名バイプレーヤー・筒井真理子の現在地 「リサーチが大好き」な理由…演じてみたい“もう一つの人生”
俳優の筒井真理子が、柿澤勇人主演のTBS系ドラマストリーム『終のひと』(火曜深夜0時58分)で葬儀店のベテラン社員として絶妙な存在感を放っている。テレビドラマ、映画、舞台で、ヒロインから悪役、母親役まで幅広い役を演じこなす彼女の役作りコツ、演じてみたい役について聞いた。

記憶に残る母からの「愛情はケチっちゃダメ」の言葉
俳優の筒井真理子が、柿澤勇人主演のTBS系ドラマストリーム『終のひと』(火曜深夜0時58分)で葬儀店のベテラン社員として絶妙な存在感を放っている。テレビドラマ、映画、舞台で、ヒロインから悪役、母親役まで幅広い役を演じこなす彼女の役作りコツ、演じてみたい役について聞いた。(取材・文=小田智史)
漫画家・清水俊氏の『終のひと』を原作とし、誰でも一度は経験し共感できる「身近な人の死」を描いた普遍的なヒューマンドラマにして、令和という時代を切り取った1話完結の痛快エンターテインメントである同作。余命半年の破天荒なベテラン葬儀屋・嗣江宗助を柿澤、仕事に忙殺され自分を見失った青年・梵孝太郎(愛称ボン)を西山潤が演じ、筒井は「嗣江葬儀店」の経理担当かつ納棺師でもある森文子(愛称フミ)として生きる。
フミはどこかミステリアスな雰囲気を纏い、葬儀店の財政難に頭を悩ませる経理担当としてだけでなく、プロの納棺師としても活躍する超ベテラン社員。先代の頃から「嗣江葬儀店」に勤めており、嗣江の幼いころを知っている数少ない人物でもある。嗣江が社長となった今では、売り上げを伸ばせと日々プレッシャーをかけており、一方嗣江を慕って葬儀店に入った梵には、やさしく寄り添って励ます母親のような一面も見せる。
筒井は、演じるフミについては自分と「かなり違う」と語りつつ、役作りにあたっては「壮大な過去を作ってあります」と笑顔をのぞかせる。
「フミは死に関しても、生きていることに対して、どこか一歩引いた場所から世界を見つめているような達観があります。私はよく喋る方なので(笑)、多くを語らないフミとは対照的だなと感じました。彼女がどこで、誰と出会い、なぜこの葬儀屋にたどり着いたのか、その背景は最後まで語られませんが、どんな過去を生きてきたのかを、視聴者の方それぞれに想像していただけたらうれしいです(笑)。フミはいつも背筋がすっと伸びている人だと思っているので、その姿勢だけは決して崩さないように意識しました。
もう一つは、私は人間が好きで、母に『愛情はケチっちゃダメだよ』と言われて育ちました。フミは家族がいませんし、それを表に出すこともありません。けれど、あの2人(嗣江と梵)に向ける家族のような思いと、同じチームで働いている者としての私自身の柿澤さんと西山さんへの信頼と愛情は、根っこの部分でどこか通じ合っている気がしています」

役者の仕事は「本当に面白い」
“葬儀”は死が関わるテーマだけに、シリアスになりがちな印象もある。しかし、『終のひと』はしんみり、悲哀に満ちたドラマではなく、“時にクスッと、時にうるっとくる”のが特徴だ。作品にアプローチするにあたっては、筒井の中で頭を駆け巡った言葉があったという。
「舞台ではよく演出家から、『泣くのはお客さんだから』『笑うのはお客さんだから』『自分が笑うな。自分が泣くな』と言われてきました。それは葬儀屋が口にする『自分が泣いてどうすんだ』『泣くのはご遺族の方だ』という言葉と、本質的にとてもよく似ていると感じたんです。フミはプロなので、必要以上に感情を表に出さない。けれど、内側では確かに何かに触れている。表情に出さなくても、心の奥ではいろんな感情が静かに動いている。そう思って、嗣江、ボンちゃんとの対比の中で、その“距離の取り方”の塩梅を一番大切にしました」
テレビドラマ、映画、舞台で、ヒロインから悪役、母親役まで、作品ごとに全く違う顔を見せる筒井。役作りのテクニックを尋ねると、「役へのアプローチが一番好きなんです!」と笑顔が弾けた。
「自分には全く想像もできない世界も含めて、いろんなこと考えるのが好きなんです(笑)。以前、舞台で性同一性障害の役を演じました。最初、お蕎麦屋さんの長女と言われていたんですが、送られてきたプロットには女性が出ていなくて、『長男役で』と書かれていたんです。でも、そうなると私はその方たちの悩みや苦しみ、喜びを何一つ知らないし、分からない。それは失礼だと思い、『無理です』とお伝えしました。周囲に『大丈夫だから』と説得されましたが、近所にいた心理学の先生のところに足を運んで勉強もしました。なかなかつかめなかったんですけど、口先で言っていたせりふがしっくりきた瞬間があり、少しは近づけたかなと思いました。リサーチするのがもう大好きで(笑)。知れば知るほどそう思うので、このお仕事は本当に面白いです」
好きな女優に、『さざなみ』(2015年)でベルリン国際映画祭銀熊賞(女優賞)に輝いた英国のシャーロット・ランプリングの名前を挙げ、「(米俳優の)アル・パチーノがすごい好きなんです」と映画『狼たちの午後』(1975年)などに出演した名優に惚れ込む筒井。百戦錬磨のバイプレーヤーである彼女が今後やりたい役とは――。
「死ぬまでに演じきれないほど、たくさんあります(笑)。今までこの年齢の女性がまだ踏み込んだことのない役に挑戦したいですね。私たちの時代には、結婚という選択肢の陰で、仕事を手放さざると得なかった女性が数えきれないほどいました。男性と同じように働く道がもし開かれていたら、そんな“もう一つの人生”を生きる人たちを、たくさん演じてみたい。無頼(ぶらい)の記者、裁判官、弁護士、刑事……死ぬまでに演じきれないほど、たくさんあります(笑)」
芝居への熱い思いと飽くなき探求心が、どこまでもどん欲に俳優・筒井真理子を突き動かす。
□筒井真理子(つつい・まりこ)10月13日、山梨県出身。1982年、早稲田大在学中に劇団・第三舞台に在籍して初舞台を踏み、94年に映画『男ともだち』で主演デビューを果たす。その後、舞台だけでなく、映画、テレビドラマ、CMなど幅広く活躍し、出演ジャンルも多彩。2016年、映画『淵に立つ』で第38回ヨコハマ映画祭 主演女優賞、第31回高崎映画祭 最優秀主演女優賞、第71回毎日映画コンクール 女優主演賞を受賞。19年、映画『よこがお』で第70回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。近年の出演作にNHK連続テレビ小説『虎に翼』、日本テレビ系『ホットスポット』、フジテレビ系『愛の、がっこう。』、TBS系『フェイクマミー』など。など多数出演。学生時代にフルート演奏、フィギュアスケート競技を経験している。身長162センチ。
(番組情報)
ドラマストリーム『終のひと』
TBS系・火曜深夜0時58分~※一部地域をのぞく
地上波放送終了後「TVer」「TBS FREE」にて見逃し配信
Leminoで最新話を先行配信中
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