堀口恭司が「前人未到」と「前代未聞」を続けられるワケ 朝倉海戦を徹底解説
「(RIZINのベルトを)一個取り返したので、もう一個(Bellatorのベルトを)取り返したい」
年が明け、堀口は自身のYouTubeチャンネルの動画を更新。
ダメージはないと話しながら試合を振り返り、「俺も強くなったのかな、と思いました。相手の研究もしたので対策ができたのかなと思いましたね。対策? カーフキックだとか。寝技にも行こうと思ったけど、それは読まれていたので、そこまで寝技を使わなくとも打撃でいけると、向き合った時に判断できた」と明かした。
最初からカーフキックで行くことは、試合後のプレスルームで行った個別インタビューでも語っていたが、動画では「カーフキックを2、3発目を出した段階で(海が)動かないと思い、しっかり効いたな、と思った」と語っている。
ちなみに個別インタビューでは痛めた右足でのカーフキックを繰り出したことを問われ、「自分はアホなので」と話しながら、独特の堀口スマイル。
今後は「(ベルトを)一個取り返したので、もう一個、取り返したいと思っています。でも自分も30なんで、あんまりコンスタントに(試合を)できないかなっていうのもありますけど」と話しながら、Bellatorのタイトルを取り返しに行く旨を今後の目標に掲げていた。
この段階で堀口は声の調子がいまひとつだったが、これは動画によると、「(拠点とするフロリダと日本の)気候の違いと試合が終わった後にバカ騒ぎをしたら、のどが潰れました」とのこと。
また、動画の中で堀口は「自分はベルトが欲しくてやっているわけじゃなくて、みんなの笑顔を見たくてやっていて。前回、海君に負けて、自分の親とかファンの方が泣いていたのを見て、凄い自分はショックで、まだ親の顔を見ていないので分からないですけど、今回の勝ちですごい喜んでいると思うので、やってやったぞと。うれしいですね」と語っている。
なにはともあれ、再び堀口は月面に赴くための第一歩を踏み出した。戦前には不安材料として実戦から離れたことによる試合勘を指摘されたが、今回は一切それは感じられなかった。ただ、本人が話すように、これからは年齢的な問題が襲ってくるが、それとて堀口であれば無難に落としどころを見つけていく気はする。
なぜかと言えば、堀口は大きな「挑戦」をすることが、必ず実を結ぶ結果につながることを体感しているからだ。
冒頭に記したように、堀口は自身の拠点を米国フロリダにあるATTに移している。これはUFCの王座に挑戦し、これを逃した際に一念発起して近道を通ることを決めたためだった。これは今でもそうかもしれないが、堀口はとくに英語が堪能だったわけではない。それでも堀口はそう決めたのである。
その段階で、堀口ほどの実績を持った日本人ファイターが現地を拠点にした例はあっただろうか。いや、細かく見ていけばあったかもしれないが、大きなビジョンと目的を視野に入れながらそれを実行したのは堀口が最初だったに違いない。
つまり「一番乗り」の発想を持って、誰よりも先に動き、未開の地に挑むことを恐れなかったことが、結果的には圧倒的な成功につながったのだと考える。
2020年は全世界的に新型コロナウイルス禍に見舞われ、誰しもが人生の方向転換を余儀なくされたが、堀口に至ってはコロナよりも早く、人生の転機を何度も迎えている。もちろん、それは堀口が意図したことではなかったに違いないが、おそらく転機とは、それまでとは違った「挑戦」をし続ければ、自然とやってくる衣替えのようなもの。
ファイターであれば、それがたとえコロナであっても、これでオーバーホールができる、と考えられるかどうかでその後の人生は変わってくる。
堀口を俯瞰していくと、「挑戦」を「挑戦」と思わない、独自の楽観力が、自然と光のある方向へと導いている気がしてならない。