ビートルズの遺伝子を持った名曲集を30年かけて完成させた洋楽ディレクターの執念とポップ愛 (後編)
これからコンピレーションCDに求められること
――日本はこれまでのように、いい音楽やアーティストを紹介したいというレコード会社の原点に立つような企画がこれからも残っていくと?
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「日本ではそういうものは残っていく気がしますね。僕らの先輩たちがそういうことをやってきたわけですが、欧米では箸にも棒にも掛からないけれど、日本人の琴線に触れる曲を日本独自にピックアップして、それが日本だけでヒットする。今の時代ではなかなか難しくはなってはきていますが、日本独特の価値観、日本人の琴線に触れるメロディ、リズムって、たぶん世代に関係なくあると思うんですよね。日本人の血に流れる抗えない何かというか。もちろん欧米からのプレッシャーも強くなっていますし、なかなかそれをやる余裕もなくなってはきていますが、レコード会社って本来そういうのが面白かったわけですから、日本型のヒットというか、やっぱりいい曲をどんな形で紹介するかというところが大切ですよね」
――トランポリンズの元メンバー、ヨハン・ステントープのニュー・プロジェクト、ザ・ミスティーズのデビュー・アルバム『ドリフトウッド』が日本先行でリリースされたことも、当てはまります?
「そうですね。今回はまだ日本で知られていないアーティストをこのCDを通して紹介したいという目的もあって。既に発売中のザ・ミスティーズをはじめ、マイク・ヴァイオラとザ・ナインズは、このタイミングで契約できたので日本独自の企画のベスト盤をリリースして、世の中にはまったく知られていないかもしれないけど、こんないいメロディがいっぱいあるんだよ、ってことを伝えていきたいんですよね」
――そんな白木さんが入社から30年かけてようやく完成させた「Power To The Pop」改めていまの感想を聞かせてください。
「ビートルズが大好きな一ファンとして、『人生を豊かなものにしてくれた彼らに何か恩返したい』みたいな気持ちがこの作品にはあったんですね。実際そうなったかどうかわかりませんが、少しでもこの気持ちを多くの皆さんと共有したいというか。でもこういった作品は、ある程度奉仕の気持ちがないと形にするのは大変だったかも(笑)。 実際選んだ曲はこのCDに収録されている3倍ぐらいはありますし、今回XTCとか、ニック・ロウが収録できなかったので、いつか第2弾をやりたいですけど、このCDがどうなるか次第ですね(笑)」
□白木哲也(しろき・てつや)1964年生まれ。(株)ソニー・ミュージックレーベルズ ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル ゼネラル・マネージャー。これまで制作を担当してきたアーティストは、ブルース・スプリングスティーン、ボブ・ディラン、ジャクソン・ブラウン、ピンク・フロイド、エアロスミス、ビリー・ジョエル、デヴィッド・ボウイ、マライア・キャリーなど。一連のカタログ紙ジャケ制作などに携わる。また、ジェフ・リンズELO、エリック・カルメンなどとともに、ヨーコ・オノ再評価プロジェクトや、正真正銘の“ビートルズの遺伝子”、ショーン・レノン(ジョンとヨーコの息子)のクレイプール・レノン・デリリウム、ジェイムス・マッカートニー(ポールの息子)、ダニー・ハリスン(ジョージの息子)の『ジョージ・フェスト』などの制作担当として四半世紀洋楽に携わる。
『Power To The Pop』
2019年11月27日発売。
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