【その時音楽シーンが動いた #3】“月9の時代”と“CDバブル” 2つの扉を開けた伝説ドラマの主題歌「ラブ・ストーリーは突然に」

音楽シーンのターニングポイントとなった出来事の日付を「その時」と定義し、そこに至るまでの状況やその後に与えた影響などを検証するコラム「その時、音楽シーンが動いた」。第3回は“月9ブランド”を確立した純愛ドラマ「東京ラブストーリー」の主題歌として、メガヒット時代の扉を開けた小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」を取り上げたい。(敬称略)

小田和正「ラブ・ストーリーは突然に」CDシングル【提供:濱口英樹】
小田和正「ラブ・ストーリーは突然に」CDシングル【提供:濱口英樹】

1991年(平成3年)1月7日、恋愛ドラマの金字塔「東京ラブストーリー」が放送開始

 音楽シーンのターニングポイントとなった出来事の日付を「その時」と定義し、そこに至るまでの状況やその後に与えた影響などを検証するコラム「その時、音楽シーンが動いた」。第3回は“月9ブランド”を確立した純愛ドラマ「東京ラブストーリー」の主題歌として、メガヒット時代の扉を開けた小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」を取り上げたい。(敬称略)

 愛媛から単身上京して不安な表情を見せる“カンチ”こと永尾完治(織田裕二)。そんなカンチを明るく励ます赤名リカ(鈴木保奈美)。出会ったばかりの2人が笑顔になった直後、主題歌のイントロが流れ、映像はオープニングカットに切り替わる。ドラマが始まって2分30秒、世紀のヒットソングが世に出た瞬間であった。

 時はバブル末期の1991年1月7日。この日、フジテレビの「月9(月曜夜9時)」枠でスタートした連続ドラマ「東京ラブストーリー」(以下「東ラブ」)は、“恋愛の教祖”と呼ばれた柴門ふみの同名人気漫画を映像化したもの。会社員のカンチと同僚のリカを中心に、東京で暮らす若者たちの恋や葛藤を描いた原作を、当時23歳の新進脚本家・坂元裕二が大胆に脚色した。2人が務める職場の設定も、結末も、原作とは異なっていたが、映像作品ならではの改変が好結果を生む。

 初回の視聴率は20.7%。第5話以降は1度も数字を落とすことなく、最終回で32.3%を記録する。全11回の平均視聴率は22.9%で、メディアが「月曜の夜は街からOLが消える」と報じるほどの社会現象となる。2020年に配信ドラマとしてリメイクされるなど、今なお語り継がれる「東ラブ」だが、実は音楽シーンにおいてもエポックメーキングな作品であった。主題歌に起用された小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」がCD初のダブルミリオン(200万枚)を達成し、ドラマタイアップ全盛の礎を築いたからだ。

 作詞・作曲・編曲も小田が手がけた「ラブ・ストーリーは突然に」は同年2月6日、第一生命のCM曲「Oh Yeah!」との両A面扱いでリリース。その時点でドラマは第5話まで放送されており、胸キュンのストーリーとリンクした主題歌が十分浸透したタイミングだった。発売と同時に爆発的な人気を集めた同作は2月18日付けのオリコンで初登場1位をマーク。週間74万枚の驚異的売り上げで、アナログ盤時代の「およげ!たいやきくん」(子門真人)が持つシングルの週間セールス記録を15年ぶりに更新した。

 その勢いは翌週以降も衰えず、登場2週目で史上最速のミリオンを達成(それまでの記録は5週目)、7週目でアルバムも含めたCD初のダブルミリオンに到達する。最終的には259万枚までセールスを伸ばすが、それは「およげ!たいやきくん」(453万枚)、「女のみち」(宮史郎とぴんからトリオ/326万枚)に続く歴代3位(当時)の数字だった。

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