チェッカーズの封印を解いた藤井フミヤ…29年ぶりに「ギザギザハート」歌いたいと恩師に相談していた
ステージに上がって歌い続けていくことが1番のライフワーク
――7月に59歳を迎えられますが、フミヤさんにとっての50代は、どんな10年でしたか?
フミヤ「僕にとっての50代はね、もう瞬間的に過ぎていきましたよ(笑)。50代って子育てが終わる頃だったり、ちょっとここでペースを落としてゆっくりするのかなって思っていたんだけれど、全然そうでもなかったんです。なんだろう……脂(あぶら)はのっているんだけれど、想像していたものとは違う脂なんだよね。新鮮な感覚はないけど人間味に深みが出るというか。昔だったら初老とか、そんな年齢かもしれないけれど今は全然違うよね」
――50代のうちにやっておきたいこと、またやり残したことはありますか?
フミヤ「あえて後悔をするなら、もっとギターを練習しておけばよかったとか、もうちょっと鍵盤が弾けたらよかったとか。まあいろいろありますけど、自分が手に入れたいものって、買って手に入るようなものじゃなくて、コツコツ努力をしないと手に入らないようなもの。自分はそういうものしか欲しくない。だけど、それってなかなか手に入らないですよね」
――確かにそうですよね。50代といっても、ひと昔前の“そろそろ現役引退かな?”とか、もうそんな年齢じゃなくなりましたし、まだまだ手に入れるチャンスはありますよね。フミヤさんの周りの先輩も同期の皆さんもまったく引退するような気配を1ミリも感じさせないという(笑)。
フミヤ「引退っていう概念がなくなっちゃったもんね(笑)。自分も全然。今できることを楽しんでいくことに変わりはないですし」
――それこそフミヤさんの先輩の桑田佳祐さんや矢沢永吉さんはもちろん、フミヤさんと同じ7月生まれのミック・ジャガーはもうすぐ78歳ですが、いまだに現役ですから。
フミヤ「そう。ミック・ジャガーとポール・マッカートニーの2人がバリバリの現役だから日本の諸先輩方もそれを追いかけているんでしょうね。僕自身これから先輩方が、どんな活動をしていくのかやっぱり気になりますよ。山下達郎さんは、年々精力的にツアーをされていますし。でも、それで気付いたのは、きっと歌わなくなると歳を取るということ。やっぱり歌手にとって歌うという行為、ステージに立つことが健全な肉体を保つ秘訣なわけでね。たぶんミックもお金稼ぎのためだけにステージに上がってるんじゃないと思うんです。健康で長生きするためには、歌っていた方が良いんじゃないのかなって」
――なるほど。フミヤさんにとってもそれが1番だと?
フミヤ「そうですね。ステージに上がって歌うことが自分にとっての1番のライフワークですね」
――そんなライフワークの全国ツアーも、新型コロナウイルスの影響で延期となっていましたが、ようやくこの春から再開となります。もちろん万全な感染対策で、お客さんの人数制限や、歓声を上げられないといった制約はありますが、ファンにとってはなにより生でフミヤさんの歌を聞けることにすごく意味がありますよね。
フミヤ「そう。だから最初は静かに聞ける曲ばかりのツアーにしようかと思ったんですけど、逆でいこうと。ツアータイトルも『ACTION』なんでね。とにかく盛り上げる。お客さんは声は出せないけれど、その心を盛り上げたいと思ってます」
――コロナ禍を経験して歌に対する心境の変化はありましたか?
フミヤ「やっぱり毎年“普通”にツアーをやってたわけですが、その“普通”がいかに幸せなのかって。しみじみ思いますね」