被災地に届けた62台のピアノ 西村由紀江が忘れられない少女の言葉 「#あれから私は」
東北の学校を訪問して気付いたこと
――東北の学校を訪問して子どもたちにピアノを弾いたり、一緒に歌ったりされているんですよね?
「『学校コンサート』という全国の学校を訪問する活動を2001年から行っていて、最初は岩手の小学校だったんです。それで震災直後に校長先生にお電話したら、『子どもたちが待っていますから、こういう時こそ学校でコンサートをしてください』と東北の学校をつないでくださって、子どもたちの前で演奏しました」
――震災で傷ついた子どもたちを前にした演奏もピアノを届けることを同じくらい大きな覚悟が必要だったと思います。
「そうですね。大変つらい思いを抱えた子どもたちもたくさんいて。実は私もピアノだけが友だちのとっても人見知りな子どもだったので、『みんなと同じ年の頃、引っ込み思案で大人になったらどうなるんだろうって全然自信が持てなかったんだよ』って話すと、真剣に聞いてくれて。下を向いていた子がふと顔上げてくれたりして。そんな時、子どもたちの表情を見るだけで、私がここに来た意味はあるのかなって」
――西村さんは、大学生でプロデビューを飾り、35周年を迎えた現在もなおトップランナーとして活動を続けていますが、度重なる挫折もピアノが救ってくれたというお話をさまざまなところでお聞きしました。だからこそピアノに対する思いというのは、人一倍特別なものがあるのかなって。
「私は本当にピアノに救われた人生だと思っています。私にとってのピアノは“相棒”ですね。そして『Smile Piano 500』を通して、ピアノってこんなに誰かの人生に大切なもので、こんなに大きな力を持っているんだって改めて気付かされました」
――最後に現在の西村さんが10年前の西村由紀江に言葉をかけるとしたら?
「そうですね(笑)。あの頃、無我夢中でやっていた彼女に言えるとしたら……“自分を信じてそのまま突き進んで”って言いたいですね。“突き進んでいったらきっと道が見えてくるし、何かあっても今の私が背中を押しますから”って」
□西村由紀江(にしむら ゆきえ)作曲家/ピアニスト。幼少より音楽の才能を認められ、ヨーロッパ、アメリカ、東南アジア諸国への演奏旅行に参加。マエストロや世界の一流オーケストラとも共演し、絶賛を博す。桐朋学園大学入学と同時にデビュー。「101回目のプロポーズ」「子ぎつねヘレン」など、ドラマ・映画・CMの音楽を多数担当するほか、テレビ・ラジオの出演やエッセーの執筆も行う。年間60本を超える全国コンサートの傍ら、ライフワークとして「学校コンサート」や「病院コンサート」、そして被災地にピアノを届ける活動「Smile Piano 500」にも精力を注ぐ。
西村由紀江
オフィシャルサイト:http://www.nishimura-yukie.com/
「Smile Piano 500」HP:http://www.nishimura-yukie.com/smilepiano/