兵庫知事選「中田敦彦動画」は中立だったのか? 非公開化も残る大きな謎、元テレ朝法務部長が指摘
1月30日、ある新聞記事が注目された。「竹内英明元兵庫県議の死から1年」と題する神戸新聞の連載の中で、タレントでYouTuberの中田敦彦氏による「中田敦彦のYouTube大学」が取り上げられたのだ。記事は、斎藤元彦氏が再選された兵庫県知事選の投票日直前に配信された動画について、中田側のコメントも含めて報じた。これを受け、元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士は「中田氏には説明責任がある」と指摘した。

2024年11月、斎藤知事再選直前のYouTube配信に疑問再燃
1月30日、ある新聞記事が注目された。「竹内英明元兵庫県議の死から1年」と題する神戸新聞の連載の中で、タレントでYouTuberの中田敦彦氏による「中田敦彦のYouTube大学」が取り上げられたのだ。記事は、斎藤元彦氏が再選された兵庫県知事選の投票日直前に配信された動画について、中田側のコメントも含めて報じた。これを受け、元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士は「中田氏には説明責任がある」と指摘した。
2024年11月17日、兵庫県知事選で斎藤元彦氏が再選された。NHK党の立花孝志氏が斎藤氏を応援する「二馬力選挙」を行った同選挙戦で話題となったのはSNSの影響力。そして今、あるSNS動画にあらためて注目が集まっている。それは「中田敦彦のYouTube大学」で配信された〈兵庫県知事選という究極のミステリー〉という動画だ。
知事選投票日直前の11月15、16日に配信された動画の再生回数は200万回以上とされ、立花氏は斎藤知事再選を伝える開票速報配信でその影響力をこう評した。
「最後の中田敦彦さんのYouTubeで、もう決まりましたね」
この中田氏の動画を改めて検証したのは神戸新聞だった。同紙は今年1月30日の記事で、中田氏が「立花の主張をほぼそのまま伝えた」などと指摘。配信の根拠などについて質問したところ、中田氏側は公開情報を参照にしたとし、さらに次のように回答したと報じた。
「動画内で紹介した内容は、第三者の主張・見解を『主張として』取り上げた部分を含め、当社として特定の個人・団体に関する事実認定や、捜査・公判の対象となっている事項を断定するものではありません」
では、中田氏の動画は単に立花氏の発信を『第三者の主張として』紹介しただけだったのか。動画の冒頭、中田氏は情勢調査によると知事選は斎藤氏と稲村和美氏が有力とした上で、「もう一人、注目人物。裏の主人公と言ってもよい方が立候補しているんです。それが立花孝志さんなんですよ」と紹介。そして、立花氏についてこう述べた。
「この方はものすごいことやってますよ。正直ですね。立花さん、いろんな印象の方がいると思うんですよ。『何か、お騒がせの人だよね』とか、『何か、やり方がよくわかんない』とか、『過激だよね』という方もいるかもしれません。ですが、冷静に見ると立花さんという方は選挙というシステムを熟知した上で、その裏をかくようなやり方をやってですね。『何か自分の思いを国民に届けたい』という方なんです」
中田氏は、冒頭に立花氏を高く「評価」。その後、動画は立花氏の主張を中心に展開していく。これを見た通常の視聴者は立花氏の主張を単なる「主張の一つ」ではなく、中田氏が「特に伝えるべき」と考えた内容だと捉えるのが自然だろう。
一方で、斎藤知事の疑惑を告発後に命を落とした元西播磨県民局長について、中田氏は「色々とですねえ。こう並べ立ててですね。7つの疑惑ということで文書を送付したわけです」などと紹介。元県民局長の公用パソコン内にあったとされる私的な文書について「非常にセンセーショナルな●●局長のプライベートにまつわるものが入っていたと言われているんですね」「調べたい方はですね、ぜひ、調べていただきたいですけれども」と呼び掛けた。
発された驚くべき言葉
だが、パソコン内に私的な文書があったか否かは、元県民局長の告発の信用性とは関係ない。兵庫県を巡る問題の核心は、パワハラなどさまざまな疑惑を告発された斎藤知事らが、自分で告発に対応し、告発者を探し、懲戒処分を行ったことが公益通報者保護法違反かという点にあるはずだ。中田氏も「ここが非常にポイントで、最初の告発文は公益通報だったのか、そうじゃないのか。これをいろいろと言い争ったりしています」と述べるのだが、その後に発したのは驚くべき言葉だった。
「ですが、この問題の本質は実はそこではなかったりするんですよ」
さらに中田氏は「公益通報なの? どうなの? 特定して良かったの? なんていうところをテレビは結構重点的に報道するんですけど、これは1回さらっと流していただいても、むしろ構いません」と断言。公益通報に当たらないとする斎藤氏や立花氏の主張を紹介した。
しかし、2025年3月に発表された兵庫県の第三者調査委員会報告書は元県民局長の告発を「公益通報」と認定。告発を理由に元県民局長を懲戒した斎藤知事らの対応を「違法であり、その部分について行われた懲戒処分は効力を有しないと判断する」と結論付けた。この斎藤知事の最大の問題点について、中田氏は「さらっと流して構わない」と述べた。それは疑惑の核心から目を背け、問題を矮小化する発言ではないか。本当にこの動画は第三者の主張を伝えるだけの「中立」のものだったのか。
渦中の動画は現在一般公開が停止され、「メンバー限定」となっている。その理由について、中田氏は神戸新聞にこうコメントした。
「当該動画が切り取られて受け取られることで誤解や対立が助長されることのないように、公開範囲を見直しました」
ということは中田氏自身も、この動画を一般公開したら「誤解や対立が助長される」と自認しているのか。そうだとしたら、なぜそれを選挙直前に一般公開したのかという疑問が残る。
投票日間近の衆院選でもSNSの影響について、さまざまな指摘がされている。その中でチャンネル登録者数550万人を有する中田氏は、選挙に関してどのようなスタンスで動画配信しているのか。選挙をめぐるSNSの実態を明らかにするためにも、中田氏には、兵庫県知事選動画についてさらなる説明をする責任があると思う。
□西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうまワイド』『ワイド!スクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いた。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。24月末には、YouTube『西脇亨輔チャンネル』を開設した。
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