堀口恭司が「前人未到」と「前代未聞」を続けられるワケ 朝倉海戦を徹底解説

堀口恭司はバンタム級のベルトを501日ぶりに奪回した【写真:(C)RIZIN FF】
堀口恭司はバンタム級のベルトを501日ぶりに奪回した【写真:(C)RIZIN FF】

「何度やっても同じ結果になる」(朝倉未来)を覆す

 不運なことに堀口はその後、激闘の代償として、とくに右膝の状態が悪化。一転して右膝前十字靭帯、半月板の手術~リハビリという生活を送ることになってしまう。つまり、それまでの金属疲労で肉体が限界を迎えていたことを、ようやく堀口は現実のものとして実感したのだ。

 まさに天国から地獄。月にいたはずの男は、まさかのリングにすら立てないどころか、一時期は車椅子での生活を送る羽目に陥ることとなる。

 すると今度はまた別の現象がわき起こる。要約すると、両者の再戦が実現した場合はどんな結果になるのか。さまざまな論評があちこちで公開されることになったからだ。

「何度やっても同じ結果になる」

 朝倉海の兄である未来はそう公言していたが、あれだけ圧倒的だった堀口を朝倉海が破った事実は、その言葉を全否定する術を持たなかった。

 結果、堀口がリング上にいない間に朝倉兄弟の株は一気に跳ね上がり、その勢いを買って、日本でも有数のYouTuberに成り上がることに。

 言い換えれば現在の朝倉兄弟の勢いを後押ししたのは、堀口が圧倒的な存在感を持っていたからこそだった。

 だからこそ、もし朝倉海との再戦が組まれた場合、とんでもないことになるのではないか。本音を言えば、記者はそう思っていた。

 確かに「勝敗は時の運」ではある。もちろん、そんなことはわかり切っているのだが、この再戦だけはそうならないのではないか。

 それは、ここまで何度も書いてきた通り、堀口は月面にいた男。それだけ見てきた景色や酸素の濃度、体感してきたものが一人だけ全く違うのである。つまりそれは、乗り越えてきた修羅場の数が違いすぎることを指す。

 そんな絶対的な違いを経験した男が、ロクな準備をせずに再戦を受けるわけがない。万難を排してリングに上がることは分かり切っている。

 だとするとこの再戦は勝ち負けではなく、堀口がどんな勝ち方をするのか。主題はそれではないだろうかと。

 断っておくが、これは朝倉海をバカにしているのではない。曲がりなりにも日本における総合格闘技界の「歴史」を四半世紀以上、間近で目撃してきた記者の経験値と、堀口の言動や性格を知りつつ、接してきた上で得られた、独自の勘がそう思わせたのである。

次のページへ (3/5) 「一番乗り」の思想
1 2 3 4 5
あなたの“気になる”を教えてください