朝ドラで定着した“清純派イメージ”は「ギャップある」 瞳水ひまりのサブカル女子な素顔
俳優の瞳水ひまりにとって2025年は大きな転機の1年となった。NHK連続テレビ小説『あんぱん』や日本テレビ系『放送局占拠』と話題作に立て続けに出演し、存在感を放った。高知県でくすぶっていた学生時代から約5年――。瞳水はどのような思いで活動を続けているのだろうか。23歳の素顔に迫った。

テトラポッドの隙間で過ごした学生時代「ずっと苦しかった」
俳優の瞳水ひまりにとって2025年は大きな転機の1年となった。NHK連続テレビ小説『あんぱん』や日本テレビ系『放送局占拠』と話題作に立て続けに出演し、存在感を放った。高知県でくすぶっていた学生時代から約5年――。瞳水はどのような思いで活動を続けているのだろうか。23歳の素顔に迫った。(取材・文=中村彰洋)
「人生が大きく変わった1年でした」
23年から俳優活動をスタートさせた瞳水にとって、25年は自身の可能性を広げた1年だった。
『あんぱん』では、柳井家の女中・宇戸しんを演じ、素朴な姿がお茶の間の注目を集めた。「『あんぱん』は私の出身地・高知が舞台だったこともあって、地元に帰ると『おしんちゃん』って声をかけてもらえるようになりました」と語る。
一方で、『放送局占拠』では、武装集団「妖」の一員・がしゃどくろを演じ、対照的な表情を見せた。子どもたちががしゃどくろの話し方をまねする姿を見かけるなど、朝ドラとは異なる年齢層に届いていることを実感した。
名だたる俳優陣と触れ合う機会も増えたが、中でも『あんぱん』で共演した戸田菜穂から、俳優としての心構えを学んだ。
「戸田さんが現場で、セットを触りながら、役に入り込む様子を間近で見させていただきました。いつまでも謙虚な姿勢を目の当たりにして、『もっとちゃんとしなきゃ』と強く思いました。共演させていただいたシーンでも、私が悩んでいた際に、『もっと自分を解放してぶつかってきて』と声をかけてくださったり、たくさんのことを教えていただきました」
2月5日にはテレビ朝日系連続ドラマ『おコメの女-国税局資料調査課・雑国室-』へのゲスト出演も決まっている。瞳水のイメージとはかけ離れた“港区女子”を演じるなど、2026年も演技の道を邁進していく。

周囲の目を気にしすぎていた学生時代、テトラポッドの隙間で過ごした1人の時間
高知県で生まれ育った瞳水にとって、芸能界は自分とはかけ離れた世界だった。
15年に放送された菅田将暉主演のNHKドラマ『二十歳と一匹』を見たことで、災害救助犬訓練士に興味を抱くようになった。そして中学生の進路を考えるようになったタイミングで、自分の中に眠る芸能界への興味に気付いていった。
「学生時代は、表現することや目立つことが好きでしたが、そういった気持ちを押し殺して生きていました。『これからの人生どうすればいいんだろう』と進路を考えるようになった頃に、銀杏BOYZさんの音楽と出会い、爆発的なエネルギーの表現というものに触れました。その時に『自分もこういうことがしたい』と思うようになったんです。それと同時に、災害救助犬訓練士に憧れていたわけではなく、本当は俳優という職業に憧れていたんだと気付きました。それからはずっと東京に行きたいと思っていました」
上京の夢を抱きながらも、芸能界への“ツテ”はなく、踏み出す勇気も持てないまま、悶々とした高校生活を送った。「かなりきつかったです」と当時を苦笑いで振り返る。
「芸能界で仕事をしたいと考えた時に、年齢は早いに越したことがないとは思っていました。でも、どうすれば俳優やアイドルになれるかも全く分からない。東京に行きたいけど、踏み出すこともできずに高校に進学してしまったので、目的もないまま3年間を過ごしていました。ずっと苦しかったです」
高校時代は帰宅部。1人行動を好み、「学校以外の場所が自分の居場所」だった。お気に入りの場所は砂浜に積み重なったテトラポッドの隙間。「今思えば少し危ない場所ですよね。1人の空間で音楽を聴いたりして過ごしていました」と笑う。
そして、高校卒業を機に「ミスiD2021」オーディションに応募。これをきっかけに徐々に道が拓かれていった。
「周りの目をすごく気にしていた学生時代でした。高校生の頃は自分の顔をSNSに載せたら、周りになんて言われるんだろうと、怖くて勇気が持てませんでした。高校を卒業して、周囲の目を気にしなくなったことで、一歩踏み出すことができました」
オーディションの選考中には、アイドルグループからの誘いも届いた。思いもよらぬオファーだったが、「大森靖子さんに憧れていたので、アイドルにも興味がありました」と挑戦を決めた。
アイドル活動に合わせて、念願の上京。1年半ほど活動した後、役者への思いが強くなり、グループ卒業を決断した。そこから1年半のフリー期間を経て、現事務所・ジャストプロへ所属。着実に経験を積んでいる。
「初めてのドラマ撮影は、とにかく必死で何も分からず、気付いたら終わっていました(笑)。最初の頃は、とにかく表現することが楽しかったです。今は演じている時に、相手と心が通じた瞬間が1番楽しいです。その役の感情が湧き出てきて、没頭できている時に楽しさを感じます。ものすごく準備をしないと、その感覚を味わうことはできないので、そこに向けて常に全力で臨んでいます」

5年後に見据える大きな目標「朝ドラにヒロインでもう1度出られるように」
過去にはnoteで当時の衝動的な思いをつづったり、エッセイを寄稿したりと、執筆活動への興味も強い。
「それまでは自分の気持ちを押し殺していた部分がありましたが、初めてnoteを書いた時に自分の本音を衝動的に書いてみたんです。そしたら、想像以上の反響をいただけました。自分の気持ちに共感してくれる人もたくさんいるんだと分かってからは、文章を書くことがさらに好きになりました。内から出てくるものが好きなので、そういう発信もしていきたいです」
『あんぱん』などの姿から、“清純派”のイメージを持たれることも多いが、“サブカル好き”な一面も持つ。世間の印象とは「ものすごくギャップがある」とまだまだ引き出しの数は多い。
「今でも“ショートカットが正義”だと思っているくらいです(笑)。それこそ、銀杏BOYZさんのジャケットで描かれているような女の子がすごく好きなんです。こういったギャップは小出しにしていきたいです(笑)」
21年には銀杏BOYZ『GOD SAVE THE わーるど』のジャケットモデルも務めた。「これまでの人生の中でピカイチ。1番の衝撃です」と貴重な経験となった。
幼少期から考えを巡らすことが好きだった瞳水。悩みにぶつかった時には、その“根源”を考えることで、気持ちを整理してきた。「自分が悩んでいる理由をひも解くことで、自分の中の課題を導き出すようにしています」。
一方で、「ここ1年ぐらいは人に頼るということを学びました」とも明かす。「最近は周囲に相談するようになれています」。
不安定だったアイドル時代やフリーの期間を見守ってくれた両親も今では、すっかり瞳水を信頼するようになった。
「以前は、私のことが心配で『最近どうなの?』と頻繁に連絡が来ていましたが、今は連絡が少なくなりました。きっと信じてもらえているんだと思います。周りからも『自慢の娘さんですね』と言われることも多いみたいで、とってもうれしいです」
音楽や執筆と多岐にわたった活動に意欲を見せるが、当面は俳優としての成長を目標に据える。
「大きな作品を経験させていただいて、『もっとうまくなりたい』という思いが強くなりました。今年はお芝居に向き合っていきたいです。いろんなレッスンや作品を経験して、自分の強みや個性を見つけられるような1年にしたいです」
数年後の目標は朝ドラへの“凱旋”だ。「本当に大きな目標にはなりますが、5年後ぐらいにヒロインでもう1度出られるように頑張りたいです」。
くすぶり、迷い、遠回りもした。それでも、内側から湧き上がるものを信じて、自分を表現し続けてきた。素朴さと鋭さ、清純派とサブカル。相反する魅力が同居するのは、そのエネルギーが本物だからだろう。そんな彼女が次に見せる表情に注目したい。
□瞳水ひまり(ひとみ・ひまり)2002年6月23日、高知県出身。23年から本格的に俳優活動を開始。25年には、NHK連続テレビ小説『あんぱん』で朝ドラ初出演。日本テレビ系『放送局占拠』では武装集団「妖」のメンバーとしてレギュラー出演した。26年2月5日放送のテレビ朝日系『おコメの女-国税局資料調査課・雑国室-』に出演する。趣味は散歩と文章を書くこと。特技はギター。
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