緊急事態宣言延長に苦悩するタクシー運転手「命がけ」 “無マスク乗客”拒否できず

政府は新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために発令した緊急事態宣言について10都府県で1か月間延長することを決めた。期限は3月7日まで。不要不急の外出や移動の自粛の要請については新たに「日中も含める」ことが追記されており、タクシー業界はさらに深刻なダメージを受ける。大阪市内を拠点とするタクシー運転手に聞くと、マスクを着用していない“無マスク乗客”も乗せざるを得ないほどの苦境だという。対策はあるのか?(取材・文=鄭孝俊)

人通りが途絶えた大阪の観光名所・戎橋【写真:運転手提供】
人通りが途絶えた大阪の観光名所・戎橋【写真:運転手提供】

アルコール消毒液の車内常設、常時換気、アルコール噴霧…コロナ対策は万全

 政府は新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために発令した緊急事態宣言について10都府県で1か月間延長することを決めた。期限は3月7日まで。不要不急の外出や移動の自粛の要請については新たに「日中も含める」ことが追記されており、タクシー業界はさらに深刻なダメージを受ける。大阪市内を拠点とするタクシー運転手に聞くと、マスクを着用していない“無マスク乗客”も乗せざるを得ないほどの苦境だという。対策はあるのか?(取材・文=鄭孝俊)

 2度目となる緊急事態宣言の発令以降、利用客がめっきり減ったタクシー業界。現在の状況について、50代のタクシー運転手はこう明かす。

「平日のタクシー台数が日に日に減ってきています。通常ならライバルが減ればこちらが有利になりますが、それでも乗車回数と売り上げが増えない状態。金曜、土曜の夜ともなれば人影もまばらでタクシーが路上にあふれかえり、平日より売り上げが少なくなる現象まで起きています。前回春の緊急事態宣言の時には経営破綻したタクシー会社が出ましたが、今回もすでに燃料となるLPガス代の支払い遅延により、LPガスの法人カードが使えなくなっている会社もあると聞きます。その会社の運転手たちはやむを得ず現金でLPガスを買い入れているようです」

タクシー利用客もコロナ自衛

 利用客の減少でタクシー業界の窮状は深刻化の一途だが、一方でタクシー車内の密室度が気になる人も多いだろう。車内のコロナ対策は万全なのか?

「おそらくすべてのタクシー会社で、点呼(てんこ)時の検温、手洗いやうがいの励行、マスク着用、アルコール消毒液の車内常設が行われています。私の車は常時換気のためにすべての窓を少しずつ開けています。高速に乗った時だけ後部座席の窓は閉める。お客様が下車したら、車内のアルコール噴霧やアルコール手洗いをして窓をフルオープンにして換気を行う。寒い、なんて言ってられません」

 コロナ対策は運転手側だけではない。利用客も自衛策をとっているという。

「換気のために窓を少しずつ開けているものの、乗るやいなや『窓開けていいですか?』とフルオープンにされる方、お釣りを手渡ししようとすると『トレーに置いてください』とおっしゃる方、半透明のビニール手袋着用の方、マイアルコールスプレーご持参の方など、工夫が見られますね。先日、乗場で2番目につけていると、1台目を飛ばして乗って来られたお客様がいました。よく見ると1台目は乗務員にコロナ感染者が発生した会社のタクシーでした」

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