「30代以上でもやれる」 引きこもりを乗り越えたプロeスポーツ選手の矜持と覚悟

プロeスポーツ選手としての日々に「充実感はすごくあります」と語る【写真:ENCOUNT編集部】
プロeスポーツ選手としての日々に「充実感はすごくあります」と語る【写真:ENCOUNT編集部】

「30代以上でも全然やれる。そのあたりをもっと広めていきたい」

 30年近く趣味として親しんできたゲームが仕事になり、充実感を覚える一方で、プロとしての責任感との付き合い方も学んできたと明かす。

「充実感はすごくありますし、毎日が楽しいです。一般的には趣味としてされているものが、毎日続いているようなものですからね。プロという勝たなければいけない立場にある中で、シャドウバースの競技的なシーンでは負け越すこともあります。負けた日には『大丈夫かな』と不安になる日もあります。

 その中で負け越したときには息抜きに1回ストップして別のこと、例えば家事をやったりして落ち着いたり、試合の日なら負けたら1回寝てリセットすることもあります。それで気持ちの切り替えをしていますね。プロ入りした当時は負けたら3~4日落ち込むこともありましたが、最近は負けても1日くらいで切り替えて『さあ、次』とできるようになりました。精神的にもいい形になってきているのかなと思います」

 水煮はチーム最年長であることに加え、プロeスポーツ選手としても年齢の高い部類に入る。大多数のプロスポーツは年齢と切っても切り離せない関係にあるが、“頭脳戦”としての側面が強いデジタルカードゲームというフィールドで、「年齢の壁」は存在しないと強調した。

「シャドウバースに年齢は関係ないと思っています。10代と20代がメインですけど、30代や40代、それに50代でも全然やれるゲームだと認識していて、チーム内でのコミュニケーションを取るときも最年長だからというのは特にないですね。逆にチームメンバーも、僕が最年長だからといって気を遣うこともありません。チーム内では全員がフラットな形でいいのかなと思っています。

 カードゲームには年齢の壁がない。格闘ゲームやFPS(一人称視点のシューティングゲーム)は、脳の回転や反射神経が求められるところがあって、若いうちが限界かなとは思います。でもカードゲームでは1ターンに与えられる思考時間の制限こそありますが、そこまで影響はなくて、30代以上でも全然やれる。そのあたりをもっと広めていきたいと思っています。僕はチーム内でもそうですが、リーグの選手としても最年長。『30代以上でもやれる』とアピールできる場があったらなという思いはあります」

 決して順風満帆ではない時期も経験しながら、幼少期から親しんできたゲームでチャンスをつかんだ水煮。これから開幕する新シーズンでの活躍にも注目だ。

□水煮/1988年2月3日、山形県生まれ。横浜F・マリノスeスポーツ「シャドウバース」部門にチーム発足から所属し、ローテーション担当として活躍中。
ツイッター:https://twitter.com/mizuni00

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