「ただの足し算ではなく掛け算」 「SEPT」Vol.10公演でキャストが生み出す相乗効果
朱音祈留は“等身大のピコ”に近い存在
■ピコ/朱音祈留役
――2本同時上演となる「ReUnion|ReVise」の見どころを教えてください。
「リメイク版の『ReUnion』、その背景や深い心情を描いた『ReVise』、どちらかだけを見てももちろん面白いと思うんですが、やっぱり両方を見てこそ、本当の意味で作品として完成するのかなと感じます。個人的にもとても好きな構成です」
――ピコさんは普段、歌い手として活躍されています。音楽と演劇を融合させた「SEPT」の作品に刺激を受ける部分は大きいのでは?
「今まで何度か舞台に出させていただいた経験はあるのですが、ここまで音楽を突き詰めてやる舞台は初めてです。自分が挑戦できるお芝居、自分が帰れる場所である音楽が両立されていて、それがただの足し算ではなく、掛け算として相乗効果が生まれて、何倍にも面白い作品になるのが『SEPT』さんならではの演出なのかなと思います」
――前作から引き続き演じる、朱音祈留はどんなキャラクターですか?
「祈留はある理由で歌が歌えなくなります。僕も同じような経験をしたことがあって、2年前に大きな病気をして生きるか死ぬかの状況になったときに、音楽を続けられなくなるかもしれない、歌えないかもしれないというすごくつらい思いをしました。だから、祈留の気持ちも自然と自分に入ってきましたね。朱音祈留は劇中のキャラクターではあるんですけど、本来の自分に近いのかなと。僕自身すごく負けず嫌いで、プライドが高い部分もあって(笑)、でも実は寂しがり屋で、優秀な妹がいたりするので、すごく祈留と重なるんです。キャラクターに関しては、悩むことはほとんどありませんでした」
――朱音祈留を語るうえでは、妹・玲との“伊藤兄妹”は欠かせない視点かと思います。
「前作の『ReAnimation』のときよりも伊藤兄妹の演出は増えていて、『ReVise』の中で色濃く描かれています。台本をいただいて、2人にはこういう背景があったんだと理解してから、伊藤玲役のみのりちゃんと一緒に曲を作りました。お芝居はもちろん、音楽の部分でも兄妹像を自分たちなりの形で描けていると思います」
――会場、配信で観劇する方へメッセージをお願いします。
「このようなご時世で、外に出るのも怖くなるというようなときに見に来てくださる方には感謝しかありません。遠方から来られる方、配信で観られる方もいらっしゃると思いますが、いろんな登場人物の視点から物語を見てほしいと思います。細かい表情一つ一つでこの人は今どう思っているんだろう、どういう立場で話しているんだろうと、演出のウチクリ(内倉)さんもこだわって作っていらっしゃいました。眉毛一つだけの動きとかも見てほしいし、いろんな葛藤や挫折の末に、最後音楽と一緒に解き放たれる喜びや楽しみを感じてほしいなと。それはきっと僕たちが全力で臨めば配信でも伝わるはずです。みんなでバトンをつないでいくなかで、そのバトンの最後がお客様に届くように伝えていきたいと思います」