コロナ禍で変わりゆく葬儀現場の今 専門家は後々起こりうる社会の歪みを危惧
葬送儀礼が持つ役割が失われることで社会的な歪みが生まれる可能性も
差し迫った問題ばかりではない。鵜飼氏は「葬儀は一義的には故人を送るためものですが、それだけでなく遺された人の心を癒すという役割もある。葬式、法事と節目節目で親族が集まって、そのつながりで時間をかけて悲しみを癒していく。それがまったくできないのは、精神衛生上あまりいいことではありません」と葬送儀礼の持つ社会的な役割について語る。
「実際、コロナ禍の中で病院や施設で家族らと会えず、人とのつながりが絶たれ、生きる気力を失い死期を早めたような例は後を絶ちません。“つながりの喪失”によって、さまざまな弊害が起きる可能性があります。弔いにはグリーフケアの側面があります。愛する人を失っても心が癒されず、うつを発症する人の増加などが懸念されます。定量的な調査結果があるわけではないですが、そういう社会的な歪みが出てくることもある程度は覚悟しておいたほうがいい」。これまで通りに葬儀を行えないことが、後々社会にさまざまな影響を及ぼすのではと危惧する。
「実はこの1年、法事が減った一方で墓参りに訪れる人は大きく増えている。死を色濃く感じる機会が増えるなか、日本人の死生観はむしろより強まっていると感じます」と鵜飼氏。コロナ禍で人生の最期の迎え方も大きく変わりつつある。