燃える闘魂は不滅 歴戦の代償は大きいが猪木は何度でも立ち上がる
つい先日「燃える闘魂」アントニオ猪木の体調を巡る不穏な噂が流れた。情報交換が盛んに行われ、レスラーからも「どうなの?」と、問い合わせが相次いだ。
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つい先日「燃える闘魂」アントニオ猪木の体調を巡る不穏な噂が流れた。情報交換が盛んに行われ、レスラーからも「どうなの?」と、問い合わせが相次いだ。
猪木が動画でリハビリに励む姿を公開。自ら噂を打ち消して一件落着となったが、思えば、猪木の健康を不安視する説は、過去にも何度か広まった。慌てて、故・田鶴子夫人に電話をしたことを思い出す。
有名税の一種だろうが、しばらく公の場から遠ざかったり、入院などすると、不謹慎な話が飛びだすのも確かだ。
天山広吉、小島聡、吉江豊などを育てた故・ジョー大剛こと大剛鉄之助が、カナダ・トロントで入院し、一時、連絡が取れなかったときにも、各方面から大剛の消息を聞かれた。外国在住、しかもご本人がSNSに積極的ではなかったので、しばらくの間、安否が心配された。
今回の猪木の場合は、昼前から流言飛語が始まったが、夜には猪木サイドがツイッターを更新したので、半日で収まった。
猪木の体調が万全ではないことは間違いない。難病と闘病中である事実も明かしているが、何よりストロングスタイルで闘い続けた歴戦の代償も大きい。猪木の体は傷だらけなのだ。
「こんな試合を続けていたら、10年持つ選手生命が2、3年で終わってしまうかもしれない。それでも私は闘う」と、一時期よく口にしていた。まるで自分に言い聞かせるようだった。
ある日の東北巡業ですさまじい光景を目撃した。控室で長椅子に横たわる猪木は、点滴を受けていた。顔色も悪く、精気もない。試合は進み、メインが近づく。それでもぐったりしたままだ。
しかし「猪木さん、出番です」と声が掛かると、スクッと起き上がり、リングへと向かった。
「地方のお客さんにとっては、一年に一回の観戦。俺を見に来てくれているんだ。俺が出ないでどうするんだよ」
猪木寛至からアントニオ猪木になる瞬間だった。メインイベントの試合で見事、勝利。耳をつんざく猪木コール。勇ましく戻ってきたが、控室に入った途端に倒れこんだ。
だが、巡業は続く。翌日もその翌日も試合だった。「満身創痍って言うだろ。全身痛いし、あちこち悪い。俺、本当にそんな『かんじ』だよ。かんじは『感じ』じゃなくて 『寛至』 ね。フフッ」。
深刻な暗い雰囲気を吹き飛ばそうと、こんなときでもオヤジギャグ。さすがは猪木。プロ意識とファンサービスの塊と称された猪木の神髄を見た気がした。
マサ斎藤との「昭和の巌流島の決闘」当日も、高熱に悩まされていたが、氷風呂に入って、急場をしのぎ決戦を制している。逆境に陥れば、陥るほど、燃える闘魂の神髄が発揮されてきた。
リハビリ動画を見ても、現在の具合はあまり芳しくないようだが、猪木のことだ。必ずや元気になってくれるものと信じている。
「不屈の闘魂」はそれこそ不滅であり永遠だ。(文中敬称略)