団長安田、火災現場で消火も“容疑者扱い” 防災士として生かした震災の教訓「阪神・淡路の時は逃げるだけで…」

お笑いトリオ・安田大サーカスの団長安田(51)は今、芸人としての活動の傍ら、「防災士」として精力的に情報を発信し続けている。司会を務めるケーブルテレビ・イッツコムチャンネルの防災番組『イッツコムおうち防災のすすめ』は、この3月で放送開始から第5回を迎える。その情熱の裏には、20歳の時に瓦礫の下で別れた、かけがえのない親友との“約束”があった。

インタビューに応じた安田大サーカス・団長安田【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた安田大サーカス・団長安田【写真:ENCOUNT編集部】

幼なじみの親友と突然の別れ

 お笑いトリオ・安田大サーカスの団長安田(51)は今、芸人としての活動の傍ら、「防災士」として精力的に情報を発信し続けている。司会を務めるケーブルテレビ・イッツコムチャンネルの防災番組『イッツコムおうち防災のすすめ』は、この3月で放送開始から第5回を迎える。その情熱の裏には、20歳の時に瓦礫の下で別れた、かけがえのない親友との“約束”があった。(取材・文=平辻哲也)

 1995年1月17日、早朝。兵庫県西宮市の自宅で団長安田を襲った激震。自身にはけがはなかったが、小学校からの幼なじみだった親友・山口恵介さん(当時20)は帰らぬ人となった。成人式を終えたばかりの、あまりに突然の別れだった。

「あいつが本当によく笑ってくれるやつで。『お前はプロの芸人になれ』って、背中を押してくれたのも彼でした。『吉本行け、吉本行け』って言われてたのに、僕は松竹を選んでしまったんですけど(笑)。あん時、あいつの言うこと聞いて吉本に行っとったら良かったかなあ」

 冗談めかして笑う団長安田だが、その瞳の奥には深い悲しみが宿る。変わり果てた友との対面。「友達を亡くすなんて初めての経験だった」という喪失感は、その後の彼の人生観を大きく変えた。

 安田大サーカスといえば、身体を張った過酷なロケが代名詞だ。なぜそこまで自分を追い込めるのか。その問いに、彼はこう答える。

「やっぱり、恵介より苦しいことはまだ俺、したことがないんです。寝てて瓦礫に埋もれて亡くなることより、しんどいことをしたことが未だにない。それに比べたら『なにくそ』で頑張れる。あいつが後押ししてくれていると思ってます」

 長年、震災について公に語ることを避けてきた時期もあった。「自分だけ助かった」という後ろめたさが、言葉を詰まらせた。転機はコロナ禍だった。仕事が激減した時期に受けた新聞取材で、当時の写真を手に現場を訪れた記事が掲載されると、同級生たちから連絡が入った。

「『お前があいつの分まで喋れよ』と言ってくれたんです。『あ、俺が喋っていいんや』と。俺が新聞の一面に載ったということは、『お前が喋れってことやろ』と勝手に解釈しました。それまでは引け目がありましたが、それからは堂々と喋れるようになりました」

 正しい知識を持っていないという思いから、2024年12月には「防災士」の資格も取得。昨年9月、東京・中目黒で発生した火災現場に偶然居合わせ、初期消火に協力した。延焼を防ぐために放水を行った。

「警察が来た時は『その時間何してましたか?』って聞かれて、焦りましたよ」というが、行動は冷静そのものだった。

「阪神・淡路の時は、その場から逃げるだけで……阪神・淡路の時は、消防士さんが来てくれるとかっていうような状況じゃなかったので。あの経験がなかったら、動けなかったと思います。防災士の資格でも、まずは『火事だ!』と大声で知らせて避難を促すこと。これが一番大事だと学んでいました。消火活動ももちろんですが、まずは声かけ。知識があったからこそ、パニックにならずに動けたんです」と振り返る。

災害はいつ起こるか分からないと語る【写真:ENCOUNT編集部】
災害はいつ起こるか分からないと語る【写真:ENCOUNT編集部】

「備えること」の大切さを強調

 亡き友の声援を胸に、団長安田は今、番組を通じて「備えること」の大切さを説く。

「自転車のヘルメットと同じで、『いつ転ぶか』が分かっていればその時だけ被ればいい。でも災害はいつ起こるか分からない。だからこそ、常に『備え』というヘルメットを被っておくことが大事なんです」

 3月29日放送の『イッツコムおうち防災のすすめ』第5回では、本所防災館から体験コーナーを通して、暴風雨や水没した車のドアが開かなくなる恐怖を身を持って伝える。「防災は想像力」と語る安田。天国の友に見守られながら、彼は今日も“命を守るための笑いと情報”を届け続ける。

□団長安田(だんちょうやすだ)1974年4月26日、兵庫県西宮市出身。2001年にHIRO、クロちゃんと共にお笑いトリオ「安田大サーカス」を結成し、リーダーを務める。95年の阪神・淡路大震災で被災し、友人を亡くした経験を持つ。トライアスロンやロードバイクなど、体力系・スポーツ芸人としても活躍。2024年12月に防災士の資格を取得した。

■「イッツコムおうち防災のすすめ」
東急線沿線のケーブルテレビ局「イッツコム」の地域情報チャンネル「イッツコムチャンネル」の番組。安田大サーカスの団長安田、防災アナウンサーの奥村奈津美が、家庭で実施できるさまざまな防災活動を紹介。なお、イッツコムでは3月4月に「イッツコム防災Action」と題し多彩な企画で防災の大切さを発信する。
https://youtube.com/playlist?list=PLdk6RavroSeglcjySxL2Wv1YvUCQQRwFr&si=L48mTlT9XMf-kKVs

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