ハナコ秋山、初個展で見せた等身大の思いとコンプレックス キャンバスは10センチ四方で「大きくは描けない」

お笑いトリオ・ハナコの秋山寛貴が5月9日と10日の2日間、東京・表参道のGallery Feles Omotesandoにて、自身初の単独個展「大きくは描けない」を開催する。普段から趣味であるイラストをSNSで公開し、独自の温かい世界観で多くのファンを魅了してきた秋山だが、なぜ今、実店舗での個展開催に至ったのか。

インタビューに応じたハナコの秋山寛貴【写真:冨田味我】
インタビューに応じたハナコの秋山寛貴【写真:冨田味我】

念願の単独個展「大きくは描けない」を東京・表参道で開催

 お笑いトリオ・ハナコの秋山寛貴が5月9日と10日の2日間、東京・表参道のGallery Feles Omotesandoにて、自身初の単独個展「大きくは描けない」を開催する。普段から趣味であるイラストをSNSで公開し、独自の温かい世界観で多くのファンを魅了してきた秋山だが、なぜ今、実店舗での個展開催に至ったのか。(取材・文=平辻哲也)

「個展は結構ずっとやりたいと言いながらなかなか開催できていなかったので、ようやく念願の開催になります」と、秋山は初個展に向けた喜びを率直に語る。

 普段、秋山のイラストはiPadなどのデジタルツールを使って描かれ、XやインスタグラムなどのSNS上で発表されている。「普段SNSに趣味で書いているイラストを載せて、皆さんが『いいね』をつけてくれたり、コメントであーだこーだ感想を突っ込んでくれたりするのを見るのはすごく楽しいんです」とSNSでの交流の楽しさを認めつつも、彼の中にはお笑い芸人ならではの強い渇望があった。

「お笑いライブも一緒ですけど、生でお客さんがどんな雰囲気で見てくれているのか、にっこり笑ってくれているのか、あるいはスベっているのか。それを生で体感しに行く時間がすごく贅沢だなと思うんです。今回そういう場が作れるということで、めっちゃ楽しみです」と目を輝かせる。画面越しではなく、自分の作品を前にした人々の生きた反応や温度感を、直接肌で感じたいという熱い思いが個展開催へと突き動かした。

 今回の個展の最大の特徴は、普段のデジタル制作から一転し、「アナログ」のキャンバス作品に挑んでいる点だ。

「アナログで絵を描いて、しかも人にちゃんと見てもらうなんて、本当に高校生の美術部ぶりぐらいに挑んでいます」と苦笑いする。画材選びからのスタートとなり、最初は初心者丸出しでインターネットで調べたり、さまざまな絵の具を買って試し書きを繰り返したという。

 デジタルとアナログの決定的な違いは、「やり直しが効かない」ことだ。

「デジタルで書いているイラストの雰囲気がどの絵の具なら出るのか全く分からなかったのですが、最終的にアクリル絵の具でのベタ塗りと黒いマジックに行き着きました。マジックでくっきりと線を描くといつもの雰囲気が浮き出てきて、『あ、いいかも』と思えたんです」と、試行錯誤の末に自分らしい表現方法を見つけ出した。

アナログならではの苦労を明かした【写真:冨田味我】
アナログならではの苦労を明かした【写真:冨田味我】

アナログでの制作「慎重に石橋を叩きまくりながら」

 しかし、アナログならではの苦労は今も続いている。「デジタルであれば何回も書き直しができますが、アナログはそれができないのでもどかしいですし、プレッシャーもあります。慎重に石橋を叩きまくりながら1枚を書いています」と本音をこぼす。

 さらに多忙なスケジュールを縫っての制作となるため、秋山は小さなキャンバスと絵の具をトートバッグに入れ、移動中の隙間時間を見つけては筆を執っている。だが、そこにも思わぬ落とし穴があった。

「下書きでキャンバスに鉛筆で描くのですが、消しゴムの消しカスがすごく出るんです。この前、移動中の新幹線で書こうとしたら『あ、やべ、消しカスが出るんだった』と気づいて慌ててやめました」

 個展のタイトル「大きくは描けない」には、秋山のアートに対する等身大の思いと、少しのコンプレックスが入り混じっている。アートの個展というと、壁一面を覆うような巨大な絵画が飾られている光景を想像しがちだが、秋山の作品は10センチ四方の「0号」と呼ばれる極小サイズのキャンバスに描かれている。

「性格上、あまりでかいものを描く自信がないんです。高校時代に油絵を専攻していましたが、周りがめちゃめちゃうまくて劣等感があった思い出しかなくて。でも、教科書の隅にするような落書きは昔から大好きでした。そんな自分が自由に描いている落書きのサイズとキャンバスを合流させてみようと思った結果、こんなにちっちゃいサイズになりました」と、キャンバス選びの背景を明かす。

「個展と言ったらドカンというイメージがあるかもしれませんが、僕にはそんなのは描けません。でも、小さく描いたものは見てほしいという気持ちが山々なので、このタイトルを付けました」と、コンプレックスを逆手に取った独自のスタンスを語る。プレスリリースの本人コメントでも「大胆さも自信もありません。ひっそり小さく描きたがります。大きくは描けないけど、描いたものは見て欲しい」と切実な思いをつづっている。

「最低でも50点は超えて会場を埋めたいですし、少しでかいものも2点ほど書いてみようと思っています」と目標を掲げる。また、将来的にはこの小さなアナログイラストを生かしたアクリルキーホルダーなどのオリジナルグッズ展開にも夢を膨らませており、ファンにとってもたまらない空間となりそうだ。

 お笑いの世界で頂点を極めた男が、鉛筆の消しカスと格闘しながら、10センチ四方のキャンバスにひたむきに向き合う。そこには、背伸びをしない等身大の秋山寛貴の姿がある。「大きくは描けない」かもしれないが、その小さな作品たちには、訪れる人々を「にっこり」と笑顔にさせる、彼ならではの大きくて温かいエンターテインメントがぎっしりと詰まっている。

□秋山寛貴(あきやま・ひろき)1991年9月20日生まれ、岡山県岡山市出身。総社南高普通科美術工芸コースで油絵を専攻。2014年、ワタナベコメディスクール同期の菊田竜大、岡部大とともに「ハナコ」を結成し、ネタ作りを担当する。「キングオブコント2018」で優勝し、ブレイク。現在は日本テレビ系『有吉の壁』、フジテレビ系『新しいカギ』など多数の番組にレギュラー出演。また、日本テレビ系連続ドラマ『でっけぇ風呂場で待ってます』などで共同脚本を担当したほか、2025年公開の映画『ブラック・ショーマン』やTBS系連続ドラマ『ザ・ロイヤルファミリー』に出演するなど、俳優やクリエイターとしても多才ぶりを発揮している。身長163センチ。血液型O型。

□ハナコ・秋山寛貴 初単独個展『大きくは描けない』
日程:5月9日(土)午後1時~午後7時、5月10日(日)午前11時30分~午後6時
会場:Gallery Feles Omotesando(東京都渋谷区神宮前3-18-26)
料金:1000円(※1時間ごとの日時指定制)
チケット:ローソンチケットにて販売

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください