eスポーツ選手がセカンドキャリアに見据える普及活動「“教える”仕事が生まれ始めるのかなと…」
「最終的にどんどんeスポーツ全体が盛り上がっていけばいい」
もちろん、1人の現役選手としての抱負にも強いものがある。昨年はチームとして勝利の遠い時期を経験しながらも、リーグ終盤には目覚ましいほどの挽回を見せた。ただ、eスポーツとしての“盛り上がり”にも目を向ける水煮は、勝利だけで十分とは考えていない。
「チームとしても個人としても、一番身近にある目標はリーグ優勝だと思っています。それに加えて、良いプレイをすることによって、『プロ選手ってすごい』って思ってもらったり、観客の人が『おお』と盛り上げたりできるといいのかなと。アマチュアでは絶対にできないようなプレイをして盛り上げていくことによって、最終的にどんどんeスポーツ全体が盛り上がっていけばいいなと感じています。
サッカーや野球はスタジアムで試合をしますよね。シャドウバースでも同じように大規模な会場で試合をできるようになれば、eスポーツ業界としてのゴールと言えるんじゃないかなと。そのためにも、僕自身も含めて良いプレイを継続的にやっていくことが一番になると思います。
海外の話になってしまうんですが、リーグ・オブ・レジェンド(チーム対戦型のストラテジーゲーム)の大会ではすごく大きなスタジアムで試合が開催されて、観客が囲む中で選手がプレイしていました。シンプルにすごいなと感じます。オフラインで開催して、観客が実際に現地に行くということが重要なのかなと。オンライン開催だと、どうしてもファンは1人で見ることになってしまって、盛り上がるというのはなかなか難しいと思います」
大規模な大会の盛り上がりはファンの間で伝播し、ゲームやeスポーツ全体の盛り上がりにもつながる。目の前に観客がいることの重要さを、プロサッカーチームを抱えるF・マリノスの一員だからこそ実感した経験がある。
「僕たちは参入して最初のシーズンに準優勝したんですが、そのときにF・マリノスの日産スタジアム(収容人数7万2327人)でご挨拶させていただく機会がありました。そのときの観客の人たちの声も記憶にあって……。別のジャンルを応援している人も、シャドウバースをはじめとしたeスポーツに引き込めたらいいなと。せっかく僕はF・マリノスという歴史と伝統のあるクラブに所属しているので、うまくプラスになるようにやっていけたらいいなと思っています」
まだまだ無限の広がりを持つゲームとeスポーツの世界。黎明期を完全には脱していないからこその可能性を探りながら、水煮はこれからも最前線での戦いを続けていく。
□水煮/1988年2月3日、山形県生まれ。横浜F・マリノスeスポーツ「シャドウバース」部門にチーム発足から所属し、ローテーション担当として活躍中。
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