「成功体験が一番邪魔」資本金10万円からFRUITS ZIPPERで東京ドーム公演へ アソビシステム・中川悠介社長が語った“味変”ビジネス術
日本の「かわいい」文化を世界に発信するアイドル育成・輩出プロジェクト・KAWAII LAB.(カワイイラボ)のグループが、2025年の音楽シーンで存在感を示した。FRUITS ZIPPER、CANDY TUNEは『NHK紅白歌合戦』に初出場。CUTIE STREETは『レコード大賞』で新人賞を獲得し、他の2グループ(SWEET STEADY、MORE STAR)も人気上昇中だ。アイドル界の勢力図まで変えた彼女たちは、アソビシステムに所属。ENCOUNTは中川悠介社長を取材し、同社の歩みとKAWAII LAB.の未来を聞いた。

時代の寵児…44歳・中川悠介氏をインタビュー
日本の「かわいい」文化を世界に発信するアイドル育成・輩出プロジェクト・KAWAII LAB.(カワイイラボ)のグループが、2025年の音楽シーンで存在感を示した。FRUITS ZIPPER、CANDY TUNEは『NHK紅白歌合戦』に初出場。CUTIE STREETは『レコード大賞』で新人賞を獲得し、他の2グループ(SWEET STEADY、MORE STAR)も人気上昇中だ。アイドル界の勢力図まで変えた彼女たちは、アソビシステムに所属。ENCOUNTは中川悠介社長を取材し、同社の歩みとKAWAII LAB.の未来を聞いた。(取材・文=柳田通斉)
約束の時間になり、中川氏と対面した。「ぜひ、年明けに取材を」のオファーを快諾した44歳。会社の成り立ちから聞くと、「マイナスからのスタートでした」と明かした。
「高校時代からよく原宿に来るようになって、大学時代には仲間たちとイベントを始めるようになりました。就職を考えた時期もありましたが、結局は『自分で事業をした方が面白い』と思い、先輩と会社を作って大きなリスクも背負いました。そんな状態から25歳だった2007年にイベント業がメインのアソビシステムを創業しました」
会社法改正で株式会社は資本金1円から設立可能になり、中川氏は10万円で創業した。
08年になると、読者モデルのマネジメントを開始。その中の一人が、きゃりーぱみゅぱみゅ(以下、きゃりー)だった。
「当時は読者モデルが注目を集めていました。きゃりーのことは『面白い子だな』と思い、彼女が高3で服飾専門学校に行くことを考えていたタイミングで、『その前に一度(芸能活動を)やってみたら』と伝えました」
後にきゃりーの楽曲を作詞、作曲することになる中田ヤスタカと中川氏は会社創業前からの付き合いだった。ある日、中田がクラブで高校生を対象にしたイベントを開催し、きゃりーも参加してDJに挑戦。その出会いが、11年7月16日にYouTube上で初公開したメジャーデビュー曲『PONPONPON』へとつながった。きゃりーは自分らしさや個性を重視した原宿の青文字系(中川氏が命名)ファッションを自身の姿とパフォーマンスで表現。「原宿KAWAIIカルチャー」の第一人者である増田セバスチャンが、アートディレクターを務めたMVは瞬く間に世界へと広がった。以降、『つけまつける』『ファッションモンスター』『にんじゃりばんばん』など、多数のヒット作をこの座組で作り出している。
「自分の中で『原宿のアイコンみたいな存在を作りたい』という思いがありました。そういう中で、きゃりーと出会い、中田ヤスタカや増田セバスチャンとの組み合わせでああいう形になっていきました。きゃりー自身も原宿が好きで、たくさんのアイデアを出していました」
中川氏の願いは成就し、会社も成長した。だが、コロナ禍前の19年には一転して危機的な状況に陥ったという。
「海外展開に力を入れすぎてしまい、結果的にコスト面で負担が大きくなりました」
翌20年春、世はコロナ禍に入った。芸能界全体も窮地の中、15年結成でアソビシステム、TWIN PLANET、テレビ朝日ミュージックの3社合同でマネジメントの新しい学校のリーダーズが、20年11月24日に米国を拠点とする音楽レーベル・88risingと契約。『ATARASHII GAKKO!』として海外での活動を本格化させた。国内では23年1月から、同曲の“首振りダンス”がSNSで話題になり、同年の『NHK紅白歌合戦』初出場を果たした。
中川氏はその過程がある中、KAWAII LAB.の立ち上げを発想していた。
「コロナ禍で原宿にも人がいなくなり、僕はオフィスでいろいろと考えました。『ここで、ジャパニーズアイドルを真剣にやってみるのありかな』と思いました。アソビシステムの原点は原宿発の『KAWAII』だし、女の子のマネジメントが中心なので個で見せるのではなく、一つの発信基地にしていけば、伝わりやすいと思いました。社員は乗り気じゃなかったですけど(笑)」
中川氏は21年6月頃、アソビシステム所属の読者モデルで、アイドル経験がある木村ミサに相談を持ち掛けた。狙いは「ストーリー性」。元アイドルの木村がプロデューサーになり、グループを作り上げていく物語だ。そして、22年2月にKAWAII LAB.が始動。19年から活動していたIDOLATER(23年に解散)もKAWAII LAB.の一員となり、新たに7人組の新グループFRUITS ZIPPERが誕生した。
「FRUITS ZIPPERのメンバーは本当にいろんなルートで見つけてきた感じですね。オーディション企画に参加したメンバーもいますし、木村を中心にスタッフと相談しながら決めていきました」

年齢を理由に卒業・引退の必要なし
その後、CANDY TUNE(23年3月)、SWEET STEADY(24年3月)、CUTIE STREET(24年8月)、MORE STAR(25年12月)の順でデビュー。それぞれがSNSを駆使し、インパクトのあるフレーズ、リズム、振りで楽曲をバズらせた後、テレビ、ラジオに進出している。では今後、KAWAII LAB.に属するグループはどうなっていくのか。中川氏の考えは「何期生というのは考えていません。メンバーは卒業や引退を考えなくていいので」だった。
「個人、個人のやりたいことからできた5グループですし、コンセプトや音も違います。既に20代後半のメンバーもいますし、同性に支持されているのも特徴です。なので、『年齢を理由にした卒業や引退の必要はない』と考えています。アソビシステムとしても、それぞれの長い人生と向き合っていますので」
FRUITS ZIPPERは2月1日に初の東京ドーム公演を控えており、CUTIE STREETは3月末に韓国で初の海外公演を実現する。その勢いは加速するばかりだが、中川氏の頭には、「KAWAII LAB.を一過性のブームにはしない。ずっとそこにあるカルチャーにする」の思いもある。
「例えばきゃりーは今年デビュー15周年ですが、結婚して子どもを産んでもライブができています。なので、辞める理由がある人はそれを選択して、続けられる人は可能な限り続けて発信をしていく。それがいいと思っています」

「倍の倍」で増える社員数…300人超で新年会
アソビシステムはデジタル社会にフィットし、常に新たなことに挑戦している。一方で、中川氏は『NHK紅白歌合戦』や『日本レコード大賞』を重視し、芸能界の先輩たちとも積極的に交流している。
「理由は、日本の芸能界は先輩たちが作られてきた素晴らしい歴史の中にあると感じているからです。僕らの世代はそれを理解すべきですし、長く続いて多くの人々が視聴する紅白やレコ大を本気で目指すことも大事です。昨年、そこにたどり着けなかったグループも『今年こそは』の思いで、1曲1曲を大切にしています」
そうしたマインドも大切にしながら、視線は海外にも向いていた。
「アーティストを海外に出していくことはもちろんですが、アイドルの育成も含めて自分たちの持つノウハウや仕組みを海外で試したい思いがあります。音楽、食、アニメ、ゲームといったジャパニーズコンテンツの祭典も開催したいので、いろんな業種の企業と組みたいです。そんな思いの根本には、きゃりーのMVが世界で支持された時に『日本で作るものは素晴らしいし、この原宿にいる人たちは世界に通用する』と感じたことがあります」
07年に3人で始めた会社は社員、スタッフは「倍の倍」で増え続け、今では100人超。アーティスト、アイドルの研修生らを含めると300人以上だ。今月9日には、都内でその一同が会する新年会が開催された。
「新年会は毎年恒例で地方からも来てもらっています。FRUITS ZIPPERとCANDY TUNEの初紅白が発表された日もメンバー、全社員、スタッフと一緒にお祝いしました。どれだけ増えても『一緒に作り出す』ことは創業時と同じですし、人を大事にしていきたいです」
現在、事業内容はイベント、マネジメントだけでなく、地方創生、クリエイティブ、メディア、ブランド・店舗と広がっている。そして、中川氏自身は、そこが「未知の世界」でも飛び込み続けている。
「自分の中では『成功体験が一番邪魔だ』と思っています。一度うまくいったからといって同じことを繰り返さずに、味変をしていく。これまでは、時代の周期とやってることがハマる『運』もありました。だからこそ、今後もそれを楽しみに味変をしながら続けたいです。ゴールは設定せずに」
時代の寵児は、仲間たちと次に何を仕掛けるのか……。芸能界の枠組みも大事にしながら、それを超えた動きに注視したい。
□中川悠介(なかがわ・ゆうすけ) 1981年8月12日、東京・世田谷区生まれ。東洋大卒。2007年にアソビシステム創業し、原宿からファッションや音楽、ライフスタイルに関連したカルチャーを発信。内閣府「クールジャパン官民連携プラットフォーム」の構成員にも名を連ね、インバウンド推進や日本の発信力強化にも尽力。愛称は「あーみー、クッパ、ジャイ」など。
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