堀口恭司が「前人未到」と「前代未聞」を続けられるワケ 朝倉海戦を徹底解説
RIZINが12月31日にさいたまスーパーアリーナで「RIZIN.26」を開催。メインでは王者・朝倉海と堀口恭司によるバンタム級タイトルマッチが行われ、1回2分48秒、至近距離からの右フック2発からパウンドで追い込み堀口がTKO勝利を挙げた。返上していたベルトを501日ぶりに奪回した。堀口はなぜ首尾よくリベンジを果たせたのか――。(取材・文◎“Show”大谷泰顕)
日本の総合格闘技史上、最高傑作
RIZINが12月31日にさいたまスーパーアリーナで「RIZIN.26」を開催。メインでは王者・朝倉海と堀口恭司によるバンタム級タイトルマッチが行われ、1回2分48秒、至近距離からの右フック2発からパウンドで追い込み堀口がTKO勝利を挙げた。返上していたベルトを501日ぶりに奪回した。堀口はなぜ首尾よくリベンジを果たせたのか――。(取材・文◎“Show”大谷泰顕)
「一人だけ月面にいて、地球にいる我々を見下ろしている」
これは1年4か月前、朝倉海に敗れる直前の堀口を評して、記者がRIZINの公式パンフレット上に書いたものである。
振り返れば、2019年8月の段階で言えば、堀口の持つ実績が圧倒的すぎて、そう表現しなければそのすごさが伝わらないと考えた結果が、「堀口は(地球ではなく)一人だけ月面にいる」だった。それだけ堀口とその他の日本人選手では、ことバンタム級という階級においては、歴然たる格差が存在していたからだ。
なにせ堀口は、日本人として米国のメジャー格闘技団体UFCのタイトルに最も近づいた男として米国のフロリダにあるATT(アメリカン・トップ・チーム)で文字通り寝食を共にしながら生活をはじめ、「最強のメジャーリーガー」と称されてRIZINに参戦。
17年にはRIZINバンタム級グランプリに優勝すると、翌18年にはRIZINバンタム級王座に。続いて19年6月には米国のもう一つのメジャー格闘技団体Bellatorでもバンタム級王座を獲得し、「前人未到」の二冠王に君臨した。
しかも堀口は、2018年9月には“キック界の神童”那須川天心とキックボクシングルールで対戦。敗れたものの、判定までもつれ込む激闘を展開している。
要するにMMA(総合格闘技)だけでなく、キックボクシングでも「前代未聞」をやってのけたのだ。
これを「月から地球を見下ろしている」以外にどう表現しろというのか。
果たして、いつしか堀口はこう呼ばれるようになる。
「日本の総合格闘技史上、最高傑作」と。
そうやってあらゆる賛辞と最上級の評価を得てきた堀口。もう堀口にはバンタム級ではやることがないと思っていた矢先、今から1年4か月前に“事件”は起こった。
朝倉海が堀口からまさかの秒殺でTKO勝利を挙げたのだ!
当然、これ以上ない驚愕ではあった。
しかしながら、トップまで上り詰めたファイターならあり得ないことではない。絶対エースであれば、常に起こり得ること。要は、敵をいかにつくるのか。格闘技を興行(見せ物)として成り立たせようとするなら、このテーマはどこまで行ってもついてまわる。
そう考えれば月面に一人だけいた堀口は、地球に降りていくための理由を自らつくり出したことになる。
だが、話はそれだけで終わらなかった。