エヴァ、企業コラボの極意は“こだわらない”発想力 「エヴァらしさは2割でいい」

エヴァ新幹線として話題を集めた山陽新幹線「500 TYPE EVA」【写真:(C)カラー】
エヴァ新幹線として話題を集めた山陽新幹線「500 TYPE EVA」【写真:(C)カラー】

きっかけは裏原系のファッションブランドとのコラボ

『エヴァ』の特性を最大限に生かした例が、15~18年に運行された「エヴァ新幹線」だ。JR西日本の山陽新幹線500系を「500 TYPE EVA」として特別塗装。『エヴァ』のメカニックデザイナーである山下いくと氏がデザインを担当し、『エヴァ』の生みの親である庵野秀明総監督が監修した。
 
 紫色を基調とし、緑色のラインなどが描かれた仕上がり。この色使いは、主人公・碇シンジが搭乗する「初号機」のイメージだ。実際に描かれてはいない初号機を、ありありと連想させる。色だけでキャラクターを表現できる『エヴァ』ならではの独自性が生かされている。神村氏は「500系新幹線という言葉が出てきた時点で、山下さんも庵野さんもこれは乗ってくるぞ、と思いました。2人に参加してもらえれば、企画として勝てるんです」と振り返る。

 神村氏はさらに、「ケース・バイ・ケースですが、『エヴァらしさは2割でいい。御社のテイスト8割で』とお願いすることが多いです。相手先の力を生かすためには、既存のブランドを損なわないことが大事です。黒背景に赤色の文字が出てくるような古い『エヴァ』のイメージにとらわれた提案には、『それは25年前の流行です。今のエヴァンゲリオンはこうですよ』とお戻しします」と話す。一般的に、アニメ・漫画作品は、原作のイメージや絵柄を崩さないことを最優先に、コラボの際には厳しい条件が付くことが多い。『エヴァ』はいい意味で『エヴァ』らしさに“こだわらない”のだ。

公式ブランド「RADIO EVA」のランチバッグ。『エヴァ』はファッション界にも広がっている【写真:(C)カラー】
公式ブランド「RADIO EVA」のランチバッグ。『エヴァ』はファッション界にも広がっている【写真:(C)カラー】

 とりわけ、ファッションは「そのブランドの服と並んでも違和感がないほうが大事」。『エヴァ』とのコラボは、キャラクターの絵を前面に出さず、色だけで表現するようなシンプルで洗練されたデザインが多く見受けられる。劇中に登場する「特務機関ネルフ(NERV)」の「NERV」の文字だけをデザインしたトートバッグは、公式ブランド「RADIOEVA」のロングセラー商品だ。吉田カバンとの共同開発で、初号機をイメージした紫と緑のワンポイントのデザインで、普段使いのできるバッグも好評だった。物語に関連するキーワードを用いたメッセージTシャツなどもある。

 神村氏がこのような方針を取るに至ったのには、ひとつのきっかけがあった。ある裏原系の小さなファッションブランドとのコラボ。出てきた商品は「思いもよらないデザイン」だったという。「初号機や綾波レイといったキャラクターだけに頼らないファッションができる、と初めて気が付いた。これを機にファッション業界ともコラボを積極的に進めるようになりました」と明かした。「『かっこいいね、これ何のデザインなの?』『実はエヴァなんだ』という会話につながる。こうして『エヴァ』を知ってもらうきっかけになれば」と神村氏。日常生活への浸透度が高いのも、『エヴァ』の特徴だ。

『エヴァ』は近年、ゲーム・配信アプリへのコラボ展開も多い。2014年に「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」、その後は「にゃんこ大戦争」、「荒野行動」と大型作品での企画が続いている。テレビシリーズ放送当時は生まれていなかった若年層へのリーチも戦略にとらえている。

 日本文化の一部にまで定着したと言える『エヴァ』。コラボにも夢が広がる。神村氏は「新しいことをやっていくのは面白い。常に新しい発見があるし、まだまだいろいろな取り組みができる。この先も楽しみです」と力を込めた。

(C)カラー

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