連ドラ4本&初舞台に挑む売れっ子 27歳俳優・井上想良、素顔はテニス全国3位のスポーツマン
俳優・井上想良が上昇気流に乗っている。現在、カンテレ・フジテレビ『顔のない患者-救うか、裁くか-』(木曜深夜0時15分、フジは木曜深夜0時45分)や日本テレビ系『パンチドランク・ウーマン-脱獄まであと××日-』(日曜午後10時30分)など2026年1月期の連続ドラマ4作に出演し、3月には初の舞台も控えている。2020年にデビュー。躍進する背景には、3歳から英才教育を受けてきたテニスで得た学びもあり、進化する27歳は「個性を磨きたい」と静かに心を燃やしている。

『顔のない患者-救うか、裁くか-』外科医役で注目
俳優・井上想良が上昇気流に乗っている。現在、カンテレ・フジテレビ『顔のない患者-救うか、裁くか-』(木曜深夜0時15分、フジは木曜深夜0時45分)や日本テレビ系『パンチドランク・ウーマン-脱獄まであと××日-』(日曜午後10時30分)など2026年1月期の連続ドラマ4作に出演し、3月には初の舞台も控えている。2020年にデビュー。躍進する背景には、3歳から英才教育を受けてきたテニスで得た学びもあり、進化する27歳は「個性を磨きたい」と静かに心を燃やしている。(取材・文=大宮高史)
井上の今年は順調な滑り出しとなった。主要キャストを務める『顔のない患者』や『パンチドランク・ウーマン 』に加え、WOWOWドラマ『ストロボ・エッジseason2』(金曜午後11時)、BS朝日『家庭教師の岸騎士です。』(月曜午後11時24分)と、放送中の連続ドラマに立て続けに出演。ジャンルも役柄も全く異なる4作品となるが、本人はいたって冷静だ。
「これだけ作品が重なっても、別の作品の現場で違う役のことを考えることは絶対に嫌なんです。もしスケジュールが重なったとしても、台本をもらった段階で、その役のキーになる大事なシーンをあらかじめ確認して、しっかり覚えておくようにしています。あとは現場でその役に専念します。僕自身、意識しなくても脳の切り替えは自然にできている感覚があります」
『顔のない患者』では外科医・夏井冬真に扮している。病院の跡取り息子で、主演のTHE RAMPAGE・長谷川慎が演じる同僚医師・都築亮に比べるとクールに見える人柄だが、自分なりの正義感を見出している。
「夏井は医師として『患者ファースト』の信念があります。道理に反する、ダメなものはダメだとはっきり言える人ですね。誰に対しても胸を張って『患者を大切にしています』と言えるような、真面目な芯の強さを大切にしました。長谷川さんの都築と似たような性格に映らないように、信条の違いもはっきりさせました。長谷川さんが自身のペースやルーティンを大切にされる方なので、その空気感を尊重しつつ会話を重ねてきました」
現場の様子についても言葉を続け、「作品自体は、皆常に何かと戦っているような重厚さがあります。でも、プロデューサーの方々を含め皆さん明るい方ばかりなので、いい緊張感を持って臨めた現場でした。スケジュールの余裕もあって、お芝居に集中できました」と明かした。
一方、女性刑務官と収容者の禁断の恋愛を描いたドラマ『パンチドランク・ウーマン』では、その刑務官・冬木こずえ(篠原涼子)の過去を知る刑事・佐伯雄介(藤木直人)の大学生時代を演じるという、難しい設定に挑んでいる。
「回想シーンでの登場なので、藤木さんがどういう雰囲気で役を作られているか、事前に本読みの時の映像を見て研究しました。佐伯は優しい人だけど、自分の思いを言葉にするのが少し苦手で、どこか自信がなさそうな人だったのかなと考えてみました」
さらに、season1に続き出演する『ストロボ・エッジ』では落ち着いた性格の高校生・寺田裕太郎を演じている。現場でも役のキャラクターに深みをもたせるため工夫したようだ。
「寺田は、『自分は二の次』で自分を殺してまで相手のことを大切にしている人です。カメラが回ってないオフの時に共演者と話す時も、ちょっと意識していました」
各作品の役についてスラスラと言葉を紡ぎ、現場ごとの空気に寄り添った、丁寧な役作りがうかがえる。もっとも、いまだに慣れないこともある。
「今でも、撮影の初日は一番緊張します。本読みなどで顔合わせをしていても、ほぼ『初めまして』の状態から皆さんのお芝居を見て、自分をさらけ出していくので。台詞の第一声を発する瞬間は緊張しますね」
そう明かすと、背筋を伸ばした。時折見せるさわやか笑顔が目を引き、まさに好青年といった印象だ。それもそのはず、自身は3歳からテニスに打ち込んできたスポーツマンで、父のテニススクールでラケットを握ってきた。全国高校選抜テニス大会の団体戦3位になり、大学にはスポーツ推薦で進学するなど、高レベルな実力を持つ。だが、中学2年生で試合のため渡米したときの体験が、将来を決定づけた。
「海外では試合の相手も中学生なのに、身長が2メートル近くあったり、サーブも時速220キロ越えが当たり前に飛んでくるんです。プロ顔負けの速い球です。それを目の当たりにして『あ、これは無理だ』と一生の仕事にするのは諦めました。ただ部活では、お互いを信頼し合わなければ勝てないダブルスも体験できました。そのときの経験は、今の現場での振る舞いにも繋がっていると思います。信頼関係を築いていくことや『現場の空気が皆同じ方向を向いていないとできないな』と思えるのは、テニスのおかげでもあります」
今でも気分転換を兼ねテニスに興じる。ちなみに、自身の最高サーブの時速は学生時代に出した「210キロぐらいでしょうか」といい、プロに匹敵するほどだ。今後はテニス関連の仕事も挑戦していきたいという。

初主演はBLドラマ「いくら考えても答えが出ない瞬間が」
そんな井上は、大学時代にスポーツブランドのカタログモデルをしたことがきっかけで、芸能関係者の目に留まり、その後ワタナベエンターテイメントカレッジで演技などを学んだ。2020年にNHK BSプレミアムドラマ『ファーストラヴ』でデビュー。その後はドラマや映画などに出演し実績を積む中、「何回もパンクしました」と最大の転機に挙げるのが、22年の初主演ドラマ『永遠の昨日』(MBS)だ。ボーイズラブ小説が原作で、車にはねられ「生きている死体」となった同級生・山田浩一(小宮璃央=ダブル主演)と限られた時間を過ごす青海満に挑んだ。ここで、現場で生まれる感情を大事にすることを習得し、成長した。
「僕は元々、自分の中で準備を完璧にしておかないと不安なタイプでしたが、この作品は死という重いテーマを扱う中で、いくら頭で考えても答えが出ない瞬間がありました。でも座長の自分がそんな不安を抱えて、葛藤も成長もないような人物を演じていては作品が成り立たないなと思い、小林啓一監督や小宮くんとも話しながら作っていきました。それに監督の『まず一回やってみよう』の言葉で気持ちも軽くなれました。この作品での『恋人の死』もそうですが、俳優は人生で経験できない感情まで表現しないといけないことがあります。だから分からなかったり、未経験であっても、現場で湧き上がる感情に任せてみようと思えました。そのことは大きかったですね」
そして、目下の課題に掲げるのが「個性を磨くこと」と打ち明ける。
「今までは『どう思われるだろう』と考えすぎて、格好つけていたんだと思います。弱音を吐くと周りを困らせるんじゃないかと思ったり、周りの評価が気になっていたので、自分の個性も見いだせずにいました。でも、そうやって自分を押し殺したときの芝居って、つまらないんです。だから自分の感情や、やってみたい欲求にもっと正直に従ってみたいですね。昨年、ヨーロッパを旅して、店員さんが普通にジョークを言ってくるような自由な振る舞いっていいなと思いました。法律は守りつつ(笑)、人目や面子より、自分をもっと大切にして個性を磨きたいですね。『井上想良ってこういう人間なんだ』って、魂レベルまで知ってもらえたらと思っています」
そのマインドをぶつける場所として、心待ちにしているのが、3月上演の舞台『世界が消えないように』。舞台は今作が初めてとなり、自然と気持ちもたかぶってくる。
「劇場の空気を感じながら、毎公演オリジナルの“生きた”お芝居ができるのが舞台の良さなので、楽しみです。今まで、僕は『見られている』という意識が強かったように思います。でも、これからは『伝える』ことを重視したい。『こう見てもらえるかな』ではなく、ちゃんと役を通じて伝えたいことをストレートに感じてもらえるお芝居をしたいです。その習慣が自分自身にも、新しい色をつけてくれるかなと思います」
舞台という新たな扉を開き、さらなる飛躍へ――。27歳の変革が今、始まる。
□井上想良(いのうえ・そら)1998年8月12日、大分県出身。大学時代にスカウトされ、2020年にNHK BSプレミアムドラマ『ファーストラヴ』で俳優デビュー。その後はドラマや映画などで活躍する。主な出演作はドラマでは、22年の初主演ドラマ『永遠の昨日』(MBS)ほか多数。映画では、『お嬢と番犬くん』(25年)、『BADBOYS -THE MOVIE-』(25年)、『ゴーストキラー』(24年)などに出演した。26年は、3月7日~15日まで東京・浅草九劇で上演の『世界が消えないように』(作・演出/タカイアキフミ、『ワールド、終わらせない』と2部作)で初舞台を踏む。3月30日公開の映画『君が最後に遺した歌』も控えている。
あなたの“気になる”を教えてください