【プロレスこの一年 #26】ビートたけし率いるプロレス軍団に猪木完敗 世代闘争も勃発した87年のプロレス
2020年、新型コロナウイルスの影響により東京オリンピックが延期、人々の生活様式が変更を強いられ、プロレス界も大きな打撃を受けた。その20年もあとわずか。年末のこの時期、ある一定の年代以上のプロレスファンからすると、両国国技館での暴動事件を思い出す人も多いことだろう。いまから33年前の1987年12月27日、ビートたけし率いるTPG(たけしプロレス軍団)がリングジャック。TPGが呼び込んだ無名の巨漢レスラーがアントニオ猪木を一方的に破り、突然のカード変更に怒った観衆がリングに物を投げ込むなどする暴動事件に発展してしまったのである。
暴動事件にまで発展した33年前の新日本両国国技館
2020年、新型コロナウイルスの影響により東京オリンピックが延期、人々の生活様式が変更を強いられ、プロレス界も大きな打撃を受けた。その20年もあとわずか。年末のこの時期、ある一定の年代以上のプロレスファンからすると、両国国技館での暴動事件を思い出す人も多いことだろう。いまから33年前の1987年12月27日、ビートたけし率いるTPG(たけしプロレス軍団)がリングジャック。TPGが呼び込んだ無名の巨漢レスラーがアントニオ猪木を一方的に破り、突然のカード変更に怒った観衆がリングに物を投げ込むなどする暴動事件に発展してしまったのである。
当初、大会のメインは猪木VS長州力だった。この年、長州は主戦場を全日本から新日本に移し、古巣にカムバック。藤波辰巳や前田日明に呼びかけ世代闘争をスタートさせていた。が、一方の猪木はマサ斎藤との巌流島での“無観客試合”を強行、話題を世代闘争から同世代との対決へと逸らすことに成功した。旧世代(ナウリーダー)VS新世代(ニューリーダー)、世代を代表する両者による注目の一騎打ちが年内最終戦に組まれていたのだが……。
たけしをはじめ、ガダルカナル・タカ、ダンカンらのTPGがリングに上がり、大ブーイングの中、猪木はビッグバン・ベイダーと名乗るTPGの刺客とのシングルマッチを受諾してしまう。当初予定されていたセミのカードも「藤波&木村健吾組VS斎藤&X組」の新日本VSTPGから「藤波&木村組VS斎藤&長州組」へと変更された。すると、このタッグマッチ中にリング上に物が投げ込まれ、大観衆の「やめろ」コールが飛び交う異様な雰囲気に。罵声を浴びた長州が試合後に猪木戦を要求し、一時はファンが後押し、実現はするのだが、猪木はベイダーとの2連戦を強いられることになってしまう。しかも猪木は、なす術もなくベイダーの怪力に完敗。その正体は来日前までヨーロッパで活躍していたブル・パワーだったのだが、当時は海外からのニュースも入らず、まだまだ無名の存在だった。一試合、しかも短時間で観客の支持を得られたわけでもなく、怒った一部の観客が暴徒化、破壊行為に及んでしまったのだ。
この年は、年末の暴動に象徴されるように、多くの事件が起こった激動の一年でもあった。その1987年を振り返ってみよう。
この年のプロレス界は、この年の混乱を示唆するかのような異例のワンマッチ興行で幕を開けた。1月14日、新日本の藤波と木村が遺恨決着のため一試合のみで後楽園大会を開催。真のワンマッチ興行にも関わらず、両者らしからぬ事件性がかえって話題を呼び、場内は超満員の観衆で沸き返った。試合は藤波が勝利し、木村が凶器をしのばせていた疑惑に決着。レフェリーを上田馬之助が務めるなど、異例づくしの大会だった。
全日本では2・5札幌で長州&谷津嘉章組がジャンボ鶴田&天龍源一郎組に敗れインターナショナルタッグ王座から転落。長州はその後、体調不良を理由に欠場。結局、この札幌大会が長州にとって最後の全日本マットとなってしまった。新王者となった鶴龍コンビだが、3・12両国でザ・ロード・ウォリアーズに敗れ王座陥落。この大会では前年8月にプロレスデビューした元横綱・輪島大士がリック・フレアーの保持するNWA世界ヘビー級王座に初挑戦している。
新日本では3月26日、大阪城ホールにて“この年初めての暴動事件”が発生。猪木VS斎藤の一騎打ちに謎の海賊男が乱入。試合をぶち壊したため怒った観客が暴れたのである。この頃、長州ら一部を除くジャパンプロレス勢が独立を宣言。長州はコメントで事前に「藤波」の名前を挙げるなど、着々と古巣への復帰準備を進めていたこととなる。4月6日には7選手と日本デビュー前の馳浩、タイガー服部レフェリーが団結、行動を共にすることを宣言した。
新日本ではテレビ中継が装い新たにスタート。「ギブUPまで待てない!!ワールドプロレスリング」が4月8日にスタートし、バラエティー色を前面に打ち出した内容が物議を醸した。