【気になる人】朝ドラ「おちょやん」で注目の歌舞伎役者・延四郎演じた片岡松十郎が語った自身の素顔
阪神淡路大震災で被災し人生観が変わった
でも、大学1年のときに阪神・淡路大震災で被災して、人生観が変わりました。それまでは、自分も父親のようにサラリーマンになるんやろうな、と思っていたんです。そのためには、楽に大学まで進める学校に入ろうと、小学校2年のとき、自分から望んで中学受験の塾に通い始めたぐらいで。結局、受験に失敗して公立中学に通ったんですけどね(笑)。
実家は神戸の東灘区という阪神・淡路大震災の被害が大きかったところ。家は倒壊はしなかったものの、中はグチャグチャ、ライフラインもすべて止まり、大学には行けなくなりました。そのとき、自分が通った小学校に張られたテントに2か月間寝泊まりし、炊き出しや支援物資の整理のボランティアに参加しました。ミャンマーでボランティアをしていた方、獣医さん、お坊さん、学校の先生とかいろんな方がボランティアに来ていて、夜な夜なお酒飲みながら、みんなの話を聞いていたら視野が広がって、「いろんな生き方があるんやな。自分はなんでサラリーマンになると決めつけていたんやろう」と、生き方を見直しました。
性格も社交的になって、自分は何をやりたいのか、探していました。大学3年のとき、母親に「松竹 上方歌舞伎塾 1期生募集」の記事を見せて勧められ、「他人と違うことをやったら楽しいやろうな」と軽い気持ちで応募しました。その当時はドラマや映画も観ていなくて、歌舞伎ももちろん観たことがなかったのに。でも、塾生になって勉強のために初めて歌舞伎を観たとき、美しくて、かっこよくて、迫力があって、すぐに惹き付けられました。1番いい一等席で観させていただいたのも良かったんだと思います。初めて歌舞伎を観る方はぜひ、一等席で観ていただきたいです。絶対に損はしませんから!
夫人や子供については…
結婚ですか? 年下の一般女性と3年前に結婚し、3歳になる男の子がいます。それ以上はちょっと……恥ずかしいので勘弁してください。20年は新型コロナウイルス感染症で舞台ができなくなり、ずっと家にいたので奥さんは大変やったと思います。普段、僕は旦那(片岡仁左衛門)について1年の半分ぐらい、東京や名古屋、博多などの舞台に立っているので、関西の家にはいませんから。
東京などではウイークリーマンションを借りて自炊しているんですよ。大好物のカレーライスを作ったり、朝もサンドイッチを作ったり。夜は好きなお酒を飲むのと、ボンヤリとテレビのバラエティーを観て息抜きしています。
□片岡松十郎 (かたおか・まつじゅうろう)1975年10月16日、神戸市生まれ。本名:石垣壮一郎。近畿大学商経学部4年の97年、「松竹 上方歌舞伎塾」1期生に。99年2月、塾を修了し、3月、大阪松竹座「仮名手本忠臣蔵」で初舞台を踏んだ。同年12月、十五代目片岡仁左衛門に入門し片岡松次郎を名乗り、2012年、名題に昇進し片岡松十郎に。15年、「松竹 上方歌舞伎塾」の同期3人で勉強会・あべの歌舞伎「晴(そら)の会」を結成し、翌16年、大阪文化祭奨励賞受賞。20年12月、NHK連続テレビ小説「おちょやん」でテレビデビュー。