「マツコの知らない世界」の敏腕ディレクターが映画で描く大相撲の“知らない世界”
最高レベルの音響システム「ドルビーアトモス」を採用
――映画はドルビーアトモスの映画館で上映される予定は? 日本の劇場では、アトモスを導入している映画館は30数館。そんなに多くはないですね。
染谷氏「日本の作品は、アトモスで録音されたもの自体が少ないですね。もっと言えば、7.1チャンネルですらない。そういった意味でも、この映画を起爆剤にしたいという思いはありました。最初に方向性を確かめるために7分のデモリールを結構な労力をかけて作りました」
坂田監督「初めて聞いた時は大迫力でびっくりしましたよ。国技館は国技館の音になっているし、稽古は稽古場の雰囲気がある」
染谷氏「録音する時も、通常よりも大きい(アトモス用の)マイクを使うんですけど、後処理にかなりの比重がかかっています。国技館のシーンでは変な拍手や変なやじを飛ばしている人の声やノイズもきれいに抜いています。作業は気が遠くなるような壮絶なネバーエンディング・ストーリーでした(笑)」
――映画では、境川部屋と高田川部屋という2つの部屋を取り上げました。この意図は?
坂田監督「最初に境川部屋を撮ったのですが、それだけだと、境川部屋のドキュメンタリーになってしまう。“これがお相撲の世界”というためには、それとは違う魅力のある部屋を取り上げないと思ったんです」
染谷氏「相撲中継を見る程度でしたが、生で見て、テレビで見るのとはだいぶ違うな、と思いましたね。力士は命を張ってやっている、と。だから、きちんとそれを伝えなきゃいけないっていう使命感を持っていました」
――映画では、「相撲道」とはサムライの魂を継ぐ者たちというのがコンセプトになっています。あの大きな体は自らが鍛えた鎧なのか、と納得しました。これは最初から思い浮かべていたことですか?
坂田監督「取材する中であったキーワードでした。なぜ、まげを結っているのか、というのもそうですし、力士たちは、覚悟を決め、人生をかけて、やっているじゃないですか。その生き様がサムライだ、と。海外も意識しました。サムライと結びつけた方が分かりやすいかな、と」