プロ熱波師になった元プロレスラー 今や日本中の温浴施設を席巻

昨今のサウナブームの波の中心に、元プロレスラーがいる。

懐かしのファイティングポーズを披露する井上勝正【写真:柴田惣一】
懐かしのファイティングポーズを披露する井上勝正【写真:柴田惣一】

大日本プロレスから熱波師の道へ

 昨今のサウナブームの波の中心に、元プロレスラーがいる。

 温浴施設のサウナ内で、ヒーターに水をかけ発生した蒸気を、タオルであおぐ「ロウリュ」をサービスする熱波師。多くの人間が日本全国で活動しているが、各地の施設に招聘されるなど、プロ熱波師として活躍しているのは40人ほどだという。

 その頂点に立っているのが、元大日本プロレスの井上勝正。格闘家から2002年にプロレスラーに転身し、同年から大日本プロレスに所属した。両膝の負傷に苦しみ、09年に廃業するも「チーム若作り」を結成するなど、熱血ファイトで人気を集めていた。

 その後、横浜市鶴見区のスーパー銭湯「おふろの国」に入社し、熱波師の道を究めることとなった。

 人気のプロ熱波師として、日本列島を飛び回りながら、日本サウナ熱波アウフグース協会の熱波師検定座学講師にも就任。後進の指導にもあたっている。

「サウナ、そしてクールダウン後の素晴らしい感覚を皆さんに知ってもらいたい。体を温め血流を良くすることで、心と体に多くの効果と恩恵が生じる」と、文字通り熱く訴える井上。サウナとロウリュを語り始めたら、止まらなくなる。

 正しい入り方をすれば、効果絶大なサウナだが、間違った情報も伝わっているという。井上は「入浴者はもちろん、施設にとっても有益な存在でなければならない」と、プロ熱波師の心構えを説く。

 サウナ発祥の国と言われるフィンランドをはじめ世界にはサウナ文化が花開いている。「日本には日本のサウナ文化がある。タオルを使ったロウリュは、日本独特のモノ。今は夢のまた夢だけど、世界にロウリュの楽しさを発信できたら、これまたうれしい」と目を見開く。

 サウナ部が発足したDDTのようにプロレスラーには、サウナ愛好者が多い。トレーニングや食事と並行して「体作りにサウナも欠かせない」と口にする選手は、どこの団体にもいる。

 井上は「私がそうであるように、プロレスラーのセカンドキャリアとして、熱波師もいいと思う。趣味と実益を兼ねられる」と、これまた熱い。

 先日はおふろの国で、サウナファンや全国の温浴施設の支配人、関係者らが集結し、年に一度の「大サウナ博」が開かれ、井上はMCやプロレス大会の実況、レフェリーで大暴れ。拍手を集めていた。

 プロレスではベルト奪取はならなかった井上だが「サウナ皇帝」の異名をわが物としている。

次のページへ (2/2) 【写真】桶をかぶる井上
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