ビートルズの遺伝子を持った名曲集を30年かけて完成させた洋楽ディレクターの執念とポップ愛 (後編)
ジェフ・リンズELOのニューアルバムが突如リリースされたことも追い風に
――何度挫折しても諦めなかったのは、白木さんが現役のうちに成し遂げたかったから?
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「まさにそうですね(笑)。CDなどのフィジカルマーケットは、海外ではどんどん縮小しています。日本ではそこまでドラスティックになくなることはまだないと思いますが、とは言えやっぱり厳しくなってきていて。僕もあと数年で引退ですし、出せる時間も限られてきた。来年はビートルズが解散して50年ですよね。そしてジョン・レノンが亡くなって40年。ジョンが生きていた時代から倍の時代が過ぎて、いまでも胸に刺さったままの、あの事件のトラウマから40年、やるなら今しかないだろうなって、そんな気持ちで一念発起したわけです。まあ地獄の日々でしたけど(笑)。また今回もだめかなって瞬間も結構あったんですよ。でもいろんな奇跡が起こって、こうしてまとまったんです」
――ジェフ・リンズELOのニューアルバム「フロム・アウト・オブ・ノーウェア」が突然リリースされたというのも奇跡ですよね?
「ELOの新譜なんて、全く予想してなかったですから。ギリギリの発表で発売の1ヵ月前位かな? ほんとびっくりしましたね。ビッグアーティストになればなるほど、こっちもわからないんですよ。情報を知るタイミングって、ほぼファンの皆さんと同じタイミングって時もあるんです。その前にELOの『シークレット・メッセージ』というアルバムが発売35周年で、記念盤制作の許諾が偶然下りて、ジョンが前面協力したハリー・ニルソンの『プシー・キャッツ』も発売45周年なんで、記念盤のリリースも決まり、これでようやく、この企画盤の発売も決まって喜んでいたら、そこにELOが新譜を出すということで、すべてがひとつにつながった感じで、ほんと奇跡ですね」
国内外のコンピレーションCDのいま
――先ほど国内のCD事情について少しお話がありましたが、ストリーミングのプレイリストが日常に浸透してきたいま、コンピレーションCDの役割って、白木さんはどう捉えていますか?
「昔は大好きな曲をカセットテープに入れて自分自身の『ミックステープ』を作ることはよくやりましたよね。自分の好きな曲を自由に並べたいという欲求はいつの時代もあって、それがストリーミングで、誰もが簡単にプレイリストを作ることができるようになったことで、確かにコンピレーションCDが持つ役割っていうのが、どんどん少なくなってきているとは思います。王道的ヒット曲のプレイリストはいくらでもあるわけですし。ただ逆に独特の日本人的視点での企画や提案型のコンピCDは残っていく気がするんです。」
――海外はどうですか?
「海外こそ完全にストリーミングにシフトしていますね。プレイリストでどう楽曲を聴かせるか?ヨーロッパ、アメリカともにCDはどんどん衰退し、もはや楽曲単位でストリーミングでどうアプロ―チするかということしか考えてない。頭のつかみをどうするか?音楽そのものよりもテクニック論になってる気もします。なので以前には素晴らしい企画盤や丁寧な仕事のパッケージのプロダクツがリリースされてきましたが、もはやフィジカルに関しては海外から企画を待っててもほとんど期待できない。一部の音楽マニアのための高額なボックスセットは今でもありますが、ものすごい低価格か物凄い高価格か、それしかない。その中間にあったようなものは一切でてくる気配がないので、あとは日本でどんどん企画して出していかないとならない現状です」