家族の涙にも振り返らずひたすらデスマッチの大海原を突き進む2冠王の覚悟

「2冠王」に君臨する塚本拓海。プロレスリングBARSARAのユニオンMAX王座、大日本プロレスのBJW認定デスマッチヘビー級王座を腰に巻き、日本デスマッチ界をリードしている。

BJWデスマッチ(右)とユニオンMAX(左)2本のベルトを保持する塚本拓海【写真:柴田惣一】
BJWデスマッチ(右)とユニオンMAX(左)2本のベルトを保持する塚本拓海【写真:柴田惣一】

不動のデスマッチ王を目指してリングに一意専心の「2冠王」塚本拓海

「2冠王」に君臨する塚本拓海。プロレスリングBARSARAのユニオンMAX王座、大日本プロレスのBJW認定デスマッチヘビー級王座を腰に巻き、日本デスマッチ界をリードしている。

 全身、画びょうまみれ、剣山を頭に突き刺され、蛍光灯の山に自ら突進していく猛者だが、その裏では家族が泣いている。

 2009年に大日本入りし、12年からデスマッチに参入。デスマッチの重鎮、伊東竜二に「大日本の未来はここにある」と称せられるなど、すぐに頭角を現し、その将来を期待された。

 ところが、14年5月に、大日本を退団してしまう。どうやら、漁業を営む長崎県平戸市・生月島の実家の母に「こんなに体中を傷だらけにして…」と泣かれたらしい。加えて、新たな家族も、塚本のデスマッチに命を捧げかねないスタンスに、離れていったという。

 地元に帰って、漁師として働きながら、ファイトも続けていたが、どうにも落ち着かない。自分の居場所は凶器が散乱するデスマッチのリングしかない。

 15年暮れ、BASARAに加わった。家族への想いは完全に吹っ切れた。自分の人生、自分の想いを最優先し、生き抜いていく。普通の幸せとは縁がなくなってしまうかもしれないが、それはそれで仕方がない。

 現在は大日本のデスマッチリーグ戦「一騎当千」の優勝を「2冠王として使命でしかない」と誓っている。3・7後楽園ホール大会で「デスマッチ・レジェンド」宮本裕向に初勝利を飾った。

「俺の歴史が動いた」と喜びを爆発させる。2冠王として、引っかかっていたモノがまたひとつ取れた。これで2連勝。残るはドリュー・パーカー戦(3月31日、後楽園ホール)のみ。3連勝でBブロックを突破し、準決勝&決勝(5月16日、後楽園ホール)を勝ち上がるのみ。デスマッチ界の頂上から見える景色が、すっかり気に入っている。この座を譲る気は微塵もない。

 ユニオンMAX王者としては、V4戦(VS風戸大智=3月23日、東京・新木場1stリング)が控えている。もちろん、こちらも防衛回数を重ねていく。

 塚本と言えば獣神サンダーライガーの夫人が大ファンなのもよく知られている。会場で声援を送る姿が目撃されていた。コロナ禍とあって、今はLINEでのやり取りが主になっているが、防衛戦の前には激励のメッセージが来るなど交流は続いている。

 俺の幸せはリングにある。闘いに、デスマッチに幸せを求める男。拓海の名前の通り、海を進み開拓するが如き強い心を持って、不動のデスマッチ王を目指して、リングに一意専心。後ろを振り返らず、時化(しけ)をも乗り越え、デスマッチの大海原をひたすら進んでいく。

次のページへ (2/2) 【写真】画びょうデスマッチ終了後、リングに上がった際の靴の底
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