緊急事態宣言延長に苦悩するタクシー運転手「命がけ」 “無マスク乗客”拒否できず
“無マスク乗客”への恐怖 乗せざるを得ないタクシー業界の窮状
運転手と乗客、それぞれがコロナに対し意識的な行動をとっているなか、問題となっているのはマスクを着用しないまま乗ってくる“無マスク乗客”の存在だ。国土交通省近畿運輸局は昨年12月、運転手だけでなく次に乗車する利用客の感染防止対策になるとして大阪、兵庫、京都の19の事業者に対し、タクシー利用客が理由なくマスクの着用を拒否した場合、運転手が乗車を断ることができる規則変更を条件付きで認めたが……。
「最終的には運転手の判断。私は少しでも売り上げにつなげるために乗せざるを得ない状況です。先日、マスクを着けない男性の酔っ払い4人組が乗って来たときは恐怖でした。助手席の男性がこちらに顔を向けながら大声で後部座席の3人としゃべっていて……」
そのような緊迫した状況下にあってもこの運転手はできる限りの努力をしたという。「接触時間を減らすため迅速な目的地到着を心がけました。こういった客層は長距離はほとんどなく、ワンメーターが多いので、それも客を乗せる一つの判断材料。なるべく深く息をしないという方法もありますが、当然ながら長くは無理です。しかし、ここまで来るともはや命がけの仕事と言えますね。お客様の中には咳込んだり、何回もくしゃみをする人もいる。マスク着用の意識をきちんと持ってもらいたい」。運転手は強く訴えた。
利用客からの激励 めげそうな心に勇気
売り上げ不振の日々が続くなか、最近は「コロナでお客さん減ってますか?」が利用客からのあいさつになっているというが、仕事をしていて胸が熱くなる瞬間もある。ある日、若い男性2人組の利用客からこう励まされた。「コロナ、頑張ってください!これでコーヒーでも飲んでください!」。運賃はワンメーター680円だったが、男性は1000円札を置いてお釣りの320円は受け取らないまま街へと消えていった。
運転手はこう振り返る。「うれしい限りです。胸が熱くなりました。めげそうな心に感動と勇気をいただいた。運転手の中には気力を失っている仲間がたくさんいますが、こういうお客様に出会うと、『よし! 明日も頑張ろう!』という気持ちになります。行けるところまで走り続けるしかありません」。