梅雨期間にじっくり読みたい長編作品5選 「若い頃に必ず読んでほしい」名作も
HMV&BOOKS OKINAWAの書店員が、梅雨の時期に家でじっくり読みたい長編をピックアップ。5作品とともに、その理由を紹介している。
書店員がピックアップ、コミックから長編歴史小説まで
HMV&BOOKS OKINAWAの書店員が、梅雨の時期に家でじっくり読みたい長編をピックアップ。5作品とともに、その理由を紹介している。
今回のキュレーターは中目太郎氏。今年は全国的に梅雨入りの時期が平年より早く、地域によっては5月上旬より梅雨入りとなった。「梅雨の時期に家でじっくり読みたい長編作品」として、コミックから長編歴史小説まで5作品を選んでいる。
5作品と選出理由は以下のとおり。
(1)[コミック]先輩がうざい後輩の話/しろまんた
人間関係とはとても複雑なもので、タイミングや細かな表情の違いで大きな誤解が生まれたりします。言葉もとても複雑で、オモテの意味とウラの意味が違ったり、感情を表しきれなかったりして意図しない伝わり方をするものです。この作品の先輩と後輩の人間関係、「うざい」という言葉の意味、どちらもエピソードを積み上げるごとに複雑なグラデーションを見せてニヤニヤさせてくれる漫画です。
(2)[小説]正欲/朝井リョウ
なぜ正しいことを正しいと確信が持てるのか、読み進めるうちにそんな疑問が大きくなる作品です。ある共通点を持つ登場人物たちに感情移入して読むと、すべての境界があいまいになり、寄る辺なさに足がすくむ思いがします。目に見えず、形も実態もない、おそらく大多数の人が意識したこともない悪意に常にさらされる苦しみが描かれています。
(3)[小説]波の上のキネマ/増山実
兵庫の尼崎から大阪、那覇、西表島、台湾、そしてまた尼崎へと、はるかな距離と時代を超えて展開される壮大なドラマです。第二次世界大戦の開戦が迫るなか、数奇な運命によって絶海の孤島へ送られ、過酷な状況に置かれた人々を支えたのは、「会いたい人がいる」という想いと、映画への情熱でした。史実を基にした驚愕(きょうがく)の物語です。
(4)[エッセイ]深夜特急/沢木耕太郎
インターネットも携帯電話もない時代、世界はこんなにも個性にあふれ、熱気で満ち、意外なところでつながっていた。旅を描いた作品として定番となった「深夜特急」は、現代においてまた違った価値観を示しているように思えます。1970年代の世界を細かく写し取った文章は、現代の読者の目には新鮮なものに映るでしょう。若い頃に必ず読んでほしい作品です。
(5)[小説]背教者ユリアヌス/辻邦生
72年に発表された辻邦生による長編歴史小説です。ローマ皇帝ユリアヌスを主人公に、権力をめぐるローマ帝国内での骨肉の争いや、当時の新興宗教であるキリスト教との確執を中心とした生涯を描いています。特筆すべきはその耽美な描写。長編であることによって、地中海のローマ世界にどっぷりと浸れます。大河ドラマのように歴史の流れを味わってください。