コロナ禍で変わりゆく葬儀現場の今 専門家は後々起こりうる社会の歪みを危惧

日本で最初の新型コロナウイルス感染が確認されてから1年。感染者数に歯止めがかからないなか、葬儀の現場も大きく様変わりしている。医療崩壊に続き、欧米諸国のように火葬が間に合わず遺体があふれる“葬儀崩壊”が起きる可能性はあるのか。また、従来通りの葬儀を執り行えないことが今後社会にどのような影響を及ぼすのか。浄土宗の僧侶でジャーナリストの鵜飼秀徳氏に聞いた。

コロナ禍によって葬儀はどう変わっていくのか(写真はイメージ)【写真:写真AC】
コロナ禍によって葬儀はどう変わっていくのか(写真はイメージ)【写真:写真AC】

専門家に聞く コロナ禍で葬式の規模を縮小・省略したりする流れが加速

 日本で最初の新型コロナウイルス感染が確認されてから1年。感染者数に歯止めがかからないなか、葬儀の現場も大きく様変わりしている。医療崩壊に続き、欧米諸国のように火葬が間に合わず遺体があふれる“葬儀崩壊”が起きる可能性はあるのか。また、従来通りの葬儀を執り行えないことが今後社会にどのような影響を及ぼすのか。浄土宗の僧侶でジャーナリストの鵜飼秀徳氏に聞いた。(佐藤佑輔)

 昨年3月29日にはタレントの志村けんさんが新型コロナに感染し死去。感染予防のため家族や親族も火葬場に入ることができず、遺体との対面がかなわなかったことが大きな話題となった。厚生労働省では新型コロナで亡くなった人の遺体について、非透過性の納体袋への収容推奨、葬儀事業者の防護服着用、通常と異なり死後24時間以内の火葬が可能なことなどが記載されたガイドラインを制定している。

「やはり志村さんの一件で葬儀関係者の間にも急激にコロナに対する警戒感が広がっていきました。コロナで亡くなった方は通夜や葬式の前に火葬を済ませておく骨葬がほとんどですが、コロナ以外の死因であっても3密になる葬式を避ける傾向にある。もともと都市部では家族葬や火葬のみを行う直葬など、葬式の規模を縮小したり葬儀自体を省略する流れがありましたが、それが一気に加速したような状況です。一方、地方ではまだまだ地域の習わしが残っていますが、やはり参列者が100人、200人集まるような葬式は廃れていく。近年、葬儀業界ではベンチャー系の葬儀会社の参入で大きな価格競争が起こっていましたが、今後はビジネスとして厳しい状況になっていくと思われます」

 今年1月に入り大都市圏では感染者数が急増。2度目の緊急事態宣言が発出され、医療崩壊への危機感も盛んに報じられているが、今後日本でも欧米のように遺体が街にあふれる可能性はあるのか。

「コロナの死者数は増えていますが、欧米では桁が違う。自治体にもよりますが日本の火葬場のキャパシティーには余裕があります。しかし、仮にクラスターが発生して火葬場が封鎖になると大変なことになるでしょう。東日本大震災では被災地の一部の火葬場がストップしていたこともあり、遺体を関東の斎場まで運んだり、一時的に土に埋める仮埋葬を行ったりもしました。今後爆発的に死者数が増えれば、そうならないとも限りません」

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