水原希子&さとうほなみ主演作、暴力と性描写 廣木監督「ギリギリ許されたのかな」
やりきれた理由は作品にかける2人の思いと体力
――演技しやすいようにムード作りはしましたか?
「一切しないし、一切ケアしていません。逆にほったらかすというか、ケアしない方が芝居についてはいいような気がします。僕は現場では女優さんから嫌われるタイプのようで、撮影が終わると『2度と会いたくない』とか思われているみたいなんですが、今回は大丈夫だったみたいです(笑)。ただ、『2度と会いたくない』と思われても、作品を見てもらうと出演してよかったと思ってもらえるようです」
――ラストのクライマックスシーンは10分にも及ぶ長回しです。現場でのディレクションは?
「ある程度の流れは言いますが、細かいところはお任せです。本当に撮影の最後の方だったので彼女たちでちゃんと励まし合いながら、自然にああいうふうに動けるくらいになっていた。演じる方も撮影する方もハンパなく疲れますけど。あのシーンをやりきれた理由は、作品にかける2人の思いかなぁ、という気はします。あとは体力ですよ。2人とも若いですから」
クライマックス「部外者は誰も入れないようにした」
――このシーンの撮影はどんな様子でしたか?
「部外者は誰も入れないようにしました。カメラマンと僕だけ。あとは誰もいない。照明は仕込んで終わりにしました。録音はさおを伸ばして。そういうふうにして撮影しています」
――ところでレイと七恵の高校生時代を演じた南沙良さんと植村友結さんの演技も印象的です。
「南沙良さんは水原希子さんと似ているところがあり植村さんもそうですが、似ているというよりは彼女らが持っている雰囲気です。似ているというよりそっちで選びました。芝居でもない。雰囲気ですね」
――LGBTQについては意識しましたか?
「僕はいろいろな人がいて当たり前だという思いがあります。その中でいろいろな家族の形やいろいろ生活があるのも当たり前だし、個人個人によって違うだろうという気がします。自由がいいじゃん、と思ってます」
「女性の生き方がその時代をいちばん表している」
――この作品は今の時代の何を切り取っていますか?
「女性の人の生き方がその時代、時代に出ている。つまり、女性の生き方がその時代を一番表していると思うんです。そういう意味ではいろんな人に見てほしい。恋で悩んでいる人にも元気がない人にも。最後は希望もあるし作品のテーマも見えてくるはずなので」
――映画タイトルの「彼女」は、世の中のすべての女性を表しているのでは?
「そうなっていてほしいと思います」
□廣木隆一(ひろき・りゅういち)1954年、福島県郡山市生まれ。1982年「性虐!女を暴く」で映画監督デビューした後、日活ロマンポルノ映画を多く手がける。94年に米サンダンス映画祭で奨学金を得てサンダンス・インスティテュートに留学。帰国後に発表した「800 TWO LAP RUNNERS」で文化庁優秀映画賞を受賞した。2003年には寺島しのぶ主演の映画「ヴァイブレータ」で第25回ヨコハマ映画祭の監督賞のほか国際映画祭で数多くの賞を受賞。09年公開の「余命1ヶ月の花嫁」は興収30億円を超える大ヒットとなった。15年に処女小説「彼女の人生は間違いじゃない」を発表し、17年に瀧内公美主演で同作を映画化した。近年は「伊藤くん A to E」(18年)、「ママレード・ボーイ」(同年)、「ここは退屈迎えに来て」(同年)などを手がけた。