【Producers TODAY】テレ東プロデューサーの挑戦 人々の分断を埋める「テレビのパワー」

番組のアイデアは「人間観察から生まれる」と語る工藤里紗プロデューサー【写真:(C)テレビ東京】
番組のアイデアは「人間観察から生まれる」と語る工藤里紗プロデューサー【写真:(C)テレビ東京】

米国生まれ、米国育ち 「アウェーな人を切り捨てたくない」

――アメリカで生まれ育ったことが番組作りに影響していますか?

「私がいたのはクリスチャンの白人が多いマサチューセッツ州の地域で『ジャパニーズ!チャイニーズ!』ってからかわれたこともあります。日本に帰ってきて小学校に通うと、けっこう色白だったので今度は『外人、外人』と言われるし。心臓手術の跡を気にしたり、第二次性徴期もみんなより早かったせいか、いつもどこかアウェー感を抱いて育ってきました。そういうアウェー感があったからアウェーな人を切り捨てたくない、という思いは常にどこかにあります」

――番組のアイデアはどんなときにひらめきますか?

「テレ東では番組の企画募集が年に何回かありますが、『よし!いい企画を考えよう!』と思っても思い着いたことが1回もありません(笑)。私は構えちゃうと企画が生まれず、それこそ電車の中で人を観察しながらつり革広告を見てとか、海外のドラマや映画とか、本や漫画を読んで夫と会話している時にふと思いつくとか。子どもが習いごとで歌舞伎をやっているんですが、レッスンに付き添って後ろで見ているときに子どもの首実検の場面があって、江戸時代ってけっこうバイオレンスだなと思ったり。日本の中にはけっこう恐ろしい何かがあるのかな、というふうにアイデアがひらめくのは日常生活の中が多いです。サウナにもよく行くんですが、古くからの主という人がいたり、サウナの中でヨガみたいな運動をしていたり、ヤクザの親分みたいな座り方をしている人とか、男性が思っている女性像とはまったく違う世界が広がっています。このように人間観察から生み出されるアイデアは多いですね」

――最後にもし1か月休めるとしたら何をしますか?

「コロナ禍で自転車にハマり出したので、家族でロードバイクしながらヨーロッパを回りたいです。電車で移動して自転車で50キロ、100キロ離れた土地までこいで行きたい。前に家族で瀬戸内のしまなみ海道に行ったことがあって、自分の力で人を気にせずに、こんなに人間って遠くまで移動できるんだっていう自由を感じました。外なのでにおいも感じられるし、熱も感じられるし、小さい虫が顔にバンバンあたって来るんですが、でもその土地を体で感じられるのが自転車の魅力だな、と。コロナが落ち着いたら文化の違う外国に行って“自分の力で移動する旅”をしたいですね」

(※1)『SDGs』:「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、読み方は「エスディージーズ」。2015年9月、ニューヨークの国連総会で採択され、30年に向けて(1)貧困をなくそう(2)飢餓をゼロに(3)すべての人に保健と福祉を(4)質の高い教育をみんなに(5)ジェンダー平等を実現しよう、など17の目標の具体的行動指針が示されている。国連開発計画は貧困に終止符を打ち、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることを目指す普遍的な行動を呼びかけている=国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所公式HPより。

(※2)『フェムテック』:女性(Female)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、最新の技術で女性たちの体の悩みを解決するというもの。例として吸収力の強い生理ショーツなどの開発がある=YouTubeテレ東NEWS「女性の悩みを解決!?フェムテック市場を徹底取材(2020年7月29日)」より。

(※3)『PMS』:月経前症候群。卵胞ホルモンと黄体ホルモンが急激に低下し脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことが原因。情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害、のぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感、腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなどの症状がある=公益社団法人日本産科婦人科学会公式HPより。

(※4)『サウナー』:サウナ好き、のこと。テレビ東京系ドラマ「サ道」は、サウナ好きによるサウナ好きのためのドラマ。「サ道」の作法として、サウナ室~水風呂~休憩(外気浴)を3回程度くりかえすことで得られる多幸感、一種のトランス状態を“ととのう”と呼んでいる=テレビ東京公式HP「日本全国のサウナーに朗報!『サ道』が年末SPで帰ってくる!」(2019年12月10日)より。

【略歴】
工藤里紗(くどう・りさ)
米マサチューセッツ州生まれ。6歳のとき日本に帰国。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、テレビ東京入社。「シナぷしゅ」「生理CAMP2020」「池上彰vsニッポンの社長100人大集結!」「インベスターZ」「マツコ、昨日死んだってよ。」「昼めし旅」「ソレダメ!」「ナイトヒーロー NAOTO」「極嬢ヂカラ」、「アラサーちゃん 無修正」、「大竹まことの金曜日オトナイト(BSJ)」「老い愛で子さん」などをプロデュース。映画「ぼくが命をいただいた3日間」の監督も務めた。フィンランドサウナ名誉広報官、テレ東サウナ部会長に就任。趣味はロードバイク(初心者)。

(取材/構成・鄭孝俊)
全国紙社会部、スポーツ紙文化部デスクを経て「ENCOUNT」記者。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程在籍中。専門は異文化コミュニケーション論、メディア論。成蹊大学文学部ゲスト講師、ARC東京日本語学校大学院進学クラスゲスト講師などを歴任。

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