「東京の方が、さまざまな人がいるから」 母の言葉で上京…アオイヤマダ、90年代カルチャーに触れての開花
2000年生まれのアオイヤマダは、20歳の時に東京五輪開会式にも登場し、Z世代屈指のパフォーマーとして多方面で活躍している。90年代のクラブや昭和のアンダーグラウンドカルチャーに影響を受け、それが表現の源にもなっているという。故郷・松本での幼少期から、多様な文化に触れ、いかにして“唯一無二の表現者”が進化してきたかを探った。

長野・松本での少女時代から上京まで
2000年生まれのアオイヤマダは、20歳の時に東京五輪開会式にも登場し、Z世代屈指のパフォーマーとして多方面で活躍している。90年代のクラブや昭和のアンダーグラウンドカルチャーに影響を受け、それが表現の源にもなっているという。故郷・松本での幼少期から、多様な文化に触れ、いかにして“唯一無二の表現者”が進化してきたかを探った。(取材・文=大宮高史)
アオイは2月13日から2本立ての音楽劇『未練の幽霊と怪物―「珊瑚」「円山町」―』(KAAT神奈川芸術劇場で3月1日まで、作・演出/岡田利規)に主演し、『珊瑚』のシテ(主役)の珊瑚の霊を演じる。ダンスのみならず、ファッションや発する言葉も注目される彼女は、ステージではもちろん、取材でもカメラの前に立てば柔らかな身体を駆使してポーズを決める。自由自在な表現者への第一歩は、幼少期にダンスを始めたことだった。
「ダンスは幼少期から習っていて、学校も楽しかったです。ただ、10代の頃は車の免許を持っていなくて、遠くに行けないのが今思えば窮屈でした。自由に生きたい年頃なのに移動手段が少ないのは、ちょっと不自由でしたね」
――その頃、ダンスの他に熱中していたものは?
「ファッション誌が好きでした。特に『VOGUE』が好きで、母に買ってもらって読みふけっていました」
――ティーン向けファッション誌もあるのに、なぜ『VOGUE』を?
「すごい突き抜けている、と思ったんです。いろんな雑誌も読んだんですが、世界の最新ファッションやライフスタイルなど、衝撃的だったのが『VOGUE』でした。鮮烈でしたね」
その『VOGUE』では、後に誌面を飾ることになるが、独自の感性は少女時代から発揮されていたようだ。
「『暗黙の了解』のようなものが、苦手だったかなと思います。例えば中学では校則に『男子は(ヘアスタイルの)ツーブロック禁止』と書いてあったんですけど、女子についての記述がどこにもなかったんです。『じゃあ、女子がやったらどうなるんだろう?』って素朴な疑問が湧いてきて。先生を困らせたいわけでもなく、誰かのためにという正義感からでもなかったのですが、自分の髪をツーブロックにして登校してみました(笑)。やってみたい好奇心もあったし、純粋に疑問に思ったから試してみたんです」

上京し、寺山修司や山口小夜子に刺激受ける
――そして高校進学を機に上京しましたが、きっかけは?
「母が『あなたは東京の方が合っているかもしれない』と言ってくれたんです。私を見ていて、『東京の方が、さまざまな人がいるから』って。それで、東京でダンスを学べる高校に進みました。私の中では『場所が変われば何か変わるかも』という漠然とした気持ちもありました。東京で出会った人たちの影響がすごく大きかったです」
――東京では、90年代の文化やクラブカルチャーに刺激を受けたそうですね。
「90年代を体験している、年上の方々とお話しする機会が多くて、当時の写真を見せてもらったり、話を聴いたりして面白い時代だなと興味がわいてきました。寺山修司さんや山口小夜子さんのことも教えていただいて、映像も見てさらに惹かれました。特に寺山さんの『田園に死す』の映画(1974年公開、寺山修司監督・脚本で自身の歌集を映画化)が衝撃的で、『こんな前にこんなことやられていたんだ』と、逆にすごく新しく感じましたね。他にもダムタイプっていうアーティスト集団が好きで映像を見ていて、2020年にダムタイプさんの18年ぶりの新作舞台『2020』に出演させていただきました。そういう出会いやタイミングに助けられてきました」
――それは、ダンスだけではなく、今のようなマルチな活動のきっかけになったと。
「そうですね。最初はミュージックビデオ(MV)のお仕事をいただいて、でもまだ『高校生のダンサー』という自意識で踊っていました。それからクリエイターの方と出会う中で、ダンスは単なる動きではなく、言葉や音楽、空間とセットになっているものだと気づきました。表現の幅が広がりましたし、ちょっとでも出会うタイミングが違ったら、私はここにいないと思います。“偶然”がもたらす、すごさを日々感じていて、その感覚は今回の『珊瑚の霊』にもあります。私自身、選ばなかった過去にも思いをはせてみたい、という気持ちを込めています」
――では、もし上京していなかったらどんな人生を?
「どうでしょう……異世界にまぎれこんでいたかも(笑)。それくらい迷子になって悩んでいた時もありました。皆さんのおかげで多彩な芸術に出会えて、踊ることを自分の生きがいにできた今が、すごくありがたいです」
――最後に、この舞台で、見る人にどんなことを感じてほしいか、教えてください。
「今の時代、スマホがあればすぐに答えが出るし、分からないことは検索すればいいとなってしまいがちです。でも岡田さんの作品は、見る人の想像力が加わって完成するものだと思うので、想像に身をゆだねてほしいです。私が舞台上で言葉を発したり、少し動いたりすることで、空間の広がりや情景が変わります。その一瞬一瞬に、客席からも想像することで参加してほしいです。目に見えないものを信じる時間を、ぜひ一緒に体験してください」
□アオイヤマダ 2000年生まれ、長野県出身。パフォーミングアーティスト。2021年開催の「東京2020オリンピック閉会式」や25年開催の「大阪・関西万博閉会式」でパフォーマンスを披露した。宇多田ヒカルのミュージックビデオ『何色でもない花』などの振付も担当。踊り語りユニット『アオイツキ』でも活動する。身体と記憶、食と人、音楽と心の繋がりを信じて現在は独自の感覚と日常を融合させ、楽曲制作やパフォーマンス作品に取り組んでいる。俳優としても活躍しており、Netflix『First Love初恋』(22年)、映画『PERFECT DAYS』(23年)などに出演。26年は2月6日公開の映画『禍禍女』、4月10日公開の映画『炎上』にも出演予定。
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『未練の幽霊と怪物―「珊瑚」「円山町」―』
公式サイト:https://www.kaat.jp/d/miren2026
スタイリスト:沢田結衣(UM)
あなたの“気になる”を教えてください