール)で優勝するしかない。
最強の座「KING OF DDT」に君臨すれば、KO‐D王者に挑戦できるはず。時の王者が秋山なら、ベルト奪還と一石二鳥のチャンスだ。どう転ぼうと、ベルト奪還以上の宿題でもある秋山越えを、実現しなければならない。
「自分で切り開いたAEW遠征で、手ごたえをつかんだ。これから、僕の時代がくる」と、目を輝かせる竹下。揺るぎなき「ザ・フューチャー」の時代が2021年、やってくる。