エヴァ、企業コラボの極意は“こだわらない”発想力 「エヴァらしさは2割でいい」
世界的人気アニメ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの最新作であり完結編の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が8日に公開となり、大きな注目を集めている。1995年のテレビシリーズ放送開始からアニメとして不動の地位を確立するだけなく、他業界とのコラボ展開を拡大。アパレルや飲食分野に加え、新幹線や町おこしまで多岐に渡り、幅広い年代のファン獲得につなげてきた。自由な発想力と機動力で進化を続ける“エヴァ流”の企業タイアップ。これらの版権管理を担当する「株式会社グラウンドワークス」代表取締役の神村靖宏氏に話を聞いた。
最初の大規模な企業コラボは97年の「UCCミルクコーヒー」 商品化総数は2万点超
世界的人気アニメ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの最新作であり完結編の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が8日に公開となり、大きな注目を集めている。1995年のテレビシリーズ放送開始からアニメとして不動の地位を確立するだけなく、他業界とのコラボ展開を拡大。アパレルや飲食分野に加え、新幹線や町おこしまで多岐に渡り、幅広い年代のファン獲得につなげてきた。自由な発想力と機動力で進化を続ける“エヴァ流”の企業タイアップ。これらの版権管理を担当する「株式会社グラウンドワークス」代表取締役の神村靖宏氏に話を聞いた。(取材・文=吉原知也)
95年に『新世紀エヴァンゲリオン』としてテレビシリーズがスタートし、社会現象を巻き起こした『エヴァ』。2007年からは『新劇場版』シリーズとして新たな世代に向けた物語が、より進化した映像で紡がれ、『:序』(07年)『:破』(09年)『:Q』(12年)が公開。ファン待望の第4作にして完結作『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が去る3月8日に封切られた。神村氏は01年頃から『エヴァ』のライセンス担当になり、10年にグラウンドワークス社を設立した。これまでに『エヴァンゲリオン』の商品化総数は2万点を超え、かかわった企業数は数百社にのぼる。神村氏は「何かを一緒に作るというのがコラボレーション。相手先の力を借りて、『エヴァ』のファンと、相手先の商品やサービスの既存ファンにも喜んでもらうことを目指しています」と語る。
『エヴァ』にとって最初の大規模な企業コラボは、97年のUCC上島珈琲株式会社「UCCミルクコーヒー」のエヴァ缶だ。フィギュアや小物など定番グッズもあるが、ジャンルを超えて発展していった。アニメ作品で前例のない取り組みとしては、NTTドコモの携帯電話とスマートフォン、物語の舞台「第3新東京市」のモデルとなった神奈川・箱根の観光プロジェクトの一環で制作された「箱根補完マップ」、JR西日本との「エヴァ新幹線」も実現した。モータースポーツ分野では「エヴァンゲリオン レーシング」も活動している。エヴァをモチーフとしたパチンコやパチスロを通してエヴァを知った人も多いそうだ。19年には、ファン交流のオフ会・街コン「エヴァコン」も登場した。
また、08年には公式プロジェクト「RADIO EVA(ラヂオエヴァ)」を立ち上げ、「日常に溶け込むエヴァンゲリオン」をコンセプトにファッションやインテリアなどのグッズ展開をしている。
多様性にあふれるコラボ実現は、『エヴァ』ならではの「幅の広さ」が背景にある。神村氏はまず、『エヴァ』の魅力について作品力を挙げる。「キャラクター、メカニック、カラーリングだけでも表現できるデザイン、台詞の力強さ、スタイリッシュな映像表現など、『エヴァ』はいろいろな楽しみ方、切り口があるのです」と説明する。
アニメ作品と商品化、企業コラボレーションなどが途切れることなく発信を続けたことで、男女・年齢に関係なく、ファン層が広がった。神村氏は、25年以上の歴史を持つ『エヴァ』が世代を超えた共通話題になっていることにも着目。「男女間で共通の話ができるアニメは意外に少ない。例えば、『新劇場版』シリーズを見てファンになった中学生の女の子が、エヴァパチンコをやっているおじさんと、『エヴァ』の話ができる。こうしたコンテンツは他のジャンルでも少ないのではないか」と話す。“土壌の広さ”は大きな強みだ。
企業タイアップに貫かれているのは、「他の作品でやれないことをやる」というチャレンジ精神だ。神村氏は「『エヴァ』をいかに面白く使ってもらえるかを念頭に置いています。時々、企業側からの提案に対し、「『それはガンダムでやったほうが面白くなりますね』とお断りすることもあります(笑)」と明かす。