突然の解散から約30年…元90年代アイドル・Melodyの今 指定難病で視力低下も「娘たちが私の目になって」

1990年代初頭、歌番組減少など厳しい状況に置かれ「アイドル冬の時代」と呼ばれた中で、正統派グループとしてひたむきに活動を続けた3人組・Melody(メロディ)。そのメンバーである望月まゆさんと若杉南さんの歩みを振り返る、ロングインタビューを実施した。グループの軌跡を辿った前編に続き、後編は解散から現在に至るまで、2人が歩んできた知られざる足跡、そして病と闘う姿を追った。

元Melodyの望月まゆ(左)と若杉南【写真:増田美咲】
元Melodyの望月まゆ(左)と若杉南【写真:増田美咲】

90年代アイドル界を静かに支えたMelodyの過去と現在・後編

 1990年代初頭、歌番組減少など厳しい状況に置かれ「アイドル冬の時代」と呼ばれた中で、正統派グループとしてひたむきに活動を続けた3人組・Melody(メロディ)。そのメンバーである望月まゆさんと若杉南さんの歩みを振り返る、ロングインタビューを実施した。グループの軌跡を辿った前編に続き、後編は解散から現在に至るまで、2人が歩んできた知られざる足跡、そして病と闘う姿を追った。(取材・文=福嶋剛)

 93年にデビューしたMelodyは、95年の代表曲『運命’95』のヒットを機に勢いを加速させた。東名阪でのライブ動員は常に安定し、96年7月のツアー「Oh Please!」東京公演(赤坂BLITZ)も超満員で成功を収める。また同年、タワーレコード渋谷店で開催した9枚目のシングル『Boom Boom My Heart』のインストアライブでは、当時の同店における「1日のCD売上記録」を更新し、シングルチャート1位を獲得。数々のCM出演や雑誌の表紙を飾るなど、その歩みは順調そのものに見えた。

 ところが翌97年、事態は急転。突然の解散宣告により、彼女たちのサクセスストーリーはあっけない幕切れを迎えた。あまりに予想外の出来事に、メンバーは驚くことすら忘れてしまったという。

若杉「何か前兆があれば心構えもできましたが、不意打ちを食らったような感覚で……。どうしたらいいのか分からなくなってしまいました」

望月「次のレコーディング予定も決まっていましたし、ファンの方々にいつどう伝えるべきか、関係者も混乱していたようです。その指示を待つ間も活動は続いていたので、すごくモヤモヤしながら『またお会いしましょう!』とあいさつをしていました」

若杉「分からないことが多すぎて、『ああ、私たち終わっちゃうんだ』と。結局、最後まで実感が持てないまま終わってしまいましたね」

 解散後、3人は別々の道を歩み始める。望月さんは解散と同時に芸能界を引退。若杉さんはタレントとして約1年活動した後に引退し、田中有紀美さんはソロシンガーとして活動を継続した。

望月「そもそも私が芸能界に入ったのは、厳格だった母の勧めを断れなかったからです。周囲の期待に応えること、目の前の仕事をこなすことに精一杯で、『アイドルとは何か』という正解が分からないまま、迷いの中で過ぎ去っていった時間だったと思います」

若杉「私は解散後、『どうぶつ奇想天外!』(TBS系)のレポーターなどを務めました。ライオンの赤ちゃんを抱っこしたり、オーストラリアで貴重な動物を探したり……。短い期間でしたが、『新春かくし芸大会』(フジテレビ系)への出演など貴重な経験をさせていただきました。でも、私も21歳の時に引退を選んだんです」

 引退後、2人は母親となり、それぞれ異なる環境で育児に奮闘する日々を送ることとなる。

望月「私は次女の出産から半年後、夫の仕事でベトナムへ渡り4年半、その後オーストラリアで6年暮らしました。娘たちがずっと新体操に打ち込んでいたこともあり、私の30代は娘たちに捧げた10年間でした」

 昨年、娘たちがそれぞれ大学と高校に進学し、「ようやく肩の荷が下りた」と語る望月さん。娘たちとは「友達のような関係」を築きたいと考えてきた。

望月「幼い頃から同じ目線で何でも話せる関係を心がけてきました。『あれしなさい』といった指示も極力言わないようにして。ある日、娘たちが『ママが同級生だったら良かったのに』と言ってくれた時は、本当にうれしかったですね」

若杉「私も引退後に結婚し、2人の娘に恵まれました。当初は専業主婦でしたが、数年後にシングルとなり、2人を育てるためにさまざまな仕事を経験しました。その後、現在の仕事につながる化粧品メーカーに就職しました。コスメにはもともと興味があり、日本化粧品検定1級や特級(コスメコンシェルジュ)、エシカル・コンシェルジュなどの資格を取得。自分のブランドを手掛けたいと一念発起し、ブランドの製品開発を手掛けて6年目を迎えました」

 努力を重ねてオリジナル商品を開発。現在では企業のサポートを受け、全国の量販店や大手ドラッグストアに商品が並ぶまでに成長させた。そこには、Melody時代のおっとりとした「南」の姿ではなく、一人のたくましい女性の姿があった。

若杉「娘たちに寂しい思いや苦労をさせたくなかったので大学を卒業させるまで必死でした。娘たちにとっては、きっと厳しい母親だったと思います」

 しかし、その躍進の裏で、若杉さんは大きな困難に直面していた。

若杉「目の病気です。『網膜色素変性症』という指定難病で、暗い場所での見えにくさから始まり、年々視野が狭くなり、視力や色覚も低下しています。高校生の頃から前兆があり、Melody時代も少し兆候はありましたが、医師から病名を宣告された7~8年前から進行が早まりました。家ではPCの白黒反転やスマホのアシスト機能で対応していますが、外出時は人の手を借りないと安心して歩くのが難しい状態です」

 ブランド開発や販路開拓に奔走しながら、病とも闘ってきた若杉さん。そんな彼女の支えとなっているのは、現在27歳と24歳になった娘たちだ。

若杉「営業に出かける時などは、娘たちが私の『目』となってサポートしてくれたこともありました。今日も次女が取材場所まで連れてきてくれました。娘たちの存在が、今の私の原動力です」

解散から約30年「今もメンバー3人の絆は変わらない」と語った【写真:増田美咲】
解散から約30年「今もメンバー3人の絆は変わらない」と語った【写真:増田美咲】

「封印してきた過去を語ることができるようになった」

 一方で海外生活を続ける予定だった望月さんは、コロナ禍による帰国が転機となった。その数年後、元CoCoの宮前真樹さんに声をかけられ、久々にステージに立つ機会を得たのだ。

望月「日本に帰国していなければ、二度とファンの皆さんの前で歌うことはなかったと思います。そのコンサートを昨年見に来てくれた南ちゃんが『私も歌いたい』と言ってくれた時は、本当にうれしかった」

 それから1年。2026年2月15日、東京で開催されたイベント『アイドルバレンタイン・オンステージ2026』で、2人は約30年ぶりの共演を果たした。

若杉「まゆちゃんの隣で歌えて、本当に楽しかったです」

望月「歌詞や振り付けを思い出す練習時間は長かったのに、本番は一瞬で。なんだか切ないですね(笑)」

若杉「久しぶりのステージで、感覚を思い出す前に終わってしまった気もします。でも『運命’95』を歌っている時、『これが最後になるかもしれない』という覚悟で、悔いのないよう全力でやり切りました」

望月「いつか3人で立てる日が来ればいいなとは思いますが、『また今度』と安易に約束することはできないんです。(田中)有紀美ちゃんも子育てや自身のライブ活動で忙しいですし、南ちゃんの病状や私の今後の予定などを考えると、ファンの皆さんに過度な期待をさせてはいけないと思っています」

 3月29日に東京・渋谷の『アメリカンダイナー カフェテラオ』で開催される昼夜2公演のライブは、発売と同時に即完した。

望月「これほどの反響をいただけるとは思わず、驚いています。今回は少人数制で、お食事を楽しみながら歌を聴いていただけるような、温かいライブを予定しています」

 最後に、2人にとって「Melody」とは何だったのかを尋ねた。

望月「解散直後はどうにも気持ちの整理がつかなくて、過去を封印するようにして生きてきました。けれど、結婚して母となり、『ようやく自分らしく生きられている』と思えた瞬間、止まっていた時間が動き出すように思い出が溢れてきたんです。今なら、迷わずに言えます。Melodyでの日々は、私の人生の大切な歴史です」

若杉「感謝の一言に尽きます。10代の頃はそう思える余裕もありませんでしたが、あんなに素敵な4年間は二度と経験できない奇跡。まゆちゃん、有紀美ちゃんと出会えたことも含め、すべてが今の私に繋がっています。(涙を浮かべながら)またこうして歌えるなんて思っていなかったので……本当に幸せです」

望月「私たちが引退した後も、有紀美ちゃんがMelodyの曲を歌い続けてくれたからこそ、今もファンの皆さんの中にグループが生き続けています。彼女の功績には尊敬しかありません。Melodyの曲はサブスクでも聴けるので、当時を知らない方もぜひ一度聴いてみてほしいですね」

□Melody(メロディ)田中有紀美、望月まゆ、若杉南による3人組女性アイドルグループ。1992年に結成し、93年10月21日、シングル『素直に言えない~もっとそばにいたい~』でメジャーデビュー。透明感あふれる歌声と正統派のビジュアル、質の高いポップサウンドで根強い人気を誇った。97年に解散し、望月と若杉は芸能界を引退。田中は現在も歌手として活動を継続している。解散から約30年が経過した現在も、SNSやサブスクリプション配信を通じて世代を超えたファンに愛され続けている。

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