「いじめ動画の拡散やめて」投稿が大炎上…物議の元教員YouTuberを直撃 “学校が隠蔽”に「ありえない」
年明けから全国各地で少年によるいじめや暴行の動画が相次いで拡散、大きな社会問題となっている。ネット上では加害者の個人情報特定などのネットリンチが横行しているが、この問題について、元教員のインフルエンサーが「いじめ動画の拡散やめて」と発信したところ批判が殺到、炎上状態となった。加害者へのネット私刑について「ただの犯罪」と断罪した元中学校教師のすぎやまさんに、炎上の経緯と投稿に込めた真意を聞いた。

「いじめ動画の拡散やめて」と発信した投稿に批判が殺到
年明けから全国各地で少年によるいじめや暴行の動画が相次いで拡散、大きな社会問題となっている。ネット上では加害者の個人情報特定などのネットリンチが横行しているが、この問題について、元教員のインフルエンサーが「いじめ動画の拡散やめて」と発信したところ批判が殺到、炎上状態となった。加害者へのネット私刑について「ただの犯罪」と断罪した元中学校教師のすぎやまさんに、炎上の経緯と投稿に込めた真意を聞いた。
1月中旬、ネット上に投稿された「緊急 いじめ動画の拡散やめて」と題された2分ほどの動画。その中で、すぎやまさんは「いじめはもちろん絶対許されないことです」と前置きしつつ「でも、そうやってSNSでいじめの動画を拡散したり、個人情報をさらしたり暴露したり、ましてや学校にクレームを入れまくったりするというのはただの犯罪です。加害者に対して、あなたが次の加害者になるだけです」「怒りに任せて拡散したり、コメントであおったりする前に、一旦立ち止まって考えてみてほしいなって思います」と安易な拡散行為を控えるように訴えた。
動画は瞬く間に拡散。「綺麗事言ってんじゃねーよ!!!!」「イジメを止めてから言え」「教師はみんなこの考え方だから一生いじめが増え続けるんだよ」といった批判的なコメントが大量に寄せられ、炎上状態となった。一方で「すごく真っ当なことを言ってる」「まともな人がいて安心した」といった擁護の声も。「あなたは正しい。しかし、正論だけでは救えない被害者がいる」「ネットリンチが抑止力になればいい」といった“必要悪”とする意見もある。
40代で静岡出身というすぎやまさん。教育学部を卒業後、地元静岡の公立中学校で13年間、音楽と社会科の教員として教壇に立った。30代半ばで退職した後に、コロナ禍が直撃。「お金もないし、特別なスキルもない。スマホ1つでできることを」と考えた末に、YouTuberとしての発信を始めた。元社会科教師としてコロナ禍の世界情勢を解説する動画がバズり、現在はインフルエンサーとして活動している。
TikTokで約40万人、YouTubeで30万人近いフォロワーを持つすぎやまさん。その大半が小中高校生などの「α(アルファ)世代」で、「子どもたちが知りたいテーマ」を中心に先生が放課後の雑談で生徒に答えるような内容を意識して発信しているという。
「これまでも何度か炎上は経験して、自分では慣れているつもりでしたが、今回はさすがにメンタルにきました。『加害者を擁護するのか』といった批判のほか、外見や人格を攻撃してくる内容のものも多かった。相手にしないことを決めて、何十人かをブロックしたことで目に見える炎上は収まりました」。一方で知人やフォロワーからは「何一つおかしいこと言ってないのに、あんなに炎上しちゃうんだ」「あの内容が理解できずに攻撃しちゃう人たちが日本にこんなにいるんだと驚いた」という反応も多かったという。
今回の投稿について、すぎやま氏は「安易にいじめの動画に見えるものを拡散して、正当な手続きに則らずに私的に制裁を加える。この動画を見る限り、こいつが悪いというのを勝手に決めて、個人情報の拡散や人権侵害を平気で行う。これはものすごい危険なこと」と真意を説明。動画の切り取りや生成AIの普及により、誰もが加害者に仕立て上げられてしまう恐ろしさを指摘、拡散前に立ち止まって考えてほしいと訴える。
ネット上では、学校がいじめ問題の解決に消極的だとする声や、隠蔽(いんぺい)体質を疑う意見も多い。こういった不信感については、元教員としてどのように感じているのか。
「大人がイメージする典型的ないじめと、実際に今の学校現場でいじめられていると相談される内容はかなり違います。今は『仲間外れにされてる』『SNSで陰口をたたかれた』といったものが多いんです。体感で8割以上がいわゆる人間関係のもつれですが、これがこじれると保護者が怒鳴り込んできたり、教育委員会に訴えたりということが起こるわけです。『先生が何も対応してくれないから、うちの子が学校に行けなくなった』と。
ただ無視をした、悪口を言ったというのは、一概に加害者/被害者と分けられるようなものではありません。どっちが先に嫌なことをしたなど、お互いの主張が食い違う以上、教師がどちらか一方を悪者にできるわけもない。無理に仲良くする必要はないけど、嫌なことはやめようね、と指導するくらいしかできません。そもそも、SNS上のトラブルは学校外、家庭内の問題だと思いますが……」
現在では、暴力行為などの明確な犯罪行為は警察など外部に協力を求める態勢が一般的
一方で、一連の動画にあるような暴力行為、カツアゲや窃盗といった明確な犯罪行為については、確固たる対応マニュアルが確立しているという。現在の学校の基本方針について、すぎやま氏は「暴力事件があったら絶対に学校内で終わらせずに、すぐさま双方の保護者に伝える。被害者の親が被害届を出すと言ったら、学校は止める権限は全くありません」と説明する。
「学校には捜査権も裁判権も、加害者を罰する権利も何もない。義務教育では「性行不良」であること、「他の児童生徒の教育の妨げがある」と認められる場合、教育委員会により出席停止を命じることはできますが、公教育において教育を受けさせないことは人権侵害にもあたるため、実際に出席停止まで至るケースは極めてまれです。後々大事になってからでは責任が取れないという保身の意味でも、学校で対処できない犯罪行為を把握したら通報一択。警察沙汰にしたくないとか、教員の評価に影響するということは全くありません」
すぎやまさんによると、こうした学校方針は2000年代から徐々に浸透。昭和の時代は今よりも生徒の問題を学校内で処理しようという風潮が強かったが、その結果1980~90年代にかけて校内暴力や暴走行為が急増した。体罰禁止の流れで指導もできないことから、今では犯罪行為が起こった際、学校内で留めることなく外部に協力を求める態勢が一般的だという。
「炎上の批判コメントを見ると、『私もこんなひどいいじめをされた』『娘がいじめられたとき、学校は何もしてくれなかった』という投稿の大半が、20年前、30年前のいじめ被害なんですね。過去のいじめ被害を恨んでいる人が、大きく変わった今の学校のことを知らず、当時の恨みをぶつけているような印象を受けました」
今現在、実際にいじめに苦しんでいる子へのアドバイスとして、すぎやま氏は「担任の先生の他にも、学年主任、教科担任、保健室の先生、生徒指導の先生、教頭、校長、部活の顧問、スクールカウンセラーなど、10人ぐらいは何らかの関わりがある先生がいるはず。学校は組織で対応するので、まず担任の先生か、信頼できる先生に相談してほしい。もしかしたら、中には対応がまずいおかしな先生もいるかもしれないが、10人全員が悪人で、隠蔽しよう、いじめをもみ消してやろうということはありえません。もちろん、殴られているとかお金を取られているといった犯罪行為の場合は、迷わず警察に行って大丈夫です」と断言する。
いじめは絶対にあってはならないが、その定義自体は曖昧なもの。明確な犯罪行為には法に則った厳正な対処が求められる一方、安易な善悪の決めつけや個人情報拡散などの私刑は、取り返しのつかない事態となることもあると肝に命じる必要がありそうだ。
※訂正 当初、記事内で「義務教育では校長権限で停学までの措置は認められています」と記載していましたが、誤りがありました。1月29日午前9時37分に該当箇所を修正させていただきました。お詫びして訂正いたします。
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