【プロレスこの一年 ♯21】北斗晶が優勝した伝説の「導夢超女大戦」ライガーの呼びかけで実現「SUPER J-CUP」1994年のプロレス

「チャンピオン・カーニバル」で悲願の初優勝を飾った川田利明【写真:平工 幸雄】
「チャンピオン・カーニバル」で悲願の初優勝を飾った川田利明【写真:平工 幸雄】

川田がCC悲願の初優勝、蝶野3度目のG1制覇

 猪木のカウントダウンは5・1福岡ドームで第1戦、グレート・ムタにスリーパーホールドで勝利をおさめた。この大会には猪木の愛弟子でもあった佐山聡(初代タイガーマスク)が電撃引退以来、約10年ぶりに新日本のリングに登場、ライガーとエキシビションマッチを行っている。第2戦は9・23横浜アリーナで、異種格闘技戦のスタートとなったウィリエム・ルスカと再会。この試合でも猪木が勝利を飾ったのだった。

 夏恒例の「G1クライマックス」では、“G1男”蝶野正洋がパワー・ウォリアー(佐々木健介)を破り2年ぶり3回目のG1制覇。その蝶野は秋の「SGタッグリーグ戦」にスーパー・ストロング・マシンとエントリー。優勝は武藤敬司&馳組に譲るも、敗れたマシンが自らマスクを取って「ショッパイ試合ですいません!」という名言を放った。

 全日本ではこの年、若い力が確実に実績を残しはじめた。「第2回あすなろ杯争奪リーグ戦」(1・29後楽園で決勝)では秋山準が大森隆男を破り全勝優勝の快挙。「チャンピオン・カーニバル」では川田利明がスティーブ・ウィリアムスから勝利し、悲願の初優勝を達成した。また、9・3武道館では小橋建太がウイリアムスの三冠ヘビー級王座に初挑戦。小橋は三沢光晴とのコンビで暮れの「世界最強タッグ決定リーグ戦」で2連覇を達成した。

 この年、スキャンダラスな話題を振りまいたのがUWFインターナショナルだった。Uインターは2月15日、他団体の大物(橋本、三沢、天龍、前田日明、船木誠勝)に呼びかける形で「プロレスリング・ワールドトーナメント」の開催を発表。優勝賞金として現金1億円を用意し物議を醸した。トーナメントは4・3大阪城ホールで開幕も、呼びかけた選手は案の定、全員が不出場。安生洋二が前田に対し「200%勝てる」と豪語したのだが……。

 結局トーナメントは高田延彦とスーパー・ベイダーの優勝戦(8・18武道館)となり、ベイダーが優勝、第2代プロレスリング世界ヘビー級王者に認定された。そして年末の12月7日、安生がロサンゼルスの“グレイシー柔術”ヒクソン・グレイシーのジムに押しかけ道場破りを敢行。しかし返り討ちに遭い、顔面ボコボコにされる悲劇。

 一方、型破りなデスマッチでカリスマ化したFMWの大仁田厚は、電流爆破デスマッチを天龍(FMW5・5川崎球場)やサスケ(みちのく10・30岩手)相手に敢行。メジャーからインディーまで幅広く仕掛けるとともに、5月には1年後の5・5川崎で引退することを発表し、こちらも話題をさらっていった。

 また、この年の5月にはアメリカのWWFが横浜、名古屋、大阪、月寒にて「マニアツアー」を実現させるも、興行はまさかの惨敗を喫してしまう。が、ツアーに参戦したみちのくの新崎人生は11月、白使(ハクシ)として本場WWFデビューを飾ることとなる。これもまた、(地方のローカル)インディーから(世界の)メジャーに残した爪痕である。(文中敬称略)

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