【プロレスこの一年 ♯37】打倒・天龍 新日本とWARの対抗戦激化 グレート・ムタとカブキの“親子対決” 93年のプロレス
全日本は四天王プロレスへの移行が実現
新日本VSWARに対抗する全日本は、四天王プロレスへの移行が実現する1年になった。5・21札幌で三沢光晴がスタン・ハンセンを破り三冠ヘビー級王座を防衛すれば、小橋建太がテリー・ゴディ、川田利明がスティーブ・ウィリアムス、田上明がダニー・スパイビーをそれぞれシングルで撃破。新世代の若い選手たちが全日本のトップ外国人から全勝を飾ったのである。ザ・デストロイヤー引退試合が行われた7・29武道館では、三沢VS川田の三冠ヘビー級王座戦が行われ、三沢が防衛。この試合で敗れはしたものの、川田は前年11月のジャンボ鶴田欠場をきっかけに超世代軍を離れ正鬼軍を結成、対三沢を焦点とし、四天王プロレスの先駆けとなったのである。
四天王と呼ばれるようになった三沢、小橋、川田、田上はこの年の世界最強タッグ決定リーグ戦の最終戦で集結。三沢&小橋組が川田&田上組を破り優勝を飾るとともに、世界タッグ王座に輝いた。
みちプロの旗揚げに代表されるように、この年はインディーの動きがさらに活発化。いくつもの団体が生まれは消えていった。FMWでは5・5川崎で大仁田厚VSテリー・ファンクのノーロープ有刺鉄線電流爆破超大型時限爆弾デスマッチが実現。過激デスマッチ路線でFWWに対抗するW★INGは同日、小田原で松永光弘VSレザーフェイスの五寸釘ボードデスマッチを敢行した。が、FMW9・1札幌に松永が現われ、ミスター・ポーゴと合体。松永は8月25日にW★INGを離脱していたのである。
U系ではUWFインターナショナルがビッグバン・ベイダーを獲得、スーパー・ベイダーのリングネームで5・6武道館に初参戦し、中野龍雄に圧勝した。8・13武道館では桜庭和志がデビュー。12月5日には神宮球場に初進出し、高田延彦がベイダーと対戦、プロレスリング世界ヘビー級王座を防衛した。9月21日にはNKホールで船木誠勝、鈴木みのるによるパンクラスが旗揚げ。全試合が短時間決着の“秒殺”で、大きな話題となった。
サスケのみちプロは7月24日、盛岡マッハランドで初のビッグマッチを実現させた。試合ではサスケがライバルのスペル・デルフィンを破り、UWA世界ウェルター級王座防衛に成功した。みちプロは東北地方の小会場を回る巡業を基本に、12月10日にも盛岡でビッグマッチを開催。デルフィンがSATOとのマスカラ・コントラ・マスカラを制し、正体を暴いてみせた。SATOとは、現在のディック東郷である。
この年は前年に引き続き女子プロレスの団体対抗戦ブームが継続、熱狂が一1年間途切れることはなかった。全日本女子4・2横浜アリーナは全女、JWP、LLPW、FMWが集結する「夢のオールスター戦」で、メインでは全女の北斗晶がLLPWの神取忍に勝利。井上貴子とキューティー鈴木のアイドルレスラー遭遇も話題になった。また、終了時刻が日付を超えるなど、伝説的な大会となったのである。11日には全女・大阪でオールスター戦第2弾が行われ、JWPのダイナマイト・関西&尾崎魔弓組が山田敏代&豊田真奈美組を破りWWWA世界タッグ王座を奪取、全女のベルトが他団体に流出する事態となった。
全女8・25武道館はオールスター戦第3弾で、アジャ・コングが関西を破りWWWA世界シングル王座を防衛。9・29名古屋は全女とLLPWの対抗戦となり、神取が堀田祐美子に勝利。12・6両国では山田&豊田組が関西&尾崎組からWWWA世界タッグ王座を奪回、神取に敗れた北斗が引退を宣言したのだが……。(文中敬称略)