「カツベン!」主人公・成田凌は“チャップリン”「よくぞ、ここまでやってくれた」
プロはわずか10人…活弁を「やってみたい」と思う人の受け皿を
片岡「人を増やすのは急務。なぜ、『Shall weダンス?』が社会現象になったかというと、興味を持った人が通う教室があったからだと思います。それまでは“知る人ぞ知る”の世界だったかもしれないですけど、やってみたいと思ったら、社交ダンスをやれたんですよ。落語ブームも同じ。興味を持った人がすぐに行くことができた。でも、僕らの世界は今、プロが10人しかいない。教室もあるようで、ない。この映画を見て、活弁って面白そうと思っても、受け皿がないとブームにならない」
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坂本「確かに」
片岡「僕らが弁士になった頃はまだVHSの時代で、プロジェクターも大きくて、上映も手軽にできなかった。今は片手で持てるようなもので、300~400人のホールでも観られる高輝度のプロジェクターが当たり前になった」
坂本「皮肉にもデジタル化が我々を助けたという面はありますね」
片岡「最近になって、画質の良さを、みんながわかり始めた。『昔の映画って画質が悪いんでしょ』と当たり前に思っているけど、昔のものだからこそ、画質の良いもの悪いものをシビアに見ていかなきゃいけない、と。画質が良いものは、スクリーンに写る情報量が多いですから」
坂本「この映画がきっかけになって、人材だけじゃなくて、無声映画そのものにもスポットが当たって、発掘や復元が進めばいいなぁ」
片岡「日本の無声映画のフィルムの残存率は8%。92%のフィルムが失われています。それでも、稀に個人所有のものが見つかったり、骨董屋やネットオークションで出てくる時がある。この作品がヒットすることで、『あ、そう言えば、うちにもあるかもしれない』と気がつく人がいればいい。映画史の本には、この映画は大きな影響を与えたとか、素晴らしかったと書いてあるものの、その現物がない。今、残っているのはあまり人気がなかったから、フィルムの状態がいいという事情もあります。爆発的にヒットしたものでいいものが出てくれば、ずっと使えます。しかも、デジタルですから、どんなに上映しても摩耗しないから」
坂本「今回、周防監督は劇中で、新作の無声映画を撮ってくれたのもうれしかったですね」
片岡「周防監督は映画を熟知していらっしゃるので、ちゃんと無声映画になっていました。まれに、新作の無声映画を撮ったという方がいて、拝見することもあるんですけれども、無声映画ではなく、『無音映画』だったりする。やっぱり、画に力がないと、無声映画ではないんですよね。挑戦される人はそういうところに目を配ってくれれば、と思います」
坂本「この映画がヒットすれば、我々の世界も変わりますかね!」
(構成 平辻哲也)