新日本プロレスに追いつけ追い越せ 真の「企業プロレス」でチャレンジ【連載vol.10】

今秋、発進したCyberFightが、DDTとNOAHを核にプロレス界に新風を吹かせている。

高木三四郎は得意のポーズで気合を入れた【写真:柴田惣一】
高木三四郎は得意のポーズで気合を入れた【写真:柴田惣一】

金曜午後8時更新「柴田惣一のプロレスワンダーランド」

 今秋、発進したCyberFightが、DDTとNOAHを核にプロレス界に新風を吹かせている。

 社長として陣頭指揮を執っているのは、高木三四郎。1994年にレスラーデビュー後、DDTの旗揚げに参加。2000年に代表に就任し、DDTをけん引してきた。17年、サイバーエージェント・グループ入りを実現させ、今年、NOAHと経営統合している。

 さまざまな工夫を凝らした経営方針で、プロレス界に革新の波を起こしてきたが、その原点はSWSだという。高木が学生だった90年に、メガネスーパーが豊富な資金を投入してスタートしたSWS。高木は「それまではメディアプロレス、テレビプロレスだったプロレス界に、新たな流れが起こった」と分析する。

 ただ、2年余りで崩壊してしまったSWSには問題点も多かった。「SWSは企業プロレスではなかった。企業がオーナーだっただけ」と鋭く指摘する。

 実際、田中八郎オーナーは、資金を提供するだけでなく、レスラーを大切に思うが故とはいえ、経営とは無縁な問題にも介入した。その結果、団体内に不協和音が広がり、失敗に終わった。

 高木はSWSから多くのことを学び「団体ごと企業のグループとして迎え入れてくれるところ」を探し続けた結果、サイバーエージェントに行き着いたのだ。

 サイバーエージェントはDDTがビジネスになると判断してグループ入りを認めてくれた。もちろん、厳しい目が常に向けられている。無駄な経費はカットされ、目標とする数字を達成できなければ、責任を問われることになる。

 サイバーエージェントの藤田晋社長との話し合いは高木をしても刺激がいっぱいだ。「ビジネスの成立ポイントが分かっていらっしゃるので、いろいろと教えてもらっています」と、藤田社長との会議を楽しみにしているという。

 DDTグループ(DDT、東京女子プロレス、ガンバレ☆プロレス)、そしてNOAHを傘下にしているというと、SWSの部屋別制度が思い出されるが「まったく違う」と高木は苦笑い。

 あくまでビジネスとしてCyberFightを成功させるために、いくつものブランドを抱えることになったのだ。対抗戦などは頭になく、それぞれのブランド力を高めていく。

 現在、新日本プロレスとスターダムがブシロードグループ入りし、日本プロレス界をリードしている。CyberFight立ち上げの際、高木は「いつかは業界ナンバー1になりたい」と宣言している。

 SWSが誕生して30年。高木は「令和の企業プロレス」でプロレス界のトップを目指している。「大社長」はリング上の呼び名だけではない。辣腕・高木のかじ取りに注目だ

次のページへ (2/2) 高木三四郎の別カット
1 2
あなたの“気になる”を教えてください