令和の王道は? 新たな道に踏み出し変革する日本プロレスに注目【連載vol.30】
時代が変われば価値観も変わる…「王道とはなんぞや」
22年10月に、旗揚げ50周年を迎える全日本プロレスだが、王道の枠組みから飛び出すチャレンジにも積極的に取り組んでいる。
デスマッチの雄・葛西純がGAORA TV王座に君臨し、竹串など凶器を王道マットに持ち込むなどやりたい放題。3月18日には、全日本プロレス史上初のワンマッチ興行で、石川の挑戦を受けて立つ。
2・23後楽園ホール大会では葛西とタッグマッチで対戦した石川が、自ら剣山を持ち出してきた。葛西は「思い通りの展開。王道にきても、相手がかしこまっていたら、つまらない。石川も狂ってきたよ」としめしめ。王道を狂道色に染め、全日本プロレスをデスマッチ団体にさせるという。
またCCの出場を見送り、3冠王座挑戦の名乗りを上げたヨシタツは「王道ストロングスタイルを確立させるために、3冠ベルトが必要なんだ」とぶち上げた。異種格闘技戦も視野に入れており、これまた王道にカルチャーショックを与えている。3・21京都大会で、3冠戦が決まった。
3冠王者・諏訪魔もエボリューションに女子部を立ち上げるために着々と準備を進めており、王道の伝統にこだわりながらも、時代の流れに背中を向けているわけではない。
そこで「王道とはなんぞや」である。
時代が変われば価値観も変わる。ファンはもちろん、選手の考え方も変わって来る。王道にデスマッチや女子選手……ましてやヨシタツは「王道ストロングスタイル」と、まだ誰も見たことのないファイトスタイルの確立を目指している。DDTに移籍した秋山準は「本道」という言葉を使い始めた。
古き良きものを大事にするスタイルもあれば、時代の趨勢を読み、新しいものを取り入れていくスタイルもある。馬場さんの終生のライバル・アントニオ猪木は「この道を行けばどうなるものか(中略)迷わず行けよ、行けば分かるさ」とよく口にしている。
「道」にはいろいろある。覇道、正道、真道、武士道、邪道、外道、非道、獣道、回り道、近道、迷い道……「王道」にこだわらない新しいファンもいるし「いつまでも王道、王道と言っている全日ファンは陰湿」と言ってのけた若い全日戦士もいる。
50周年まで1年半。混沌とする「令和の王道」は「昭和」「平成」より確実に進化を遂げる。