ギャルの流行、カリスマは危機感「時代の食い物に」 うさたにパイセンの思い「正しい知識広めたい」

ギャル文化研究家“うさたにパイセン”として活動しているモデルの岩本紗也加(31)は1月、「日本ギャル協会」を立ち上げ「ギャル検定」をスタートさせた。地元・福島県で「あったかふくしま観光交流大使」として活動し、地域創生事業の会議などさまざまな舞台で活躍するギャルのカリスマに設立の思いを聞いた。

インタビューに応じた“うさたにパイセン”こと岩本紗也加【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた“うさたにパイセン”こと岩本紗也加【写真:ENCOUNT編集部】

『日本ギャル協会』設立の真意

 ギャル文化研究家“うさたにパイセン”として活動しているモデルの岩本紗也加(31)は1月、「日本ギャル協会」を立ち上げ「ギャル検定」をスタートさせた。地元・福島県で「あったかふくしま観光交流大使」として活動し、地域創生事業の会議などさまざまな舞台で活躍するギャルのカリスマに設立の思いを聞いた。(取材・文=島田将斗)

「ギャルの質を上げたい。ギャルの文化を残すため、世界に正しい知識を広めるために日本ギャル協会を作りました」

 日本独自のカルチャーとして親しまれてきたギャル文化。東京・渋谷を中心に発展し、ガングロブームなど、時代ごとに流行をけん引してきた。かつては雑誌も多く発売されるほどであったが、SNSの普及などによって衰退。「伝説のギャル雑誌」と呼ばれた「egg」も2014年に一度休刊(18年に復活)し、大きな衝撃を与えた。

 ギャル雑誌モデルとして高校時代から活躍している“うさたにパイセン”はまさにこの文化が残らず、消費されている状況に危機感を抱いていた。

「ギャルって波があるじゃないですか。言いたくないけど、時代の食い物にされがち。私もされてきたし。ギャルがはやらなくなったら一気になくなっちゃう。じゃあこのコ(今を生きるギャル)たちは何なんだろうってめっちゃ悔しくて」

 実際に雑誌が休刊・廃刊になり、9年前に「ギャルを絶対途絶えさせたくない」とYouTubeチャンネルを作った。これまで投稿した動画は1000本超え。現在までメイクやネイル、ダイエットやコスメ紹介などさまざまなコンテンツを発信している。

「時代ごとに社会へお金を生んだり、貢献しているはずなのにショット(一過性)過ぎん? みたいな。パラパラとかもまさにそうだと思うんですけど、ギャルは『やっときゃバズる』みたいな数字を取る手段じゃない。海外でもまねをしてくれるのはうれしいけど、その奥に歴史があるんです。そうやって伝えないでまた終わったらやばくね? って」

 文化として残したい。その思いが強まり、26年1月に「日本ギャル協会」を設立。活動内容は「文化・歴史の整理、アーカイブ化」、「カルチャーイベントの開催」、「教育・企業・自治体との連携による社会実装」、「国内外への情報発信・メディア展開」など多岐にわたる。

「まずは土台。将来的にはギャルの歴史資料館作りたいんです。今は本を読んだりもして学んでいるんですけど、うちらですら知らないこともある。それに、そもそも今勉強してても、全部分かるわけじゃない。なぜならその時代に生きてはいないから。だからこそ歴史を固めていきたいです」

 残すのは今のギャルだけではなく、過去の文化も再定義し直すつもりだ。より解像度を上げるために当時のギャルと対談をして、生の声を大事にしている。

「話を聞いて、しっかり整理して、まとめて公開していく。それをやったら、日本のギャルに対しての知識がしっかりしてくるし、一人一人のギャルが誇りを持てる。『私ギャルなのかな?』じゃなくて『あ、ギャルですよ』みたいな感じに」

ヤンキーとギャルは違う…偏見を打ち破る「検定」

 ただ誇りを取り戻すことだけがゴールではない。ギャルという存在を一般社会に浸透させることまでを見ている。「ギャルがギャルのままでいられる」仕事や環境を作るのが目標だ。

「働き方革命を超やりたくて。うちもずっとそうだったけど、バイトにマジ受かんない。性格どれだけ良くても見かけで損しちゃうっていうのが超意味分かんない。出産、田舎、就職先……ギャルがギャルを辞めなきゃいけないシチュエーションがめっちゃ多いんですよ。自分100%のまま生きていけないのがマジで理解できなすぎて」

 派手な見た目や不良文化との結びつきなどから、どうしても“ギャル=ヤンキー”とイメージが付いてしまっている現状もある。“うさたにパイセン”本人もこれを認め、本音を漏らした。

「ギャルって自分が名乗ったらギャル。今はヤンキーとギャルがごっちゃになって分かりにくい。本当を言うとギャルの質を上げたい。かわいそうなんですよ。一生懸命なギャル、性格のいいギャルはいっぱいいるのに。私自身もヤンキー時代があったからこそ、一緒にされるのがマジで嫌なんです」

 だからこそ「ギャル文化を楽しむための公式バッジ」ギャル検定を作った。

「プロのギャルというのを作って、歴史を知っているギャルオタクがもっと増えていけば、ギャル自体も守られる。質がめちゃめちゃ上がったら舐められることもなくなるし、誇りをもっと持てると思いました」

 この「プロのギャル」の定義は決して机上の空論ではない。“うさたにパイセン”は22年から、ギャル文化を世界に発信するため、メイク道具とセーラー服2着、下着3枚だけを持って海外バックパッカー旅に出た。これまでにアジア、米国、欧州を回ってギャルの底力を現地で感じた。

 ギャル姿で各地を周り、得意のギャルメイクを現地の人々に施した。

「地元にいた時も周りにギャルがいなかったので、自分が友達にメイクをしていたんです。YouTubeでも全身ギャルのトータルコーディネートをして変身させてポジティブになってもらう企画をやっていました。

 それの海外版をやろうと思って。“うさたに”なのでうさ耳付けてセーラー服で。毎日パンツと服は手洗いで、500円以下のところに住んで、『フリーメイク』って紙に書いて公園に立ったり、知らない人の家の扉にコンコンってノックして『ギャルメイクしません?』って」

 この企画はあくまでもボランティア活動のようなもの。一部SNSに投稿されているものもあるが、動画撮影はほとんどしていない。自身が着用したギャル服の「おふる」を配り、総勢700人にメイクをした。

「現地の方もめっちゃ乗り気で、いろんな場所にお邪魔させてもらいました。老若男女いろんな人に出会いましたし、現地のイベントにも参加させてもらって、ギャルプロデュースをしたりもました。

 ギャルメイクってかわいくなれるし、別人になれる。本当にギャルの武装だと思っていて、だから超HP(ヒットポイント)上がるんですよ、本当に! 『私なんて』って最初恥ずかしがっている子も、完成したら『イェーイ!』みたいな。テンションがマジで変わって。最後にギャルネームを付ければ、もう一人の自分になれる。ポジティブになってくれるのがすごいうれしいんです」

詐欺も離婚も“神イベ”に変換のギャルマインド「地球のテンションぶち上げる」

“うさたにパイセン”にとって、この変化は小さなきっかけに過ぎない。ギャルマインドは「世界を救う」と豪語した。

「ギャルマインドは地球のテンションぶち上げる。俯瞰して見ると私たちは地球に住ませてもらっていて、それなのに人間がネガティブでいたら、地球もネガティブになっちゃうと思うんです。でもギャルってマジで一人一人のパワーがえぐい。ポジティブなパワーがすごいから、このマインドがもっと世界中に広がったら地球のテンションも上がるくね? ギャルが増えたら地球救えるくね? みたいな」

 そう自慢げに語るがかつては自身もネガティブ側だった。クラスになじもうとせず、学校の図書室で一人、負の感情にとらわれていた過去もある。そんな少女を明るくさせたのが、カッコいいギャルたちだった。

「ギャル文化に救われている側なんです。本当に人の背中を押してくれる。超大切なヒーローなんです。最初からポジティブなギャルももちろんいるけど、全員がそんなことはなくて。落ち込むときは落ち込むし、挫折もします。落ち込んだまま引きずってしまう人もいるけど、ギャルはそれをバネにして飛び上がる。止まらずに下がった分だけ上がっていけるからめっちゃ強いんです」

 ネガティブなことが1つあれば、ポジティブなことを10個考えるのがギャルだという。「うちも離婚したり、詐欺にあったり、ネガティブなことがあったけど、今は『この経験最高じゃね?』って“神イベ”だとすら思っています。だから今めっちゃ最高にハッピー。普通だったら嫌と思っちゃうことを自分の意志でポジティブだったと落とし込む。それがギャルの特徴です」。

 そのうえ、このマインドは伝染しやすいというのが持論だ。

「例えば友達5人がみんなギャルで、1人がめっちゃネガティブに落ち込んじゃった時も、みんなで『いけるよ!』『うちらもそうだったから大丈夫!』って言ってくれる。そうすると『あ、いけるかも』みたいな感じになるんです。それを経験したから、自分も人の背中を押すようになったり。伝染力がエグい。本当にパワーすごい。しかも自虐もできるんです。『うちもこんなことあったし』って言える。ギャルとしてのプライドはあるけど、そのプライドが高いわけではないんですよね」

 心ない声も届くが「かわいそうな人だな、逆にありがとう」と笑い飛ばす。そんな“うさたにパイセン”の最終目標は「100歳の現役ギャルモデル」になることだ。

「私が辞めなかったらみんなも『あ、パイセンまだやってんだからいけるっしょ』みたいな気持ちになるかなと思って。絶対辞めないです。むしろパワーアップして、もっともっと派手に行こうと思っています」

 ネガティブをポジティブに変換し、周囲を巻き込んで上昇していく。それは世界から見た日本のイメージとは異なる、世界に誇るべき、最強の無形文化遺産なのかもしれない。「ギャルは世界を救う」。その言葉が現実になる日は、そう遠くないはずだ。

□うさたにパイセン(本名:岩本紗也加)1994年12月15日、福島県生まれ。日本ギャル協会会長。『Ranzuki』『小悪魔ageha』『LOVEggg』専属モデルを経て、現在は『姉ageha』レギュラーモデルとして活躍。2021年9月に「あったかふくしま観光交流大使」に就任。ギャル服ブランド「GYARUMY TOKYO」を手掛けるほか、MBS『アキナのギャルしか勝たん』ではMCを務めるなど多岐にわたり活動中。SNS総フォロワー数は80万人。

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